第64話

文字数 2,614文字


源三郎江戸日記(弟三部)64

すぐそこです、案内しますと言うので勘定をすませて、三平の後をついて行くと料理屋浪速と看板がでており大きな料理屋です、ノレンを潜ると二階に案内するので部屋に座ると、女将、
がよくおいでました、女将のすず御座います、三平さんには主人が江戸で、大変お世話になったそうに、御座いますと言ったのです、膳が運ばれてきてまずは一献と酌をするので杯を重、
ねて、

随分大きな料理屋だがと言うと、ハイ、主人が3代目で、この辺では老舗に御座いますと言うと、部屋に主人の平吉に御座います、わざわざお立ちより下さりありがとう御座います、とり、
あえず、ふくさしをお持ちしました、そこのたまり醤油に酢を加えたものにつけてお召し上がりくださいというと、お玉が随分薄い刺し身じあが、一枚づづ食べるのかと聞くと、いいえ、
好きなだけ掴んでお食べくださいというと、

綺麗に盛り付けてあるので勿体無いなと言いながら、掴んでつゆをつけて食べて、美味しいと喜んだのです、今三平師匠がふくのから揚げ、鉄チリと言うふく鍋を作つていますと言うので、
三平はここで奉公するつもりなのかと聞くと、ハイ、色々と料理の指南をしてもらいます、中々師匠の腕には及びませんと言うので、そんなに腕が立つのかと聞くと、ハイ、あの包丁裁き、
は私にはとても出来ませんと笑ったのです、

あっしはこれで失礼します、すずがお相手します、他に何か食べたい物あれば遠慮なく、言うてくださいと言うと、部屋を出て行ったのです、中々の色男ではないかと言うと、腕がもう少、
したてば良いのですが、料理屋の息子なのに、料理はあまり好きではないらしく、暇があれば絵を書いていますというので、ほう、絵が好きなのかと言うと、あの絵も主人が書いたもの、
ですと言うので見ると、

掛け塾にアジサイの花を町娘が眺めている絵が描いてあります、中々見事な絵ではないか、あの女子は女将じあなと言うと、ハイ、恥ずかしいからあんな所に置かないでと言うているので、
すがと言うので、いや、いや床の間は水墨画が一般的じあが、色つきの絵も映えるものじあな、それにあの筆使いの細やかさは中々のものじあ、いっぱしの絵師より腕は上じあなと言うと、
主人が大喜びしますよと言ったのです、

三平が入って来て、から揚げにテツチリですと膳に載せるので、これは美味そうじあなと箸を2人でつけて、美味い、美味いと食べると、三平が喜んでいます、お玉が骨があるので手で取、
るのかと思うたら、口の中で直ぐにバラバラになるのですねと言うので、ハイ、ふくにも色々ありまして、これはトラふくと言う種類で、骨は簡単に取れるのです、他にシマふくと言うの、
があるのですが、

これは中々骨から身がはずれませんので、トラふくは高くてシマふくは安いのですと言ったのです、から揚げも中々美味いのと言うと、これはご家老が美濃で言われたのでやってみました、
ら、中々いけるので、工夫しましたと言ったのです、鍋に残った汁は、勿体ないのでここに上方のうどんを最後にいれたらどうだと言うと、そうですね、良い味になっていやすから美味い、
ですね、

後で入れてみましょうと言ったのです、三平も飲めと酌をすると飲み干して返杯したのです、ところで女将大阪で阿片が出回っているときいたがと言うと、ハイ、先月堀川で遊び人が浮い、
ていたそうで、流れの博打打と言う事ですが、どこでやっているかはわかりません、普通の町衆では高価で買えないはずですがと言うので、ここには薩摩の者も出入りするのかと聞くと、

ハイ、大阪蔵屋敷のお留守役小松様が商人と時々こられますと言うので、それは、大隅屋かと聞くと、玄海屋、大隅屋、難波屋、堺屋、と色々の方が接待されるそうですというので、廻船、
問屋かと聞くと、いいえ、廻船問屋は玄海屋だけで、後は色々な物産を扱っている商人と両替商ですと言って、薩摩様が阿片をあっかっているのですかと言うので、わからぬが手に入れ易、
い場所に領国があるからのうと言うと、

小松様は気さくで良い方ですがと言うので、供は何人でくるのじあと言うと、いつもお1人ですが、一回市来様と言う薩摩藩を退散なされたご浪人をお連れになった事がありますが、一回、
きりで後は見かけませんと言ったのです、そうですね、村上様は諸国巡察視のお役目とききましたそれで調べていなさるのですね、何か気がついたら三平さんにお知らせしますと言ったの、
です、

大阪の町に阿片が蔓延すると大変じあからなあと言って、そんなに怖いものなのですかと聞くので、元は痛み止めの薬じあが、摂取を続けると副作用で妄想を見るようになり、体を蝕み、
死にいたる、常習性が強いので、欲しくなる危ないしろものじあ、最初はぼ~として快感になるので、そんなに恐ろしい薬とは知らずに、常習性になりやめられなくなるわけじあよと言、
うと、

そうですか、知らない内に中毒になるのでかと言うので、手口は最初はタダで吸引させて常習性が出てきたら金を要求するのじあ、それも、段々高くするので、その薬欲しさに何でも言、
う事を聞くようになる、人殺しもやらせる事が出来るのじあよ、薩摩藩がやっているのではなく、薩摩藩の船の荷物は、船手番所では調べないので、それを利用している、のかも知れぬ、
いずれにしろ商人がからまぬと出来ぬ事じあと言ったのです、

部屋に七衛門と番頭が入って来たので、まあ、七衛門の旦那いつかみかたへと女将が言うと、10日前からじあと言うと、村上様をご存知でと聞くと、わしのお頭様なのじあよと言ったの、
です、飛猿殿から聞きましたが、阿片に薩摩が絡んでいるのではとの事で、預かっている荷を調べましたが砂糖、カッオ節、薩摩焼でした、不審な物はありません、これらは大隅屋に渡、
す事になっていますと言うので、

薩摩の御用船は何隻あるのじあと聞くと、たしか2隻のはずですが、琉球、薩摩、上方、江戸を回っています、大島つむぎ等の琉球の物を運んでいるそうです、帰り船は主に米を国元に、
運んでいるそうですと言ったのです、まあ、飛猿と才蔵に任せておけば何かがつかめるじあろう、七衛門と番頭も飲めというと、女将が膳を用意したので、杯を傾けたのです、番頭が、
薩摩様は20万両からの溜まった借財があるそうで、

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