第028話:本日開園!マリーナブルーの超絶スプラッシュ・ダンス!!(後編)
文字数 6,196文字
じゃかわしい。
何回自分の下半身から海パンが
ズレ落ちるんだ。あ?
だったら、何回でも買い直す事出来ただろ。
自分の筋量分かってる割には
サイズ把握し切れてないんじゃないのか?
ご最もであります。
ただ、此処は公共の場。こんな姿を……
バンッ
四つん這いの姿になったレブロン。
赤く腫れ上がった彼の尻に絆創膏を貼る。
他の人から見たら調教しているように思われる為
ミルフを何とか説得するけど、今の彼女に
何を言っても無駄――。
徐々に滑り終わり、その2人のやり取りを
見ているシルドラの元にエンディア達が合流。
ひいいいいいいい!!!
い、痛い!!! 絆創膏貼るなら
もっと優しく貼って下さい。
あたいの前でブツを晒した罰だ。
次は無いからな……。
おい、シルドラ。
何だあの羞恥プレイは?
レブロンさんがやらかしたんですよ……
さてと、ちょうどお昼時なんで
少し食事摂って来ます。彼の事
宜しくお願いします。
シルドラ、俺とアロイスも一緒に行くぞ。
構わないよな?
ちょっと待った!
ユリシール達の元に俺等は行く。
何処にいるか場所教えてくれ!!!
ディーププールに居ます。
多分僕の事待ってると思うので、食事を
摂りにいったと伝えといて下さい。では……
レブロンが調……いやいや
説教されている光景を目の前にし、シルドラは
エンディア達に "あくまで見てる振り" と
心を少し黒くして
更衣室で自分の海パンに履き替えている出来事を
未だ根に持っていて、少しはミルフに怒られた方が
良いと、ニヤリと裏の顔を見せていた。
(シルドラ!!! は、早く……
ミルフ様の怒りを鎮めてくれ!!!)
【悲報】
レブロン、恥ずかしい想いで
ミルフに尻を叩かれ、絆創膏を貼られてしまう。
そこにはもう、シルドラ達は居ないとも知らずに……
****
ここは、プール中央広場に近い食事テントエリア――。
リラクゼーションホールに設備されている
バイキング形式のレストランに引けを取らない程
豪華なラインナップが取り揃えられており、リゾート感を
醸し出している食事が豊富。
ちょっとお洒落に出来たテーブルに座って
シルドラの帰りを待つシルヴェスとアロイス。
でも、本当にこのマリーナブルーって
凄いな。お客様のニーズに応えた施設と
言っても過言じゃないぞ。
あっ、でもお前のその逞しい身体付き……
レブロンやエンディアみたいに
食事管理してるのか? 今まで
聞いた事無かったけど。
いや。俺は特別な事はしてないんだ。
トレーニングに関しては父親譲りで、
いつの間にか分厚い身体に大変身って事さ!
類まれなる努力って言う物か。
と言う間に、シルドラが戻って来たぞ。
あっ、遅くなってすみません!
次から次へ目移りしちゃって、
どれ食べようか迷っちゃいましたー。
クランブナッツとブルーヴジュレの
パンケーキを頼みましたー。
美味しそうな匂いだったので、つい。
美味しそうな匂いじゃないか。
気付いたらもう昼時なんだな!!
えっ!?
れ、レブロンさん。
もう大丈夫なんですか!?
そうなんだよ!!!
とりあえず昼飯食べながらでも良いから
聞いてくれ。大変だったんだぞ!!!
――って事なんだ。尻は痛い。
説教時間20分。ミルフ様からの説教……
災難だな。それでもレブロンの凄い所は
いくら言われても決して自分の意志を
曲げない所だ。更衣室とシャワーコーナーの
一件があって説教されても顔の表情
1つも変えなかったからな。
ああー。この焦がしクランブナッツ
少し苦いけど香ばしくて美味しいですねっ。
確かにレブロンさん……
熱血漢に溢れていて、まだ自分に
足りない物を見つけてくれる優しい人です。
欠点があってもそれを素に出さずに笑顔で
振舞ってくれるんで、もう最高!!
やっぱりそう言ってくれると
信じてたぜ。大丈夫だ。さてと……
ここに向かっている最中に
スプラッシュ・ダンスって言うイベントを
主催しているスタッフからこんなモン
渡されたからな……。
スプラッシュ・ダンス 協力スタッフ一同。
そして、レブロンの名前が記載されてある
1枚の手紙――。
少し見える範囲で、"数ある候補者の中から
厳選なる結果をした所、レブロン様が……" と
伺えるけれど、その先の内容が全く見えない。
パチもんかと確かめに行く所、
食事している最中のシルドラ達に
出くわした模様。
確かに気になる内容だな。
ふーん。スプラッシュ・ダンスか……
確か17時からだったよな。
昼飯食べて、一泳ぎしてから俺は向かうぞ。
もし先にエンディアと合流するようなら
そう伝えて置いてくれると助かる。
レブロンさん。プールサイドは
走っちゃダメですよー。
気を付けて下さいねっ。
えっ!?
な、何でここだけツルツルしてるの?
あっ、あっ、お、落ち……
ドボンッ。
清掃員がさっきまで念入りに周辺を
掃除していた為、地面に敷き詰められたタイルが
ピッカピカに磨き上げられているせいか、勢いよく
滑ってしまい、食事エリアのテント周辺をぐるりと
流れているネイチャープールに
落下からの着水――。
監視台に居るスタッフがいち早く気付き
ホイッスルを鳴らす。
その後、レブロンはイベントが
開催されるステージ前にあるマッスルプールへ。
そして、シルドラ達は
昼飯を食べ終わり、17時から始まる
スプラッシュ・ダンスが始まるまで、
一旦アロイス、シルヴェスと解散してそれぞれ
思い思いの時間を過ごしていた。
マリーナブルーの魅力に憑りつかれると
1日じゃ周り切れない程、もう一回行きたくなる
工夫が様々な場所に施されている。彼等もその1組。
指針は
"きっと、誰かの心に思い出が届く"
経営者が、自信を持って届けられる
心から楽しみ、皆の思い出に刻み込まれる
場所になって欲しいとイメージカラーである
青と水の意味を持つ名前を取り入れたマリーナブルー。
今日はオープン当日。
その狙いは見事的中――。
【経営者兼???】
こんなにオープン初日から満員御礼とは。
冒険者や観光客、様々な客層を取り入れる事
何とか成功しました……。
次の目標は
現在ティブルエイドに置いて
人気観光スポットエリア、温泉街 "ホットソープ" を
越す事。常に上を目指して様々なエンタメが
集まる施設を今後も狙っていく経営者。
そう、彼はシルドラもよく知っているあの御方……。
****
そして、時間はイベントが開催される
30分前――。16時30分。
マッスルプールに続々と集まる体格の良いマッチョ軍団。
拳闘士、格闘家、レスラー様々。
ガタイが良い体格とのせめぎ合い。
現在は3密(密着・密接・密集)を避けなければならない。
しかしここは現実とは違う。
掛け離れた世界、ティブルエイド――。
マッチョはお互いの筋肉を間近で見て褒め合う同士。
今までトレーニングして来た成果を見せ、アピールする場。
更にステージ前には野鳥の会みたいに
双眼鏡を用いてプール内の様子を見ている
スタッフの姿が。
えっとー、あの資料に書いてあった
赤髪の奴、何処にいるんだ?
それにしても、スゲェ奴等ばかりだ。
さすが、マッスルプールを求めて
来るマッチョは一筋縄じゃ行かないな!
レブロン。俺がさっきそいつに出会って
手紙を渡した筈だからこのプール内の
何処かにいると思うんだけど……
うーんと、写真と照らし合わせて
えーっと……
あっ、いた!!!
よし。もうすぐ開始時間だ。
松明の火、マッチョダンサーの
準備を始めるぞ。あの方の為に
必ずこのイベント成功させるぞ!!
あっ、ここがマッスルプールだよっ!
エンディア様と同じような人ばっかりー。
まるで、サウナに来た気分ね。
熱気がここまで漂って来るなんて相当よ……
あーっ、カインドフォースの皆さん
やっと見つけましたよー。
お。シルドラ達も来たのか!!
ここ特等席だぞ。一緒にイベント見ようぜ。
もちろんですっ!
ここに来る最中、ミルフさんと
アロイスさんと合流出来ましたよー。
おう。シルドラから聞いたぞ。
アイツ等、あのプール内に居るんだろ。
せっかくマリーナブルーの一押しイベントが
始まるんだ。ちゃんと見て行かないとな!!
シルドラ、レブロンと過ごす
最後の夜が
もうすぐ来る。とことん楽しもう。
さあ、時間だ。俺達も精一杯
盛り上げような!
屋外ステージ、マッスルプール、観客席周辺の
電気が一斉に消え、松明だけが
灯りを照らし、皆の目線は一気にステージ上へ。
【司会者】
Ladies & Gentleman!!!
今宵、熱き宴がマリーナブルーの
オープン当日の締めくくりを彩る。
さあ、お前等準備は良いか!?
【マッチョ集団/マッスルプール内】
うおーーーーーーーー!!!!!
うおー!!!! と
ステージ上に居る司会者の熱がこもった口頭で
皆を煽るように一気に会場のボルテージを上昇させていく。
よし。マッスルプールに居る
マッチョ集団!!! 自らの逞しい身体を
揺さぶる魂のダンスを見せてくれ……、
いや。もちろんやってくれるよな?
【マッチョ集団/マッスルプール内】
うおーーーーーーーー!!!!!
あ、それとだ!
このプール内には事前にスタッフが
手紙渡した奴がいる。そう。たった1人しか
渡していない。そいつにはこの
特設ステージでマリーナブルー選りすぐりの
マッチョスタッフと踊る権利がある。
その名を呼んで良いか!?
何だと……。
お、俺そんな手紙貰ってないぞ。
2人はどうだ?
いや、貰ってない……。
くそ、あのステージで俺の筋肉アピール
出来るチャンスだったのに。
レブロン、お前はどう?
あっ!!!この手紙ってそう言う……。
お、俺、俺が……
さあ、ステージに来てくれ!!!
戦った試合は完全無敗。そう、あの有名な
男性格闘家グランザ・エルフォードの弟……
あっ、貴方は確か……
お久し振りですね。アジールさんっ!!
【アジール】
シルドラ、そして皆さん……
元気にしてましたか?
もちろんです! 見て下さいっ。
友達も増えて、笑いあり涙ありの
冒険堪能してるんですよー。
あっ、もちろん
地図作りとリンクリング欠かさずに
登録していますっ!!
でも、ここで再会するとは思わなかったな。
どうだ、マリーナブルー楽しんでるか?
あっ、そうですよ!!
レブロンさんが特設ステージの上で
踊る権利が当たったみたいで、驚いて……
お、やっぱり君は勘が鋭いね。
君達とはビューウェーブで会ったけど
改めてもう一回自己紹介しよう。
俺はアジール。
此処マリーナブルーの経営を担当していて
このステージイベントの考案、そして
レブロンさんを抜擢したのも
全て自分なんだ。
でも、アジールさん。
何で、レブロンさんを抜擢したんですか?
ああ。彼は普段
フランバージュで活動している。
シルドラが旅立った直後、実は君達が
訪れた所を自分の足で全部回っていてね……
と、言う事は
ロックドクリフ、ヴァーズメルト……
エアロブルーとか……ですよね。
もちろん。その際に
レブロンさんと共に行動してる、そして
風の噂でもうすぐ彼と一時的に別れると
聞いたもので、皆さんに良い思い出を
作って貰おうと思って、つい。
ダメでしたか?
ダメじゃないぞ。アイツと
もうすぐ会えなくなるのは寂しいけど、
暫しの別れなんだ。な、シルドラ?
最後の一夜ぐらい思いっ切りはしゃいで
貰わないとな!!!
もちろんですっ。
たまには大きく深呼吸して……よし!!!
観客席から特設ステージ上にいる
レブロンに向かって大きく声を張り上げるシルドラ。
今そっち行きますねっ!!!僕もマッチョの皆さんと一緒に
盛り上げたいですー!!!
あくまでプールサイドはゆっくりと歩き、
マッスルプール内にいるマッチョ集団に
初めて会う為、お辞儀を交わしながら
ステージに上がり始める。
お、サプライズゲストか!?
君、是非名前を聞かせてくれないか!?
僕の名前はシルドラ・ロッド。
ティブルエイド含む全ての大陸の地図を
作り上げる夢を掲げて冒険していますっ!
この場を借りて、マッチョ集団と最高の
思い出作り。そして……
明日で一時別れるレブロンさんとの
最後の交流なんですっ。皆さんも笑顔で
送り届けませんか!?
【マッチョ集団/マッスルプール内】
いいぞーーーーーー!!!!!
シルドラーーーーー!!!!!
やってやるぞーーーーー!!!
よし!!!!
オープン当日を締めくくる
最高のイベント楽しんでくれ!!!!
筋肉に不可能は無い!!!
シルヴェスと共に沸かせてやる。
スプラッシュ・ダンス。
最高の思い出作り、俺も協力するぞ!
レブロンさんと過ごす最後の夜。
ほんの少しでも一緒に居たのは
かけがえのない思い出、そしてこれからも。
システィア、準備は良い?
もちろんっ。
暑苦しいのは好きじゃないけど
盛り上げるのは大好きだから頑張るよー。
マッチョ集団、関係者、そして
皆さんと作り上げるスプラッシュ・ダンス。
アジールさん、素晴らしいイベントを
ありがとうございます。
もちろん。知ってるか?
スプラッシュって言うのは、皆からの
注目を浴びる意味も持ってるんだ。
此処にいる全員がこれから色んな形で
この冒険界を席巻していって欲しい……
よし。俺も頑張って
盛り上げなくちゃいけないな……。
マッチョダンサー準備オッケー。
松明の火も点火よし。
じゃあ、皆盛り上げてくれよ!!!
ここはマリーナブルー。
皆で協力しながら作り、盛り上げていく施設。
スタッフとここを訪れた人達が紡ぎ、これからも
ホットソープを越す為に少しずつ認知度を増し
ティブルエイドを活性化していくに
違いない……。
あれから会場の熱気は最高潮に達し、
ステージ上にいるシルドラ、そして一緒に盛り上げた
エンディア達もレブロンにとって最高の一夜になった。
きっとこの思い出は忘れる事が出来ない
どんな瞬間も――。
次回、
遂にレブロンとの別れ。そしてフランバージュとは違う "何か" が
水面下で動き出そうとしていた……。
第029話へ続く――。
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