第5話

文字数 2,752文字


源三郎江戸日記(弟三部)5

留吉ご家老様にスッポンの池を見せてやれと言うと、ヘイ、ご家老こちにらと近くの丘に案内したので登ると、あの池の真ん中の岸辺ですと遠眼鏡を渡すので見ると、大勢のスッポンが、
甲羅干しをしています、随分いるなと言うと、ハイ今200匹ほどいます、日に5匹き程料理屋に出しています、なくなったら出荷しています、子供も生まれまして、それを入れると300匹、
はいますと言うので、

お玉とお律に遠眼鏡を渡すと、凄い数ですねと驚いたのです、お玉が育てるのですかと言うので、高鍋では牧場で馬を育てているじあろう、何でも同じと思うたのじあよと言うと、なぜ、
こんな離れた場所から見るのですかとお律が聞くので、留吉が臆病なので人の影をみると皆池に潜りますのですよ、その内欝になり供食いを始めるので、餌を置くとき以外は近づかない、
のですと言うと、

何にでも育てる工夫があるのですかと頷いたのです、それではもう一度水門の方に引き返すぞと言うと、野原に出て早駆けじあと言って馬にムチを入れると、二人も簡単に付いてきます、
お玉が横に並んだので中々の腕じあなと言うと、抜き去ったのです、お律が凄い腕ですねと言うので、さすが高鍋のじやじや馬だけあるなと言うと、上手く乗りこなせるのですかとお律、
が笑ったのです、

何件か名主の家に立ち寄り水門に行くと、郡頭の須崎が花見時期には毎日水門の開け閉めをしてみなに見せています、もう直ぐ刻限ですと言うので、良い時に来たな、見物するかと言う、
と、須崎が赤矢を放てと命令すると青空に向かい、赤い色の尾を引いた矢が飛んだのです、みんなが、お~と歓声を上げると、暫くして、船の退避は終わったみたいですと言って、赤の、
旗を振ると、

小屋の前にいた藩士が、まわせ~と言うと、ギギギ~と音がして水門が両脇から移動して暫くすると、ガシヤンと音がして閉ったのです、みんなから拍手が上がると、郡頭がさかんに手、
を振って答えたのです、お玉とお律が凄い仕掛けですねと目を見張ったのです、それでは開けるぞと言うと赤い旗を振ると、水門がギギギと音がして溜まった水が勢いよく流れ出して、
すぐに流れが穏やかになったのです、

又もや拍手をしたのでこれにも手を振って答えたのです、暫くすると安全の緑の矢を放てと言うと、青空に緑の尾を引いた矢が上がり、船が水門に移動し始めたのです、見事じあなあ、
と言うと、ハイ、みんな楽しみにしております、桜が散ると又月に一回に戻しますと言ったのです、帰るぞと言うと馬に乗り陣屋向かったのです、お玉があれも旦那様の工夫ですねと、
言うので、

わしが言うた事を富蔵が工夫してくれたのじあよと言うと、思いつくのも大した物です、そんな男の妻女になれて玉は自慢ですと笑ったのです、陣屋に着き役宅に入ると、おしのがお、
戻りなされませと言うので、二人を紹介するとしのと申します、陣屋の女中頭をやっていますと言うので、宜しく頼むと言うと、お方様とお律様に台所を案内いたしますと言うので、
二人は部屋を出て行ったのです、

山本が入って来たので連れて来た者と、親しい間がらの者もいよう、今日は酒席を設けて、旧交を温めよと言うハイ、承知いたしました、印西の者共もこんどは、供に加えてくだされ、
というので、そうじあな、考えておこうと言って、印西の繁栄振りこの目で確かめたぞ、殿には山本が良くやっておると、伝えておくぞと言うと、有難う御座いますと言ったのです、

女将達がお土産を、沢山持って帰って来たので、そんなに沢山持って成田さんに行くのかと聞くと、七衛門殿に預けて江戸に、運んでもらいますと言ったのです、お玉が帰ってくると、
おしのがようおいでなされた、皆様方の泊まられる部屋に案内します、湯など入って旅の垢を落としなされ、上がる頃には夕餉の支度すが出来ていますよと部屋に案内したのです、

お律が凄い広い台所でしたよと言うので、お玉は料理は出来ないであろうと言うと、お律殿に習うのですと言うので、そうか、お律は料理上手だからのうと言うと、今日は二人で夕餉、
の手伝いをやりましょうと、部屋を出て行ったのです、七衛門が船は銚子に待たせてあります、銚子の番頭と相馬の番頭には、文にて知らせてありますと言うので、後は頼むと言った、
のです、

わしは銭湯に入ってくるぞと言うと、陣屋を出て銭湯に行き汗を流したのです、上がり酒を飲んで一息いれると、飛猿が入って来たので陣屋には泊まらぬのかと聞くと、ハイ堅苦しい、
のは苦手でして、二人で女郎屋でもしけこみますと言うので、船の時間に遅れるなよと言うと、承知と言うと銭湯を出て行ったのです、陣屋にかえると夕餉の支度が出来たというので、
大広間に行くと、

女将や藩士達が集まっているので、みなのもの、ご苦労である、こんなに繁栄しているとは驚いたぞ、みなの努力のたまものじあなと言って杯を傾けて、今日は無礼講じあ、又女将達、
はお客なので、酌をしに回る事はないぞと言ったのです、お玉とお律を紹介すると、二人が宜しゅう頼みますと言うと、みながハハッと頭を下げるので、今日は無礼講じあそうだ、気、
は使わぬとも良いぞと笑ったのです、

お玉がこんなに沢山の者達の宴席に出るのは初めてに御座いますと言うと、お律が我が家では皆で食事は頂きますと言うので、楽しい食事じあのおと言ったのです、料理を見ると毛蟹、
ホッケの塩焼き、塩辛、子持ちコンブ、鮭焼と蝦夷の物が沢山あります、おしのが玄海屋が持って来てくれたのです、いずれも塩は少ないので、美味しいですよと言うので箸をつけて、
ホッケを食べると、

ほう美味しいのうと言うと、その毛蟹が一番美味しいのですよと言ので、お律が兄上は、めんどくさがりやなので箸はつけないのですと笑うと、お玉がわたしが取って差し上げます、
と、かき棒で器用に取るので、ほう、手先は器用なんだと感心すると、ハイと差し出すので受け取り、美味い事はわかるがめんどくさいからのうと言って、食べると、これは美味いと、
言ったのです、

女将達もカニをもくもくと食べています、このカニの欠点は、話が止まる事なんじあよと言うと、お勝つが美味いのでしかたないですと言うと、七衛門がまだ沢山あるそうです、カニ、
は逃げないのでゆっくり食べても大丈夫だよと言ったのです、藩士達もうれしそうに歓談して料理を食べていたのです、お玉がこの旅で肥えたらどうしましょうと言うので、よいでは、
ないかと言うと、旦那様は肥えても嫌いになりませぬかと言うので、なるものかと言うと、それなら、カニをじゃんじゃん食べますと喜んだのです、

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