第006話:ビューウェーブとのお別れ!冒険者シルドラ誕生!!(後編)
文字数 4,401文字
【前回のあらすじ】
ここは港町ビューウェーブー。
これから冒険者として巣立っていく為
色んな事を知ろうとミルフに教えて貰うけれど
今彼が着ている洋服がこの世界の人からしたら ″裸″ で
町を歩いているようだとミルフに指摘されてしまい
今後、身に着けるモノを洋服屋にいた丁寧なスタッフに
教えて貰い、無事にゲットする事に成功。
その時、彼が冒険を始めるきっかけとなった
フロストの弟であるアジールと言う人物が現れ、
別の建物へと案内されていた――。
それにしても、やっぱり
兄さんの言う通りだったな……
好奇心旺盛で、誰にでも優しそうな性格だと
聞いていてね。君にならこの時計を
きちんと扱ってくれそうだ。
あっ! もしかして
リンクリングって言う奴ですよねっ!!
ミルフさんがしているのを見て、僕も
欲しかったんですっ! 確か翳して
リンクリングって言えば、色んな人と
お友達になれるんでしたよね!?
あ、でも……
微妙にミルフさんの物と
何処か違うような気がする……。
あ、確かに。あたいのと
違うな。アジールさん、どういう事だ?
さすがですね。実はシルドラ、
君でこのビューウェーブから
巣立った冒険者は50人目なんだ。
それを記念して作って貰ったのが
ちょっと特別仕様のリンクリング。
是非付けてみてくれないか?
えっ、僕で50人目なんですねっ!
やったー。えっと、こうで良いんですよね?
ありがとうございますっ!
アジールさん、ちなみに特別仕様と言う事は
何か自分の物にしかないシステムとかあるんですか?
君は勘が鋭いな……。
正解だけど、ちょっと見せてくれないか?
ビューウェーブから旅立つ冒険者は
シルドラで記念すべき50人目――。
特別仕様のリングリングを無事に貰ったけれど
アジールはその物にしかないシステムの話を
シルドラの口から切り出した時、ほんの少し
表情を曇らせてしまう……。
もしかして受け取った時計には ″何か″ が隠されて
いるのか。ただ、純粋に冒険や仲間づくり、
思い出作りを楽しみにしているシルドラが
それに直面するのはまだ先のお話――。
(やはり、あの機能だけ無いか……。
やはり ″あれ″ をして貰わないとな。)
どうしたんですかー?
さっきから言葉数が減ってますよー!!
あっ、済まないね……。
じゃあ、ミルフさんとリンクリングして
見ましょう。準備体操とかは要らないぞ。
やったー。ミルフさん、もしかしたら
長い冒険になるかもしれません。
今後とも宜しくお願いしますっ!!
こちらこそ宜しくな。
お、リンクリングが光り出したぜ。えっと……
は? シルドラの
絆パワー度…、マックス?
何てこった。こんな早くお目に掛かれるとはな……
いやいや、シルドラ……君の
絆パワーが異常な値を示しているだけさ。
近年稀にいるんだよ。焦る事ではないから
安心してくれると嬉しい。
まあー、そんな事忘れて
リンクリングしないとな。
さあ、次の工程だ。さっきミルフさんの
時計が光ったでしょ?
その時に ″リンクリング″ って言って
自分の時計を翳せば良いんだ。
えっ? 翳す時のポーズかい?
それは自由だ。是非とも見てみたいな……
冗談さ。でも、光が消えたら
リンクリングのチャンスを逃しちゃうから
もし光り出したら即座にやる事がベストだ。
ここで、リンクリングの説明――。
ティブルエイド以降にある様々な大陸で
時計を所持している者同士で翳し合い、
交流を深める事が出来る。それと同時に
登録式であり、遠く離れていても
時計を通して会話も可能。
更には絆パワーと言ったシステムがあり
登録した人数が増えて行く程、後に効果が発揮
して行くけれど、その全貌はまだ知らない……。
そしてこの時計は ″アップデート″ が出来る。
いよいよミルフとのリンクリングの時間――。
光っている時計をお互いに翳し合う。
″シルドラ=ロッド、登録完了″ と言う文字が
ミルフの時計に表示されている。
どうやら無事に登録、そして交流を深める事に
成功する。この時計を所持しつつ各地の大陸を
巡りながら様々な冒険を今かと楽しみにしている為
もう既に興奮が治まらない様子。
よしっ! シルドラとの
交流を深めたぞ。何かあったらあたいが
守ってやるぜ。安心しな!
はいっ! それにアジールさんも
色々教えてくれてありがとうございます。
やっぱりシルドラさんは優しいですね……。
堅苦しい ″アイツ″ に聞かせてあげたいな。
いや、違うよ。俺は三男なんだ。
次男がフロスト、そして長男が
グラスって言ってね……
どんな冗談言っても ″くだらん!″ って
言うし、あまり笑ってくれないから
頭が固いんだよ。ったく……
その分、シルドラさんは優しいし
どんな些細な事でも笑ってくれるから
本当に純粋なんですね。いつまでもその
性格を維持する事、期待していますよ。
もちろんですっ!
もっと色んな方と交流を深めて
ビューウェーブの各地を巡ってみたいです!
こら、
ラグ!!
またドアをノックしないで
入って来ましたね。これで何回目ですか?
もうそろそろ礼儀をしっかりと……。
ホットソープ、『ヴァリングス』の番台を
務めているラグだ。アジールよ、こいつが
シルドラって言う奴なんだな!?
はぁ……。シルドラさん、
彼を許してやってくれ。ラグはこういう
熱血漢溢れる男なんだ。だからいつも
ヴァリングスは熱気溢れていて
このティブルエイド内で一番うるさい……。
えっと……ホットソープって言うのは
どういう場所なんですか?
あっ! もう出番取らないでくれよ!!!
でもホットソープの説明をするなら
ラグの方が良いのか……。ちぇっ。
そうだろ? それに是非シルドラに
ひとっ風呂浴びに来て貰いたいんだ。
あっ、分かっちゃったー!
ホットソープって温泉街ですか?
ご名答。じゃあもう一回教えてやる。
ヴァリングスはホットソープ内でも
一番人気がある10階建ての新感覚
温泉アミューズメントパークなんだ!!
どうだ、今から楽しみだろ?
えっ、す、凄いですっ!
10階建てという事は色んなお風呂が
楽しめるんですね。ミルフさん!!
次の目的地が決まりましたよ。えっと……
どうやって行けば良いんですかー?
教えてくれると助かりますっ!!
(ふうー。良かったぜ。
突然 ″混浴あるのか?″ と言って
来そうだったけど大丈夫みたいだ……)
彼の名はラグ――。
ホットソープと言う温泉街の中で
一番賑わいを見せる ″ヴァリングス″ と言った
温泉アミューズメント施設で番台を務めている。
彼の満ち溢れた熱気・やる気を尊敬している
スタッフは数多い。色んな冒険者・観光客に
訪れて貰いたいと言う想いも人一倍強い。
フランバージュ ″赤髪の狼″ ことレブロンと
さっきビューウェーブの噴水広場で争った泥棒と
対峙していた際に野次馬の中に居た
リタという女性もまたそこのスタッフ――。
楽しい会話も束の間、ラグの名前を
呼んでいる女の子がアジールの元を訪れて来た。
【???】
おーいっ、ラグくんー!!
もうそろそろ時間だよー!!
あっ、済まないな。
ビッケ!!!あ、そうだ。ホットソープに向かうなら
まず彼女が務めるエアロブルー飛行場に
向かうんだ。結構此処から遠いからな……。
【ビッケ】
あっ、さっきの子だー。
急がないといけないから、君も
ホットソープに向かうならエアロブルーに
来てくれると嬉しいなっ。じゃあねー。
熱い男大好きですっ!
温泉稼業頑張って下さい。必ず行きます!!
ラグとの暫しのお別れ――。
ホットソープはビューウェーブから
結構離れている為、半日間だけ
エアロブルー飛行場で働く女の子で
飛行免許を所持しているビッケが
小型飛行機を運転して、彼を連れて来ていた。
この世界では色んなライセンスを取得できる
年齢が18歳以上。ちなみに彼女の年齢は
19歳。幼い頃から両親が運転していた
飛行機に乗せて貰っていた為、いつか彼女自身も
自由に空を飛び回る事が出来る
飛行士になるのが夢……。
そして、いよいよ2つのアイテム
″服″ ″リンクリング″ を手に入れ
冒険者としてこの旅を出るシルドラ――。
****
″Welcome to View Wave″ と
書かれた大きな看板が飾られている大きな門前に
シルドラとミルフが立っている。そこには
アジール、そしてお世話になった服屋の店員である
クレアとユエリアの2人も彼の旅路を祝いに来ていた。
シルドラお兄ちゃんー、
これから立派な冒険者として
出掛けるんですね。行ってらっしゃいー。
また会える日を楽しみにしてるねっ!!
ミルフさんも、きちんと
シルドラさんの事守ってあげて下さいね。
旅のご無事を祈っています。また
ビューウェーブに遊びに来た時は
寄ってくれないかな?
もちろんだ。今度はあたいを
コーディネートしてくれ。お願い出来るか?
シルドラ、ようやく
スタートラインに立ったな。
別れは辛いけど、今度は立派な冒険者として
また会える日を楽しみにしてるよ!
はい!!!
こちらこそ、本当にお世話になりましたっ!
もっと成長して、色んな方と交流して
今度は仲間を増やしてビューウェーブに
戻って来ます。それまで暫しの
お別れです!! ではまた……。
シルドラは少し涙を滲ませて、ミルフと共に
ビューウェーブを旅立って行く。
その時、噴水広場から大きな花火が打ちあがり
まるで祝福するかのように、街が一丸となり
彼の旅路を歓迎していた――。
見て、あの子が多分そうよ。
シルドラくんー、旅頑張って来てね!!
お、冒険者の服じゃないか。
君が例の少年か。頑張れよ!!!
応援してるぜ!!!!
ビューウェーブは冒険者を大歓迎する町。
色々と君の事を住民に話したら
皆で旅路を祝いたいって言われてね。
俺からシルドラにサプライズだ。
どうだ、気に入ってくれたか?
じゃあ、旅の無事を祈って
ハイタッチだ。シルドラ、行って来い!!!
悔いの無い冒険を楽しんで来てくれ。
じゃあな!!!
思い切り高く飛び、
アジールとシルドラはハイタッチを交わす。
かくして彼の冒険は始まった。
何処までも無邪気で、好奇心旺盛な性格は
絶対に変わる事など無く、限りなく
透き通った心を持ち……
叶えたい夢、そして大好きな冒険心を胸に秘めて
彼は次の冒険地へと足を運び始める。
第007話へと続く。
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