第053話:3人の師範登場!忍者の里シノヴァシアからの訪問者!!
文字数 6,615文字
【????】
それにしても、拙者の稽古を
サボるなんてどういう事かな、ん?
誠拳道に近道は無いって言ったよな。
笑ってられるのも今のうちだぞ。
【????】
おいおい、ブラウン。
シノヴァシアの何処を探しても
居ないと思ったら、師範の目を搔い潜って
ヴァンウッドに来てたとはな。
お前もやるのう。
【????】
しかし、貴方の成長を誰よりも
陰ながら見守ってくれているんですよ。
鍛錬してこその成果です。その事を
忘れないで下さい。
さてと、ブロスを
シノヴァシアへと連れて行くとしよう。
別に取って食う訳ではない。何か事情を
抱えてそうだしな。大丈夫だ。
前回のあらすじ
フェルマータ城、海食崖。
規定のある喧嘩は戦意喪失した
レブロンを崖上から落とし、風が強く大荒れ状態の
海で溺れさせたブロスの勝利。
しかし、予想だにしていなかったのは
メンバーの1人ロギュアの裏切り。ずっと親身になって
接してあげていた彼を意地でも助けようと
必死に自分の命も顧みず、暗い海へとダイブする。
数時間後に、ヴァンウッドに訪れては
ヴァル処刑時にこの森全土を燃やす計画が伝えられると
誠拳道を会得しているシノヴァシア出身の青年
ブラウンが皆を守る為、ブロスに
立ち向かう中、禁断の事を
告げられてしまう。
な、何言ってるんだ?レブロンに限ってそんな事は無い筈……
死んだ……
いや、僕が突き落としたんだったな。
哀れな最期だったぜ。今頃アイツの身体は
波に身をまかせ何処かの海岸に
辿り着いた所だろ。
違うもん!!例え君に突き落とされたとしても
絶対に生きてる、そうボクは信じてるもん!!
その時、外で誰かと
言い争っている事に気付き
シルドラとミルフの2人が旅人の宿から出て来る。
うん。ブラウン君やブルーノさんの
帰りが遅いから先に寝るのはちょっとね。
せめて戻って来てから挨拶しようかなと……
ミルフさんまで何言ってるんですか!?
僕は皆さんを呼びに来ただけ……
てっきり帰りが遅い理由として
壊れていたリンクリングを所持者であるフラジー本人に
黙って外に持ち出した事を悔やんでいるのか
彼女は墜落した時の記憶を
蘇らせない為と思っていたけど、逆効果。
思い詰めていたシャノンが
なかなか旅人の宿に戻って来られない、と
シルドラも薄々気付いていたけど
実際来てみると、そこには……
残念なお知らせだ。お前と
再会しないまま、レブロンは遠くに行った。
もちろん、どういう事か分かるよな?
いや、本当は意味を知ってるんです……
ただ、信じたくありません。
嘘とでも良いので、生きていると
言って欲しいんですよ。
怒りの感情が芽生えた時は
必ずと言って、自分の手が拳になる。
ホットソープの時もそうだったな。
なら言ってやるよ。アイツは死んだ。
どうなるんだ?
その拳で僕を殴るのか?
奴から教わった正義を見せてくれよ。
あっ、ブロスさん……
今のうちに謝った方が良いかも。
何で謝らないと行けないんだよ!?目を瞑ってるだけじゃねぇか。
そんなの何処が怖いんだ?
えっとねー、ほんの少しでも
怒りに満ちた事態を招くとね、シルドラ君の
顔が少し黒くなって、ドス黒い
発言ばっかりするんだ。
だーっ!
だーかーらー、ごめんなさいって
言ってるじゃん。許してくれよー!!
それに、ブロス。
人に向かってお前って何なの?
何様のつもり?
そんな事言ってんじゃねぇ。
右腕だろうが、立ち位置的に上層の人間が
僕に向かって言って良い事と悪い事が
あるの分かってるの?黙って聞いてれば
両親がヴァルに渡したネックレスを意地でも
奪いに来ると、執念深い奴の考えなど
聞かぬ程に想定出来るんだよ!
今回の怒りの
矛先は
ボクじゃなくてブロスさんだから
聞かぬ振りっとー、あはは。
しかし、何でシルドラ君は
こんなに怒るようになったんだ?
ヴァンウッドに来てから変わってしまった。
以前刺された箇所が
たまに痛み出す事があるんだ。
虫に襲撃されて気絶した過去があってな。
あのさ、人が喋ってる最中に
横入りするなんてどういう根性してるんだ?
話は終わってないからな……。ん?
その時、背後から何者かに頭を押さえ付けられ
目の前に優しく手を当て、ゆっくりと瞼を閉じて行き
怒りに満ちたシルドラは地面に倒れ込み
その場で寝息を立てながら寝てしまった。
【????】
うむ。怒りと言うのは
負の感情から蘇生されて精神面や自分の身体に
より負担をかけてしまう。その時は
眠らせる事により、休息と言った
リフレッシュ効果が期待出来るんだ。
だから彼を眠らせた。と言う訳。
理解できたかな?
えーーーっ!!!
何で、貴方達が此処に居るんですか?
里の外に出るなんて珍しいですね。
ツリーハウスから出て来たら
広場の奥で言い争ってる光景見ちゃってね。
このままだと揉め事が起こり兼ねないから
万が一の時の為にオリアナさんと
相談して連れて来たって言う訳。
コレッタ殿、御苦労だった。
この言い争いを鎮めればいいのだな。
其方の頼み、確と申し受けたぞ。
突然のシノヴァシアからの訪問者により
事態は急変。
和装、口調、佇まいから
長である彼と同じように
里の中でもトップに君臨する者の雰囲気を醸し出している。
彼等がブルーノが先程言った3人の師範なのか?
ブロスとの邂逅を経て、
物語が佳境に向けて一気に動き始めようとしていた。
****
海食崖、下海――。
崖から落とされてしまったレブロン。
例え、自分の身が朽ちようが、と
俺なんかよりもっと酷い目に遭っている彼を
絶対に助けると胸に秘め、フェルマータ城周辺の
崖下を伝いながら死に物狂いで探し出すロギュア。
しかし……
くっ。済まない……
これが俺の限界なのか?
馬鹿言うな。死と戦ってるのはアイツだぞ。
おい、ロギュア。
その様子だと見つけられなかったのか。
レブロンには気の毒だけどな。
大丈夫。アレドシア様は
アッジに見て貰ってる。残りの爆弾を
随所随所に仕掛けている最中だ。
当たり前だろ。
この崖の真下にはゼルガスが乗っていた
海賊船が停泊してあるからな。それとこの
海水は地底水流を通り、ティブルエイドの
各海食洞穴に繋がっている。地壁に沿って
泳げば此処に自ずとも辿り着く。
流石だ。計画実行する前に
ゴッシュに話を伺った甲斐があったな。
きっと、レブロンも
この周辺の海流に運ばれてティブルエイドの
何処かの浜辺に流れ着いてるかもしれない。
今はアイツの無事を祈るだけしか
出来ないんだ。きっと大丈夫だと信じろ。
それもそうだな。
冷静で居ないといけないのに、俺は……
そう焦るな。お前の
助けたい気持ちは必ず伝わってる筈だ。
俺達のやるべき事はただ1つ。
分かってるだろ?
もちろんに決まってるだろ!!!
レブロンを悲しませたアレドシアの
計画を全て打破する事だ。絶対に許さねぇ。
グラッツ、お願いだ。協力してくれ。
確認したいんだけど、
今俺が城内を歩いてる事奴は知らないよな?
安心しろ。ロギュアは死んだ事にしてある。
夜の海は怖い上、高波にでも襲われたら
一溜まりも無いからな。もし現れても
化けて出てやれば良いだけだ。
ホント、お前が味方で良かった。
心置きなくアレドシアの隙を突けそうだ。
そう。彼の裏を掻くには、
計画を阻止する為に協力してくれる人が
必要不可欠になる。さっきから
移動しているのはそいつに会って
貰いたくてな。もうすぐ城門に到着する筈だ。
無理矢理フランバージュに
入れられたんだぞ。 自分の好きな仕事を
アレドシアに邪魔されたんだ。
黙ってられるとでも? んな訳無いだろ。
成程。アイツに恨みがあるって
以前言ってたけどそういう事だったんだな。
要するに天職って言う奴に就いているのか。
そうだ。俺からしたら皆可愛い奴ばかりだ。
触れ合ってるだけで1日が終わってしまう。
…………風貌的に
烏だな。
それに見た事がある。残りの3人は狐族か。
グラッツさん、お久し振りです。
貴方が牧場から居なくなって、私達一同
ずっと帰りを待ち望んでいました。
このような形で再会するとは……
そうか。そういう事だったんだな。
グラッツ、お前アロウドブリッジ近くの
フレンドモンスターの牧場を
経営してるんじゃないのか?
お、よく分かったな。
それにグレントを呼んだのには訳が
あってね。今は俺が一時的に預かってるけど
コイツと契約を交わした親がいるんだ。
へぇー、そうなんだ。
言葉遣いや人に対する姿勢が良く出来てる。
良い飼い主に恵まれたに違いねぇ。
狐族のランザー、レルナ、ヒューナと共に
行動していたレブロンのフレンドモンスターである
グレントが遂にフェルマータ城前で
感動の再会を果たす。
それと同時に、
フランバージュのメンバー "グラッツ" が
以前シルドラ達が訪れたアロウドブリッジ近辺の
フレンドモンスターの牧場を経営している事が発覚する。
次々に明らかになるメンバー加入の秘密。
もちろんアッジやロギュアの2人にも――。
****
場所は戻り、ヴァンウッド。
旅人の宿前の中央広場。
おい、離せよ!!!縄なんか手首に付けやがって。シルドラから
ネックレスを奪わないといけないんだ。
もちろん。
彼のような粗暴な人程手に負えないからな。
拳を塞げば何も出来ない。それ位
僕にとって朝飯前。大人しくしていれば
危害は加えない。約束する。
でかしたぞ、シモン。
冷静な分析と対応力、見事な物だ。
【シモン】
もちろんです。この程度
マツカゼ殿の出る幕ではありません。
【マツカゼ】
頼もしい限りだ。
それにイムラも御苦労。其方は力が売りだ。
常に陰ながらの後援には感謝してるぞ。
【イムラ】
こんな形でしか出来ないけどな。
これでも手加減したんだぜ。下手すると
腕の骨折ってしまう位だ。
ブルーノ様直々に
僕の自己紹介をしてくれるなんて光栄です。
彼はシノヴァシアに住む
6歳~12歳を対象とした子供達に
忍としての極意を教えてくれるシモンさん。
面倒見があって、優しく接してくれると
皆さんから絶大な人気を誇っています。
学って言うのは人を成長させる物。
僕の教え子達がそう思ってくれていたんだな。
そして、次はイムラさん。
彼にはこの目で対応しないといけません。
そうだな。今日もお前の瞳は燃えてるぜ。
一勝負するか?
今は貴方の自己紹介をさせてくれ。
彼の名はイムラ。13歳~20歳を
対象にした子達に忍の実践を指導していてな
この里では珍しい熱血派。その服も
自分の好きな色、赤に合わせて
仕立てているみたいだ。
さすがだな。要点を抑えつつ
俺の性格をきちんと言えてる。合格だ。
じゃあ、最後はボクが
マツカゼさんの自己紹介させて貰うよ!
あっ、でも
余計な事言うと怒らせちゃうんだよね。
だから多少、端折るかもしれないけど許してね!
端折るって
短く縮める、って言う事だよな。
確かに拙者の歴史を語ると長くなる。
彼の名前はマツカゼ。
シノヴァシアの中で最年長。ブルーノ様の
次に偉い存在で、20歳以上の人達に忍の
応用的な実践と共に、さっき教えた誠拳道の
師範を担っているんだ。かなり友好的でね
里の皆から愛されているんだよ。
と、言うと……
ブルーノがさっき言ってた3人の師範って
マツカゼ、シモン、イムラの事を
言ってたんだな。
そうだ。話はブルーノから聞いておる。
其方はミルフだな。
そして、
此方で寝ている御方が
この物語の主人公シルドラ=ロッド。
長のお墨付きでヴァルを救う鍵。
それを付け狙うのがフランバージュ。
必要以上に彼を追い掛けるのが
ブロス、其方なんだな。
何だよ!!!そんな憐れむような顔で僕を見るなよ。
早くこの縄を解け。こっちは急いでるんだ!
マツカゼ殿に向かって何たる言動!悪いけどシルドラ君が起き次第
君をシノヴァシアで取り調べる事が
決定してる。簡単にフェルマータ城に
戻れると思わない方が良い。
それにしても、マツカゼさん。
左目に負ってる傷なんだけどさ……
うむ。鋭い目をしてる。
これは誠の傷と言ってな、拙者の
人生においての勲章のようなもんだ。
それに、身体中には誠拳道の稽古中に
弟子達の攻撃を食らった痣が多数存在する。
別に良いんだ。
お構いなしにやってくれた方が
指導する身として助かる。イムラなんか
顔に数本の鍼を縫う位の傷を
付けられた事がある程だ。
ふふん。
これ位の傷、屁でも無いさ。
それ程懸命にやってくれている証拠。
教えてる甲斐があるってもんだ。
それにしても、拙者の稽古を
サボるなんてどういう事かな、ん?
誠拳道に近道は無いって言ったよな。
笑ってられるのも今のうちだぞ。
おいおい、ブラウン。
シノヴァシアの何処を探しても
居ないと思ったら、師範の目を搔い潜って
ヴァンウッドに来てたとはな。
お前もやるのう。
しかし、貴方の成長を誰よりも
陰ながら見守ってくれているんですよ。
鍛錬してこその成果です。その事を
忘れないで下さい。
さてと、ブロスを
シノヴァシアへと連れて行くとしよう。
別に取って食う訳ではない。何か事情を
抱えてそうだしな。大丈夫だ。
それとブルーノ様には
シルドラ君の起床次第で、ミルフ達と
共に里の方へと来て貰いたい。如何かな?
残念だ。拙者は敵であろうが
友好的な関係を保てると思ったんだけどな。
ただ、これだけは言わせてくれ。
さっきから貴様、無礼千万極まりないぞ!
少しは言葉を慎んだらどうだ?
まあまあ。ブロスの言い分も大いにある。
それを聞くのが拙者だ。気軽に話してくれ。
さあ、行くとしようか。
かくして、3人の師範は
ブロスを連れてシノヴァシアへと向かい
旅人の宿の前での言い争いは何とか阻止する事に成功。
次回、いよいよフェルマータ城での
処刑寸前のヴァル解放に向けてティブルエイドの各所で
様々な動きを見せる各キャラ。シルドラ達は
ヴァンウッドの森の巫女族に別れを告げ
忍びの里シノヴァシアに遂に到着しては
決戦間近の何気ない一日を過ごす事に。
イムラが指導する生徒の元へ足を運ぶシルドラ。
ただ、しかし珍事件発生。
済まん済まん。別に
シルドラを狙ってた訳じゃないんだ。
こ、これは強烈ですね。
まさにチンだけに珍事件です……
トホホ。
抱腹絶倒、ブラウンの暴走
走り回るとんでもない爆弾発言による
前後編に渡るシノヴァシア・エピソードは近日公開。
シルドラの果てしないツッコミに
刮目せよ。
第054話(前編)へ続く。
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