第049話:ヴァンウッドと旅人の宿!シルドラ達のリフレッシュタイム!!(後編)
文字数 6,422文字
中編のあらすじ
大浴場にて
何故かお尻を強調して
洗っていたブラウンとブルーノの2人。
羽目を外した結果、胸をソフトタッチして
パンパンするシルドラ遊びに発展してしまう。
挙句の果てに彼の魔の手から逃げた先は女湯。
更にミルフ達、女性一同を怒らせてしまい、
闇に包まれた表情で彼の説教開始。
そんな中、シルヴェスがようやく
自分が考案したオリジナル料理が完成し、
楽しい食卓を囲みながらの談笑が始まってから……
2時間後の出来事――。
聞いてくださいよ、皆さん。
ブラウン君とフラジーさんが全く僕の
話聞かないで暴走ばっかりするんですよ!!
おいおい、酒も飲んでないのに
何でそんなに泣くんだ?
泣き上戸じゃあるまいし……
泣いてるんじゃありません!
何かさっきからこのテンションでして……
シルヴェスさん、
もしかして先程私達が食べた料理の中に
ジュードオイルと書かれた御酢を
隠し味として使いませんでしたか?
あっ。そう言えば
ガスコンロの横に置かれてたから
使ったけど、不味かったのか?
やっぱりな。
平らげた皿からジュードらしい匂いがした。
あれは二十歳のシルドラからしたら
ちょっと厳しい酢かもしれない……
ジュードって言うのは
さっきのレモカットと同じ柑橘系の果物でな
実際に食べてみると酸味がある。基本お酢は
糖分があれば何でも原料に
出来るんだけど……
ほんの少し度数が高いんだ。まだ
初心者のシルドラにはキツかったかもな。
何とかして下さいよー!!
少し可笑しくなって来ました。
シルヴェス君のせいじゃありません!
こんな事で酔ってしまう
自分が情けなくて……
くっ。お、俺に掴まれ!
ルミシー様、ちょっと外に出たい。
安全な場所に連れてってあげたいんだけど
何処か夜風に当たれる場所無いか?
わ、分かりましたっ!
私に付いて来て下さい。シャノンさん、
ツリーハウスの鍵を貰っても良い?
あそこなら夜風に当たれます。
わ、分かりました。今取って来ます。
少々お待ちください……
ちょっと待った。
夜風に当たるという事は屋上に行くんだろ。
だったら、コレッタと
私も付いて行く。あのツリーハウスは
ヴァンウッドの森を見渡せる程の
高さがあってな、スチュキートが
攻撃できる範囲内にあるんだ。
お待たせしました。
ルミシー様、これがツリーハウスの鍵です。
オリアナさん、コレッタさん……
お2人を宜しくお願いします。
私も後でシルドラさんに
飲ませる薬を持参して伺いますね。
扉の鍵は開けたままで大丈夫です。
決して、シルヴェスが
作った料理を責めたりしない。
食卓を通し皆に笑顔を運んでくれた1品。
しかし、彼が隠し味に入れ
具材と一緒にかき混ぜたジュードオイルが
彼の酔いを目覚めさせてしまう事に。
全て自分の責任だと懸命にシルドラを担ぎ、
ルミシー達と共に、夜風が一番当たれる
ツリーハウスへと急ぐ。
うん。ボク達の事でたくさん怒って
それで料理に入ってたお酢で
酔ったんだよね。凄く心配……
でも、ブラウンはお酒が平気なのか。
てっきり飲めないものかと
思ったんだけどな。
ぷんっ!
ボク、こう見えて22だよっ!
ちゃんと成年してるもん!!
でも、お酒の飲み過ぎで
ちょっとお腹が出てるんだー。ポンッ!
目の前でシルドラ君が苦しんでいたのに
何にも出来なかったんです。場所は違えど
長の役目を務める事が僕には……
貴方は決して
何も悪くありません。顔を上げて下さい。
私達が今出来る事は安静にして貰ってる
彼の無事を祈るだけです。
無事に帰って来たら
皆さんでおかえりって言ってあげて下さい。
良い返事ね。
一先ず、私は作業部屋に
戻らさせて貰います。何か御用が
ありましたら、扉をノックして
頂けると助かるわ。
分かったー。
シャノンさん、夜遅くまでご苦労様です!
****
自室に戻り、
作業机の上に山積みで置かれている
様々な資料や素材に目を向けるシャノン。
そこにはシルドラの快癒の為に現在調合中の素材。
半壊してしまったフラジーのリンクリング。
その他にも理科実験道具で使われる
シャーレに似た円筒状の浅い容器に
気になる物が。
(何かの拍子で死んでいた
スチュキートを1匹採取して、少し
調べさせて貰ったんですけど……)
(まさか、
アングリアンを持つ
虫だと思いませんでした。人間の怒り成分を
増強させてしまう菌。もしかしたら
シルドラさんは刺された際にそれが
身体に流れ込んだに違いないわ……)
シルドラさんを
救う薬を作れるのが
私しか居ない事を見せてあげるわ。
今この瞬間が腕の見せ所なんだから!
今、激突する
シャノンの腕 対 スチュキートが持つ菌。
ハービングライセンスを所持し、
豊富な素材に対する知識量と正確性が
今シルドラを救う鍵となる。
現在ジュードオイルを含入し
酔ってしまった彼を安静にして貰ってる
ルミシー様や皆の努力に負けないように奮闘し始める。
****
旅人の宿がある
森の中央広場を通り右方向に行くと
複数にも樹木を支柱としている、横にも縦にも
大きいツリーハウスが建てられている。
以前は緊急避難場所として
使用されているけど、森の守護花シンティアが
ヴァンウッドに咲き誇って以来、滅多に
使用する機会が少なくなってしまった。
1週間に1回の割合で
シャノンが掃除をしに来ている為、普段は彼女が鍵を所持。
しかし、今はシルドラが緊急事態。
汗を搔きながらもシルヴェスは彼を担ぎ
ルミシーの指示通りに階段を駆け上って
森全土が眺める位の高さ10mを誇る展望台に
シルドラを寝かせる。
下手に動かすより
寝かせて安静を保った方が良いですね。
このままにして置きましょう。
正しい判断だな。
ルミシー様、私達に出来る事は無いか?
ありがとうございます。
でしたら、下の階に水道があるので
シルヴェスさんにお水をコップに入れて
持って来てくれませんか?
分かった。急いで持って来るとしよう。
コレッタ、付いて来てくれ。
水なんか要らない!
俺の作った料理のせいでシルドラは……
こんな目に遭ったんだぞ!
今出来る事は彼の側に居る事だけなんだ。
当たり前じゃないか。まだ日は
浅いけど、絆で結び合ってる友達なんだ!
だったら、もう何も言うな。
看病してあげてるお前への感謝として
受け取って欲しい。
確かに思いの丈を喋ったら、喉が
渇いて来たな。せっかくだし1杯
貰っても良いか?
素直でよろしい。今持って来てあげるから
それまでルミシー様の話し相手に
なってあげて下さい。
シルヴェスの膝に
シルドラの頭を乗せて寝かし付けている。
まだ、幼気な子供を
あやすかのように彼の表情を常に気に掛けながら
ルミシーと楽しそうな会話を交わす。
そう言えば、シルヴェスさんって
結構身体が大きいですよねっ。
私が知ってる限り
レブロンさんと同等の体格だと思いますよ!
ひゃっ!?胸が今動いたような気がするんですけど。
気のせいですかね?
ふふん。男の人はこのように
胸の筋肉を動かす事が出来るんだぜ。
す、凄いですっ!
ちょっと触ってみていいですか?
特に逞しい人が好きとかじゃ無いんですよ。
生の厚みを肌で感じてみたくて。
どうだ?
初めて男の人の筋肉を触るんだろ。
女の子目線で感想聞かせてくれ。
初めて殿方の筋肉質な
身体を間近で拝見した森の長ルミシー。
初めて見た物に感動を覚えると
同じように、シルヴェスの鍛え上げられた体格に
興味津々。異性の身体を触る事にちょっと
躊躇いながらも、生の厚みを肌で
感じたいと上半身をちょっと
触らせて貰う事に。
まだ私の歳に近いのに
こんなに筋肉って発達するんですね!
さっきより格段に
首筋や上腕二頭筋から三頭筋にかけて
血管が浮き出て、更に磨きが掛かった筋肉を披露する。
え、あ、えっ!?
シルヴェスさん、大丈夫ですか?
何かさっきよりかなり凄いですよ!
言葉失っちゃいそうですー。
十分ですよっ!
この体格になるまで毎日鍛錬し
続けた証です。良い身体を見せてくれて
本当にありがとうございました。
こちらこそ。
それこそ毎日大文字タケルの
写真を見てここまでトレーニングを
頑張って来られたお陰なんだ。
クロスウッドに
新しく設立された偉人図書館に
寄贈されている超人マッチョ図鑑の
1ページに記載されていた人物でな。
今は遠い世界にある
ゲノン帝国と言った大国で幹部として
動いているんだけど、同じ体格を持っていて
尚且つ何事にも勇ましく、堂々たる姿で
見る者を圧倒させる彼の生き様に
俺は感銘した……。
****
ツリーハウス、屋上から数えて下の階――。
大きく分けて2つの部屋で
構成されている。両方とも憩いの居間として
使われていて、森の巫女族全員が
収容出来る部屋でもある。
ただ、1つ問題なのは
色々な物をしまえる棚が多い為、何処に
コップが置かれているのが分からない。
二手に分かれて、部屋の隅々まで探す2人。
そして10分後――。
コレッタ、コップを見つけたから
水をちょっと入れて来る。
ちょっと待っててくれ。
写真立てに飾られたとある1枚の写真を見て
ニッコリと微笑むコレッタ。
お前が幸せそうな顔してるなんて
珍しいな。どうしたんだ?
この写真懐かしいですよね。
すっかり見入ってしまいました。
ああ、確かにな。
均衡の手約束としてシノヴァシアの連中と
一緒にフェルマータ城前で撮った
記念写真だ。大切に保管してるんだろ。
ええ。お陰様で
シルドラさんに塗布する薬は完成したわ。
区切りが付いたので、彼の酔い薬を
届けに来た所、貴方達に出くわしたのよ。
良かった。これできっと
シルヴェスさんも安心出来る筈です。
それにしても、フェルマータ城ですか……
以前はティブルエイドで唯一
神聖な場所だったんですけど。
今となっては物寂しい
廃れたお城になってしまいました。
何かあったのか?相当な事が無い限り、神聖な
場所があんな錆びれた城になるなど。
フェルマータ城は
処刑されようとしていたヴァル様を
助ける為にシノヴァルドの皆様が所有者の
一族を圧倒的な実力で襲撃し
崩壊させたのよ。
要するに攻め落としたと
言う事ね。結局彼は助けられなく
牢獄島の獄長に目を付けられてしまい
そのまま狼族の皆さんは
処刑されてしまった。
唯一の生き残りが
未だフェルマータ城で幽閉されている
ヴァルだけと言う事か。
それだけ分かれば良い。
私も何か起こればシルドラ達と共に
臨戦態勢に入るまでだ。もちろん
コレッタにも期待してるぞ。
後から追加したかのように
言わないでくれない? オリアナさんも
足手まといにならないで下さいね!
ステュキートに
刺されてしまった箇所を治癒してくれる
塗布薬をフェイスウォールで採取した素材を使い
一から練り上げ無事に完成に至った。
これこそ彼女の
薬草免許で得た努力の賜物。
しかし、まだ
彼に使用した訳ではない。
完全に勝利するには実際に塗り、無事に
快癒する事が出来るかどうか。とりあえず
屋上で療養中のシルドラの元へ向かい始める。
あら。シルドラさん起きていたんですね。
ご気分は如何ですか?
シルドラの膝には
可愛い寝顔付きの頭が乗っていて
つい先程まで楽しそうな談話していたけれど
気付くと2人仲良く寝てしまっていた。
シルドラ、この2人は酔ってしまったお前を
ここまで連れて来てくれたんだ。
でも、その水どうする?
シルヴェスさんが寝ちゃったから……
でしたら、シルドラさんに渡して
貰っても良いですか? 粉末状ですけど
酔い止めの薬を持って来ました。
お前、フランバージュのリーダー
アレドシア様に立ち向かえる自信はあるか?
水と薬を飲み干した状態で
オリアナから思いもよらぬ発言をされてしまい
少し困惑状態のシルドラ。
それもその筈。
先程の1枚の写真を通して
更にフェルマータ城で狼族の長ヴァルを救う為には
暗躍しているアレドシア率いるフランバージュを
抑え込まないといけない。
彼女が今問うのは "彼の中に眠る更なる勇気"。
3つの勇気の試練を乗り越えたからこそ
ここまで辿り着いた。
これまでの頑張りが決して紛い物では無く本物なのか?と。
しかし、シルドラは
今まで色んな人達に出会い
沢山交流して、気付かされた事が1つだけある。
それは……
今まで色んな絆を
様々な形で交わして来たんですっ!!!
どんなに高い壁が目の前に迫っても……
でも、その前に
シルヴェス君とルミシー様には
悪い事しちゃったな。こんな遅い時間まで
看病してくれたんだよね。
これがお前の本来の姿だ。
もっと誇らしく持て。今のシルドラ……
かなりカッコ良かったぞ。
その様子なら大丈夫そうだな。
遂にフランバージュが本格始動をし始める。
計画が残念な方向に傾いた場合
フェルマータ城はヴァル様、そして
ヴァールブルグ海賊団船長ゼルガス
クルーと共に……
シルドラ……
私達と共に運命に立ち向かおう。
お前を筆頭にミルフ達の協力も必要なんだ。
…………。
きっと、次会う時は
レブロンさんは敵かもしれません。
だけど、処刑間近の
ヴァルさんや一度交流した
ゼルガスさんを傷付ける事は
絶対にしません。僕はそう信じています!!
成程。どうやら覚悟が決まったようだな。
それこそ男だ。
微力ながらでも頑張ると
別れる際に彼と指切りをしたんです。
きっと待ってますよね……
レブロンさん、
時間はもう少し掛かると思いますけど
必ず迎えに行きます。
フランバージュの本格始動まで
残り……3日。
次回、記念すべき回。
目的の為には手段を選ばないリーダー、アレドシア。
ヴァルとゼルガスの2人を処刑の魔の手から
救い出そうと動き出すレブロン。
お互いの気持ちが、遂に激突――。
第050話へ続く。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)