第022話:フリューウィング起動!フラジーの華麗なテクニック炸裂!!(中編)
文字数 4,111文字
前編のあらすじ
エアロブルー、飛行場。
伝説の操縦士フラジーと友情の証である
"リンクリング" を交わす事に成功。そのお礼として
次のシルドラ達の目的地である "ホットソープ" まで
送り届ける事を約束し、久し振りに
"フリューウィング" を起動し
離陸したのも束の間……
【悲報】
フラジーの操作テクニックに火が付き、
ティブルエイド前半の土地を振り返りながら
今、かなりヤバい空、海、洞窟の旅が始まってしまった。
振り落とされるなよ!!! さあ、まずは
ヴァーズメルトの上空を飛ぶぞ。
確かホットソープって
飛行場から北西に点在していたような……。
何で逆走するんですか?
それに、せっかくだったら今まで
通って来た道筋を辿りたいだろ?
大丈夫。よっぽどの事が無い限り、
フリューウィングは安全だ!!!
別の方法でも出来ますよねっ!!!
確かにフラジーさんの操縦テクニックを
味わってみたいですけど、僕、初めて
飛行機に乗るんですよー。
だったら、尚更力入れないとな!!!
よし、急旋回だ。しっかりと掴まれよ。
フリューウィング、急旋回開始――。
現実、そしてこの世界でも
急旋回をする事は、操縦している
フラジーにとって大きな遠心力が加わり、座席に
強い力で押し付けられたり、血液が足元の方に寄って
貧血症状や、4G以上の遠心力を受けると
目の前が真っ暗になる症状を受けるけど
彼はベテラン。そんな困難を乗り越えてきた。
※4Gとは……
Gは重力加速度、4Gの遠心力と考えると
加速度を生じさせる力に等しい遠心力と言う事。
物の数分で、ここはヴァーズメルト上空――。
シルドラ達が空の旅を堪能している頃、
店長シルリアと妹のプラムは庭の掃除をしていた。
【プラム】
今頃、シルドラ君達は
エアロブルーに着いたかな?
【シルリア】
多分もう到着して、ホットソープに
向かってるんじゃないかしら。プラム……
あの時が懐かしいわね。
うんっ。シルニャンとレブニャン
可愛かったからね。また遊びに
来てくれると嬉しいなー。
きっと、次会う時は新しい仲間を
連れて来てくれる筈よ……
そして、上空――。
慌ただしい飛行艇の座席で
ヴァーズメルトで起きた珍事件を振り返る
ミルフとレブロン。シルドラと一緒に居るからこそ
味わえる体験をしたんだなあ……と
改めて実感する2人。
確か、ミルフが俺達を元の姿に戻すのに
シルリア達と奮闘してくれたんだよな……
なかなか出来ない体験が味わえたぜ。
それがシルドラと一緒に居る醍醐味。
"フランバージュ" の言葉に驚きを隠せず、
思わず手が滑って、
操縦桿を
手前に引いてしまった事で機体が傾いてしまい、
滞空維持していたのが飛行艇は
真っ逆様にクラムビーチ周辺の
海に落下して行く……。
ちょ、ちょっと……
早く飛行艇の体制を元に戻して下さい!!!
そこの操縦桿を握って押せば
何とかなるんじゃないですか……。
ただ、スリルを感じたいだろ?
海面ギリギリで体制を戻してやる!!!
あっ、あああ……!!!
フラジー、もうすぐ海面に着水するぞ。
着水まで秒読み開始……
ただフラジーは懲りずに、今度は
海面ギリギリで操縦桿を押して、元の体制に戻す行動。
普通だったら出来ないこの行為も
彼の場合、不可能を可能にしてしまう。
時は同じく、ここはロックドクリフ――。
レブロンとの筋肉講習、そして
シルドラに地図作りの極意を教え終わり
自宅に戻って、庭でストレッチを行っていたのは
ティブルエイドで権威のある博士。と言えば……。
【ゴッシュ】
ん? 今誰かに呼ばれたような気がするな。
あれ。何処までストレッチやったか
忘れてしまったぞ。
まあ、いいか。そんな事より
シルドラ君達は元気にしてるかな?
彼も一時はシルドラ達と
時間を過ごした仲間、そして
地図作りに置ける先輩でもある。ティブルエイドで
過ごした過去と思い出が詰まっている代物、自分と
地図作りの心構えが類似している部分があると、
もう一度思い返していた――。
そして、クラムビーチ周辺の海岸に着水
していると思いきや、再びテクニックが炸裂中な為
水面走行待ったなし。
少し離れてはいるけれど、砂浜で
ビーチバレーで遊んでいたり、パラソルの下で
身体を休めている美女に目を奪われていた……。
うひょー!!!美女、そしてチラ見せ盛り沢山っ!
どうせだったらビッケとチャイも
デカかったら良かったのになあー。
だって言うだろ?
刺激が欲しけりゃバカになれって……
ちょっと待った!!!そのフレーズ、あの有名な初夏に聞く歌の
一部ですよね。さっきから色々
ヤバいですって。
失礼だな。俺はいつでも真面目だぞ。
よし、シルドラ君。ここからは
地図を持ってくれ……。
ん、何かフラジーさんの
雰囲気が変わったな。どうしたんだ?
ここから先は皆にとって
未開拓の地だ。今から目と鼻の先にある
滝の裏から洞窟に入る。フリューウィングに
乗っている際でも地図を持ちながら景色堪能
していれば必然的に書き込まれる筈。
試してみてくれないか?
あ、そういう事ですね。
えっと、確か地図はリュックの中に……
レブロンさん、取ってくれませんか?
後部座席に座っているレブロンに
頼もうとすると、もう既にリュックの中に
入ってた地図の方眼紙を手に取り、シルドラの代わりに
ずっと太陽に翳しながら彼の手伝いをしていた。
ほら、シルドラ。
お前が景色堪能している間に
このフリューウィングの航路を地図に
刻み込んであげたぞ。忘れちゃダメだろ?
ありがとうございますっ!!!
ん、滝の裏の洞窟……?
ちょ!!! 洞窟って危なくないんですか?
確か、そう言う場所の天井って
鍾乳石の確率が高いような……
大丈夫だ。確かに暗所を通過するけど
これがホットソープに行く一番の
近道なんだ。さあ、地図を懐に
忍ばせてくれ。濡れるぞ!!!
ま、待って下さい!!!
ポケットに地図が入らない……
水も
滴るいい女ってか?
あたいは濡れても全然構わないけどな。
進行方向、真っ正面に見えるのは
まだシルドラが訪れた事がないクラムビーチから
行けるファウンドフォールと言った滝。
そして、その裏には
ティブルエイドの裏とも言える洞窟地帯――。
自然の造形物、冒険者の修行の場でもあり、遊歩道で
行ける範囲にはモンスターが待ち構えている。
この大陸には、この洞窟に行ける出入口が複数存在
してあり、最奥にはお宝が眠っている噂……、そして
フェルマータ城に行ける通路も。
****
ここはファウンドフォールから出入りした洞窟――。
さっきと違って雰囲気がガラリと変わり
薄暗い空気感、そして神秘的な場所に
飛行艇で来ていいものかとシルドラ達は
少し安堵している。
ただ、単純に空、海と来て
思いも寄らぬ展開に呆気
取られているシルドラ達はスリル満載……、
いや、シルドラの脳裏にこびり付く位の思い出に
残りそうな濃厚過ぎる空の旅を満喫していた。
もう、いきなり過ぎてせっかく
ユエリアさんがコーディネートしてくれた
洋服が濡れちゃったじゃないですか!
それにしても洞窟の天井に近い所を
飛行艇で抜けるなんて味わった事無いぜ。
こんな間近に鍾乳石が見れるなんてな。
でも、フリューウィングに突き刺さったら
一溜まりも無いですよ……。
それこそこの体制を維持出来てる
フラジーさんの操縦が凄い事ですよねっ!
それにしても初めてこの洞窟に来たけど
広いもんだな。ほら、シルドラ見てみろ。
流水路のあちらこちらに石筍が見えるぞ……
まさに自然が残した宝物です!!
数年掛けないとあそこまで成長しませんよ。
※ 石筍とは…・・鍾乳洞の床に見られるタケノコ状の岩石。
天井から零れ落ちる滴に含まれている
成分にとって固まった物。
1cm伸びるだけで数十年掛かると言われている為
相当この洞窟は古くからティブルエイドの
1つの遺産として皆から愛されている様子。
大切にしないと行けない……、えっと
文化遺産みたいな場所ですね!!
こんな大自然を五感で味わえるなんて
シルドラのお陰だな!!!
ミルフさん、レブロンさん……
何か音が聞こえたんですけど
僕の気のせいですよね。
シルドラ、大丈夫だ。
何か音が聞こえてもこの俺が……
ギュィーン と鳴き声を上げて
シルドラ達を襲おうとしていたのは
コウモリモンスター "ブラッドバッド"。
※ ブラッドバッドとは……
フレンドモンスターとは違い、凶暴なモンスター。
ティブルエイドの各地で問題視されていて
人間を見つけては襲撃し、血液を好むコウモリ。
被害を受けた冒険者達が後を絶たない。
ただ、このモンスター達は普段この洞窟には
居住していない。何処からかやって来た様子……。
お願いだ。急いで逃げてくれ!!!
俺はコウモリの類が嫌いなんだ……。
シルドラ、ミルフ……伏せろ。
こいつ等は人間の血を好む!!
えっ!?
そんな凶暴なモンスターなんですか。
ふ、フラジーさん。レブロンさんの
言う通り早くここから脱出しましょう!
速度出力をアップさせる!!!
皆、何処かに掴まってくれ。
【悲報】
レブロン、大の蝙蝠嫌い。
彼等は洞窟の天井を飛んでいたブラッドバッドの
大群を掻い潜ってホットソープに辿り着けるか。
第023話、後半へ続く……。
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