第075話:不可能の文字は無い!?ライアン推薦の消火精鋭部隊登場!!
文字数 4,929文字
プラム、ダメ!!
また作り直せば良いんだから
今は取り敢えず逃げて!お願い!!
此処はホットソープ。
以前当店である
喫茶店ヴァーズメルトに
訪問してくれた御礼にとフルージュクッキーの
試作を持参してくれたプラムとシルリア。
ただ、直ぐ近くに元々存在してあり
もう既に空き地と化した狼族の里 "シノヴァルド" に
仕掛けた爆発物が爆破。
その影響で
生じた爆風と轟音のせいで
再建途中のホットソープ5階の壁に皹が入った箇所が
瓦礫の一部として、地上で休憩を摂ろうとしていた
皆の所に落下して行く。
プラムだけ出遅れてしまい
大ピンチに陥った所を間一髪助け出したのは
彼女の兄であるライガー。
こんな形ではあるけれど、無事に合流と再会を果たす――。
何だ、この岩!!!!!俺のプラムに何手出してんだ、オラァ!!
見る者を
唸らせるその
拳は
落下して来た瓦礫も跡形も無く粉砕。
妹を守る為、前屈みになり
その砕け散った破片をその逞しい背中で受け止める。
ああ。お前の大事なお兄ちゃんだ。
遅くなって済まなかったな。
ごめんなさい……。
私、お姉ちゃんのクッキーを守りたくて
こんな危なっかしい事を。
もうっ!!ホント、心配したんだから!!!
ライガー兄さんが来てくれなかったら
今頃只じゃ済まなかったのよ……。
命を張って
お前の御手製を守ってくれたんだからな。
なかなか出来ない芸当じゃないか。
さすが、俺の妹だ!!!
ああ。プラムは
自分が今何をしなくちゃいけないのか
一瞬で見抜いた。シルリアのクッキーを
守っただけでも充分に良い
働きをしたんだ。
もちのろんだ!!!俺の姉妹が世話になったみたいだな。
ホットソープ全従業員が恩人と言う事だ。
ただ、今はさっきの
轟音の正体を確かめないと……。
そ、そう言えば
ヴァンウッドの森が大変なんだ。
猛火のせいで甚大な被害を受けていてな。
その光景は俺も見た。
広範囲に渡って燃え広がっていたけど
ヤバいんじゃないのか!?
うっ。俺達も
消火活動に協力をしてあげたいのだが……
スプリンクラーとか
少しでも火の手を食い止める道具があれば
私も消火活動のお手伝いを。
済まん。ホットソープの場合
緊急事態を想定して必要に応じた協力要請を
アジールに頼めるんだけどな……
ヴァンウッドは広いだろ!?先ず、火の手が一番強い所を捜索する所から
始まる。そこから徐々に消火活動の
範囲を少しずつ広げて行くんだ。
それにちょうど
消火道具を切らしていてね、
現在発注中の所、このような事態に遭遇した。
ホント、ツイてないよな。
その時、先程
低空飛行にてタイミング良く着地した
ライガーのお供、飛行機を操縦して来た
ランバードが何かを伝えるべく
ホットソープ上空付近へと常備してあった
マイクを通して、地上にいる皆へと話し始める――。
あれ? お前……
エアロブルーに戻ったんじゃないのか?
ああ、その事なんだけどな
飛行機の無線に連絡が入ったんだ。
現在、アジールが森の非常事態に対して
協力要請を応じた。ライザ海上情報機関の
精鋭部隊が直に消化を執り行う。
おう。ホットソープも
大変な目に遭ったと報告を受けている。
復旧の目処が付いた頃に
俺も君達の大浴場へ遊びに
行かせて貰うよ。大丈夫だよな?
もちろん、大歓迎よ。
従業員一同、心からランバードさんの
御来店お待ちしておりますね。
退屈の2文字が嫌いな
娘が
滑走路で待機しているみたいだしな。
斯くして
彼は操縦桿を強く握り締めると同時に
旋回をしながらも飛ぶ方角を飛行場がある
此処から東へと手動で切り替え
そのまま飛び立って行った。
ただ、1つだけ
疑問点があるとすれば、
滑走路で待つランバードの娘とは一体……。
ヒント:もう既に登場しているキャラクターの誰かです。
****
場所は変わり、港町ビューウェーブ。
いよいよ大詰めだと
牢獄島の獄長ブレイアが遭遇した
爆破直後の町役場の横の一軒家近くを
怪しい人物がその周辺をうろちょろしていたと
通行人の1人が見ていたようで――
じゃあ、
てめぇが言う事を要約すると
そのガキがこの一軒家が爆破された際に
食い入るように凝視していたんだな。
間違い無いぞ!!
何かボソボソとぼやいていたからな。
情報は多い方が良い。
何か覚えてる事があれば教えて欲しい。
数時間前、
町役場がある大通り――。
通行人に紛れつつ
この辺では見ない、何処かの子供が
野次馬の1人として、一軒家が
爆破された光景を「待ってました!」と
期待するかのように、笑いながら
その様子を見ていたようで
周りにいた通行人も驚きを隠せずにいた。
『おっ、良いねぇ!
これがアレドシアが設置した爆破の威力か。
派手にやってくれて結構だな。』
『おいおい。
どう見てもヤバいだろ!?
早急にアジールさんに連絡しないと……』
『おい。何勝手に
報連相してるんだ!?
爆破は立派な芸術だ、アートだ。
分かってんのか!?』
『一瞬で木端微塵と化し
見る影も失い、全てが吹き飛ぶんだぜ。
これこそ魅せるエンターテインメントだ。』
『彼なら噴水広場で
何か揉め事に巻き込まれているみたいだ。』
『(クソッ。こんなに
野次馬が多いと迂闊に町役場に
入れねーじゃねぇかよ!)』
関わったら面倒になりそうだったから
放って置いたけど。
どんな風貌をしてた?
この周辺では見かけない服装なんだろ?
えーっと、
白いフード付きパーカーに
ティアドロップのサングラス、
左耳には星型ピアス、背中には
リバーシブル仕立てのマントを翻して
堂々たる姿で突っ立っていたぞ。
ああ。俺達も追っている
超大物だ。
何しろ、彼は……。
おっと!!
そこから先は禁則事項だ。
久しぶりだな、ブレイア獄長!!!
やはり、てめぇ等2人が
この騒動の根深い所で暗躍してたんだな。
空大陸で爆発物を盗み出し
アレドシアに引き渡した張本人。
ははーん。獄長と
名が馳せたブレイアもタジタジだなぁ。
テメェと彼じゃ立場が全く違うモンな。
うるせぇよ。此処で会った礼として
牢獄にぶち込んでやろうか?
ほぉ。
クルディーと
プリメラの2人を死刑として片付けるなら
物騒な場所だろうが監禁されてやるぜ。
知ってるんだぜ。
このティブルエイドにはシルドラって言う
ガキが居るんだろ?
ああ。
フェルマータ城の爆弾だろ?
とっておきの仕掛けが施されているからな。
なるべく高い所から見るのがベストだ。
ちょっとした些細な証言により
アレドシアが企てたティブルエイド全体を巻き込む
計画の影に前話のラストで登場した
謎に包まれている男性の方が
顔馴染みであるブレイアの元に姿を現した事で
確実に彼等が空大陸から爆発物を
強奪した張本人と確信をし出す。
ただ、この2人
シルドラの両親の事を知っていたり
ブレイアを挑発したりと、相当因縁の相手に違いない。
1つだけ言うなら、敵に回してはいけない
かなり厄介な存在である。
もしかしたら、シルドラ達の前に現れる日も――。
****
エアロブルー飛行場、上空。
小型飛行機が
着陸態勢に入ると同時にランバードは
主翼の後ろに取り付けられたフラップを使用し
遅い速度を維持して進入し出す。
当従業員がいる
管制塔からの合図により
一斉に進入灯、滑走路灯や滑走路中心灯が
手前から奥へとパッと光り出し、迎え入れる態勢が
完了している為、適切な操縦により
ライガーをホットソープに送り届け
無事に飛行場へと戻って来る事に成功。
そして操縦席から
ゆっくりと降りると待機施設の方から
チャイ達と同時に彼の娘と思われる女性が登場。
ふぅ。
一先ず
ライガー達には現状報告完了、っと。
パタパタパタと
メインローター部分の
プロペラが回転させながら
空中消火用のヘリコプターが数機、続々と
ティブルエイド、ヴァンウッドの森の猛火鎮静を
果たす為、上空からの消火剤・散水の他にも
アジールが手配した消防隊も合流を果たし
同時進行で消火活動をし始める。
久し振りだ、ランバード。
まさかティブルエイドに来てるとはな。
ああ。ライガーが姉妹に
会いたがっていたからな。俺も
暇だった序に彼を送り届けてあげたんだ。
只、こんな大変な事態の
最中に
上陸してしまうとは……。
まあ、それも時間の問題だ。
ライザ海上情報機関の消防部は超優秀。
鬼教官デスタールによる指導を
全て乗り越えた猛者ばかり集う
消火成功率100%を誇る
精鋭部隊だからな。
ふふっ。まさか貴方の娘さんだなんて
彼女から聞くまで全く知らなかったのよ。
そして、ご苦労様であります!!で、ライガー君はプラムちゃんと
シルリアさんに会えたの?
もちろんだ。
アイツの喜んだ顔もきちんと見て来たぞ。
だけど、ホットソープも
爆風の影響を受けていてな
温泉宿5階の壁の一部が落下したらしい。
た、多分な……。
俺もこの目で全員を確認した訳じゃないから
何とも言えないけど。
チャイからは
揺れる、の一言しか聞いてないし。
何なら地震より森が業火に
見舞われてるしな。
ああ。奴は数えきれない罪を犯し
現在この地を爆破で陥れようとしている。
だから私とブレイアは早急に連行すべく
現在此処にいるんだ。
『確か、この大陸には
フランバージュって言うチームが居る筈。
何を目論んでいるのかは知らないけど……』
(第063話参照)
――って、言ってたよね?
そんな貴方が何でリーダーである
彼の名前を知ってるの?
ランバード、お願いだ。
知ってる事があれば包み隠さず教えて欲しい。
奴の全ての計画を阻止するには
誰1人欠けちゃいけない事位分かるだろ?
流石にお前を
牢獄島に連れて行きたく無い。
身内が関与してるのは辛いからな。
ただ、
俺はアレドシアの口から
シノヴァルドの存続を決めた際に、右目に
深傷を負わせた事絶対に忘れはしない、と
口うるさい程聞かされた位だぞ。
そう、全ては
"一悶着" から始まった
アレドシアの計画。
今まで謎に包まれた過去が
1話1話毎の重要なピースと組み合わさり
次回、全ての伏線の答え合わせが始まる。
驚愕の真実に備えろ――。
第076話へ続く。
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