第007話:朝食の材料獲得作戦! イノボーvsミルフ!!
文字数 4,168文字
無事にミルフとリンクリングを交わし
町長のアジール、そして住民達の
心躍るような粋な計らいによって
港町 ″ビューウェーブ″ を旅立ったシルドラ。
あれからどれぐらい時間が経っただろう……。
次の目的地、ホットソープに行くには
この1本道の先にあるエアロブルーと言う
飛行場から向かわないといけない。
現在の時間、夜の21時前後――。
この時間帯に出歩くのは危険と
判断し、手頃な簡易休憩ペースを見つけた2人は
焚火をしながら仲良く談話していた。
会った時から気になっていたけど
いざ聞くと恥ずかしいな……。
あっ、もしかしてミルフさんって
緊張しやすいタイプですか?
シルドラは流石だな……。
正解だ。こうやってトレーニング
している事で緊張するのを
直しているんだけど、中々良く
ならないんだ。どうすれば良いんだろう?
だったら、トレーニングの時間帯を
朝にして太陽の光を浴びる事を
お勧めしますよー!
へえー、結構物知りなんだ。
体力派のあたい、頭脳派のシルドラってか。
お互い良いパートナーになりそうだな。
僕の趣味は釣りや、こう見えて
ランニングするのも大好きです!!
運動するのは苦手だけど……。
それでも自分が出来る範囲で
身体づくりは必要かなと……思って。
どうですかね、ミルフさん?
自分にしか出来ないトレーニングを
見つける事が必要だ。もしそれが
シルドラのやり方ならそれを貫く事が大切。
ありがとうございますっ!!
あ、ちなみにミルフさんの
趣味って何ですか? 気になりますよー。
あたいの趣味は……、
格闘技観戦や、キャンプ……いや
野宿する事かな。常に1人だったから
もう慣れちゃって。いやあ、参ったなあ……
やっぱり、僕の思った通り
ワイルドな性格してるんですね!
やっぱりミルフさんはそうじゃないとー。
あっ、もしかして……
格闘家を目指してるという事は
尊敬してる人が居るって言う証拠ですよね?
やっぱりシルドラは勘も鋭いな。
そうだ。男性の格闘家で
名はグランザ・エルフォード。あたいは
彼の生き様に感銘して、こうやって夢に
向かって旅していた所、お前に会ったんだ。
そうなんですね!
でも、夢に向かって歩んで居る
姿は僕と一緒なんですね。
お互い頑張りましょう!
ミルフは立ち上がり、
休憩ペース周辺をザッと見回り危険が無いかと
確かめ、薪の火を足で消して行く。
もう彼女からしたら単独旅をしていた為
行動力はお手の物。ただ、今は冒険初心者である
シルドラと一緒の為、彼を警護しつつ
就寝する準備をし始める――。
さてと、薪の火も消したし……寝るぞ。
明日はちょっとシルドラにやって貰いたい
事があるから、朝7時起きだ。大丈夫か?
今日1日起きた事、彼女との出会いや
港町を旅立って、自分が思い描いた冒険を
今喜びを噛み締めて経験している。
シルドラは世界地図を作る夢、そして……
ミルフの夢は尊敬している人物に向かって
女流格闘家を目指す。お互いが更に切磋琢磨し合う
仲になればどんな困難にも打ち克つ事が出来る。
″次はどんな冒険が待っているのだろう″
彼の好奇心旺盛な性格が冒険心をくすぐらせる。
そう、冒険はまだ始まったばかり――。
****
場所は変わり、ここは
ホットソープ ″ヴァリングス″――。
シルドラの元を訪れたラグが戻って来て
再び番台として勤めを果たしていた。そして
掃除番や、各階の温泉の湯加減を確かめていたのは
以前エアロブルーの飛行士である
ビッケと一緒にいたリタ。
もうっ、買い出し頼んだのラグなのに
当人が留守にするってどういう事よ。
仕方ないから違うスタッフに掃除番やらせて
私が番台やっていたんだからね!!!
ああ、済まねえな。
ちょっとピュアブルーに行ってたんだ。
偶然だけど、話をしたら食い付いてきた
ありゃあ、20と見た。冒険者の端くれ……
名はシルドラ。呼び込んできたぜ!!!
お客を勧誘するのは良いけど、
せめて出掛けるならメモ書き残してから
行ってください! もう罰として
今月の給料少し高めに貰おうかしら?
うっ……。それだけは……
済まなかった。今後は気を付ける。
脅し成功よ。やっぱりラグは
私には頭が上がらないんだね……。
くっ……。またいつもの手に
引っ掛かったと言う事か……。
その時、ヴァリングスの温泉に
浸かろうと暖簾を潜って番台の元へと
やって来たのは、謎が多き人物 ″ブルーノ″。
おう。ブルーノ、久し振りだな!!
忍者の里 ″シノヴァシア″ の皆は元気か?
そうか。だったら先に湯に浸かって来な。
話はそれからでも遅くはないだろ?
それに、温泉に入るとリラックス出来るから
その心配な気持ちを解消してくれる事
間違い無し。ブルーノさん、まず
一呼吸置いて来たらどうかしら?
せっかくですので、ごゆっくりと
堪能して来ます。あ、入湯料ですよね?
こちらに置いて置きます。
おう!!!
当館は24時間フルオープンだ。
心行くまで堪能して行ってくれ!!!
忍者の里 ″シノヴァシア″ は
後にシルドラが行く事になる重要な場所でもある。
ただ、少し厄介な事態になっている為
この大陸を常に移動しながら、各町にいる彼の
知っている人物を訪問していては
色々話を相談している。そう……
ラグとリタはブルーノの関係者。
そして、シルドラの様子も常に監視している――。
彼も色々大変ですね……。
でもブルーノさんからしたら
放って置けない事態に
なっているのは間違いなさそう。
それ程里の皆が心配なんだろ?
アイツはそういう奴だ。
泣かせるじゃねえか。その分、俺達は
彼をもてなす位しか出来ない……。
年中無休、24時間オープンの
ヴァリングス、従業員である番台のラグ、
そして掃除番リーダーのリタ。
2人の眠れない夜は今日も続く……。
****
気付けば時間は朝7時。それよりも早く
起きたミルフはシルドラの言われた通りに
朝の光を浴びながらトレーニングを終え、
彼の元へ戻って来ると、近くにあった
蛇口を捻って顔を洗っていた。
おう。早速言われた通りに朝の
トレーニングをやって来たぜ。やっぱり
清々しい気持ちになれるんだなあ、これが。
早速、僕の意見を取り入れて
くれたんですね。凄く嬉しい……
あ、そうだ。僕昨日アジールさんから
少しお菓子をお裾分けして貰って、それを
食べてから何にも食べて居ない。
お腹空いたな……
あっ、ミルフさんも
もしかしたらお腹空いているのに
我慢しているんだったら済みません……。
いや、大丈夫だ。
お腹空いたんだったら、きちんと
食べないとな。よし、シルドラ。
昨日寝る前に言っただろ、
やって貰いたい事がーー
その時、遠くの方から何者かに襲われて
悲鳴を上げている男性の声を耳にする。
だ、誰か助けて―――!!!
いっ、イノボーが現れたあああああ!!!!
な、何でこんな場所に居るんだよおおお!!
鼻息を立てて、ドッドッ と
轟音を唸らせながら、今にも男性が
その場所から真下に落ちそうな勢いで
向かって迫って来ている。
そう、彼がいる場所は
ここから先にある崖下に降りる事が
出来る岩場付近。
真下にあるのはもちろん海――。
絶体絶命のピンチを迎えていた……。
突然の悲鳴を聞いたシルドラは
慌てふためいてしまう。
よっしゃあ! イノボー発見した!!!!
シルドラ、討伐成功したら飯振舞ってやる。
一狩り行こうぜ!!!
えっ……!!
ってかイノボーって何ですか!?
獰猛なイメージしかないんですけど!!!
それを言うなら、イノシシです!!
襲われている人がいるんだったら、
助けてあげないと。ミルフさん……
行きましょう!!
よし行くぞ!!
あたい結構足速いからきちんと
付いて来てくれ!!!
イノボーとは肉食モンスターの一種で、気性が常に荒い。
群を成して行動している事が多く、大陸内に
ある大好物な餌を探しながら、移動している。
過去にミルフはイノボーを討伐し
彼女の食糧として丸焼きにして食べた経験がある。
その時の美味しさに惹かれ、シルドラにも食べて
貰いたいと思い、やる気を見せている……。
****
その頃、崖付近でイノボーに襲われている
男性は冷や汗を掻きながら、誰かの助けを
求めている。現在、ミルフとシルドラが
向かっているけれど、もう時間の問題が……
だっ、もうおしまいだああああ!!!
助けを求めてもダメだったかあ……。
あっ、やっと人が来てくれた……って
君女性だけど、大丈夫なのか?
でもそんな雄著な事言ってられない!
お願いだ。助けてくれ!!!
おう。イノボー……かかってこい!
あたいミルフが相手だ!!!
更に気性を荒げ、興奮を治める事が出来ない
イノボーは男性への攻撃を止め、
ミルフの元へと突進して来る。
しかし、彼女は笑いながら
背後を取り、両腕を回して腰をクラッチし
そのままイノボーを後方へ反り投げし、
ブリッジをし始める……。
はっ、まさかこの技は……
あの有名なグランザ・エルフォードが
得意とするジャーマン……
ただ、ちょっと待てよ……。
女性がこの技やると、あらぬ場所が……
そう、現在ミルフはブリッジ状態――。
トレーニングで鍛え抜かれた腹筋が見えている。
男性の絶叫を聞き付け、急ピッチで
シルドラを差し置いて救出した模様。
そんな中、ゆっくりと草むらの中を
走ってきた彼の目の前には……
なっ、なんちゅう態勢でいるんですか!!
パンツ丸見えですよっ!!!
そ、それにパンダさん?
やっと追い付いたな!!!
もう遅いから討伐完了しちゃったぜ!!!
そしてシルドラ、しっかりと拝むんだ。
あたいのパンツは、桜色だ!!!!
メモナンバー1
ミルフのパンツは
パンダの絵が描かれた桜色をしている。
※もし女性の下着が見える状況でも
決して覗いてはいけません。シルドラは特別です。
第8話へと続く――。
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