第35話

文字数 2,865文字


源三郎江戸日記(弟三部)35

山形が風呂場の経緯を言うと、まったく、子供の喧嘩ではありませぬかと言うので、これで仕掛けが出来たじあろう、まあ、怒るなと酌をすると飲み干し、武士の面体を殴り隈とこぶを、
つけるとは気の毒ですよと言うので、桶しかなかったので仕方なかったのじあよと笑ったのです、芸者が入って来ておよび頂き、有難う御座りますと言って皆に酌をするので飲み干すと、

それでは一指しと言うと、三味線に合わせて、踊り始めたのです、中々な優雅な舞です、踊り終わったので、拍手をして酌をすると飲み干して、返杯したのです、春菊、駒菊、ひな菊、
夕霧、あやめですと言うので、中々のまいじあが、何か白拍子みたいな舞じあなと言うと、ここには、諏訪の舞と言うものがあって、その踊りを三味線に合わせて踊ったのですと言う、
ので、

おう、川中島で戦の時戦意をこぶするのに信玄公が舞わせた踊りじあなと言うと、ハイ、それで何人も川中島では巫女が死んだそうですと言うので、あわれな事よのうと言うと、それも、
昔の事です、ここの祭事ではよく踊るのですよ、もっとも、笛や太鼓ですがと言ったのです、となたかが怪我をされたようで、先程医師とすれ違いましたがと言うので、そうか医師を呼、
んだかと言うと、

ご存知でと聞くので、先程武家ふたりが風呂場で転んだのじあよ、温泉はすべり易いからのうと言うと、そうですかと言って、賑やかなのをじゃん、じゃんやってくれと言うと、ハイと、
言って、三味線に合わせて踊ったのです、こちらはと聞くのでわしの妻女だよと言うと、まあ、奥様ですか、若侍姿がよく似合いますねと言うので、お玉が旅をするのには身軽で良いの、
じあよと言ったのです、

中々来ないがと言うと、旦那方も何か歌ってくださいなと言うので、歌はダメじあがと言うと、剣舞でもと言うので、それでは敦盛でもやるかと言うと、立ち上がり、芸者のセンスを、
借りると、琵琶に見立てて器用にあやめが三味を合わせると、人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか、これを菩提の種と思ひ、
定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ~と踊ると、

皆が拍手をして、お玉がすご~いと言って、父上も信長公をまねて時々舞いなさるが、こんなには、上手くありませぬ、本当に何でも出来るのですねと言うと、あら、奥方様は初めて、
ですかと言うので、ええ、初めて見ましたと言って酌をしたのです、山形に何かやれと言うと、何も出来ませぬがと言うと、ほかの者も鉄砲と剣しか修練しておりませぬと言うので、

それでは皆が出来るのを教えてやるが、これをやると腹が痛くなり、薬でも治らぬぞ、それでも良いならやるがと言うと、お玉が是非おみせ下されというので、わしがこれをやった、
事は絶対人には言うなよと言うと、みんなが絶対言いませんと言うので、用意すると言うと女将を呼び手鏡にタオル、ザル、ようじを持って来てくれと言うと、何するのですかと、
聞くので余興じあよと言うと、

もって来たので絶対に笑うなよと言って、筆と墨を出して、これで目を塗りつぶすのじあと言うと、ハイと言って塗りつぶしたので、今度は鼻の頭じあと言うと、おもわず笑おうとす、
るので、口を押さえて、楊枝を折の鼻の穴に差込広げると、腹に手をあ立てて笑おうとするので、口を塞ぐと、目と鼻から涙を流したのです、おちつかせて見なければ良いのじあと、
言うと、

ハイと後ろを向いたので、それでは適当に三味線で伴奏を弾くよう言って、よし、と言ったらフスマを開けてくれと言うと、となりの部屋に行きあやめに耳打ちして、思い出して、
自分で口を塞いだのです、お玉がなぜ泣いているのと聞くと、口を塞いで手を横に振り、落ち着つくと、よしと言う声が聞こえたので、女将がフスマを開けると、目と鼻を黒くぬり、

鼻は楊枝で広げて、着物の尻すそを上げて、ザルをもちどじょうすくいを始めたので、その表情をみてみなが腹を抱えて笑いだしたのです、あやめもの三味線の伴奏もめちゃ、めちゃ、
になり、お玉がはらをさすり、もう、おやめ下され、腹がよじれて痛くなって来ましたと涙を流すので、そうか、わしは少しもおかしくないがと言うと、鼻の楊枝を取りこれが痛いの、
じあよと言って座ると、

前にいるあやめたちがまだ大笑いしているので、お玉が女将に桶に湯を汲んでくだされと言うので出ていつて、すぐもどってきて、大変です大勢がこの部屋に向かつているそうですと、
言うので、よし、おどかしてやろうと言うと、フスマの前に立っていると、ごめんと言ってフスマを開けて武士が入ろうとして、源三郎を見て、アハハハ、なんじあお前は太鼓持ちか、
と聞くので、

ザルを取り踊り始めると、後ろにいた武士も大笑いをしたのです、その男がもう良いわと言って、先程湯に入っておられたのはと言って、後ろの者を前に出すと、あの男で御座います、
と山形を指差すので、もう1人はと聞くと、いませんと言うので、わしじあよと言うと、わたしは上松藩道中奉行田中新兵衛にござるが、その顔ではちと話にくいと言うので、女将湯、
を持って来てくれと言うと、

湯を持ってきたので顔の墨を落として、手ぬぐいで拭いて、まあ、お座りなされと言うと、座り、殿を侮辱したと言う事で御座るが、藩士としては許しがたしと言うので、子供を手打、
にしょうとした者を止めた忠臣を国元に帰し謹慎させるとは何と言う事をなさるのじあ、明石松平藩が尾張領内で子供を手打ちにしたので、領内通行差し止めになっている事はご存知、
であろう、

ここで事を起こせば高島藩は上松藩の領内通行を差し止めるであろう、そうなれば、参勤交代は尾張に出て、東海道を行く事になり、莫大な費用がかかるであろう、それを救ったのに、
罰にを与えるとは、馬鹿殿としか言いようがないと言うと、理屈はわかるが殿を足げに言われてそのままにしては置けぬと言うので、それがしと戦でもしなさるかと聞くと、お望みな、
ら相手仕ると言うので、

受けて立つても良いが、わしと戦すれば上松藩は改易になるが宜しいかと言うと、なぜで御座ると言うので、わしは諸国巡察視の村上源三郎じあと朱印状を見せると、これは知らぬ事、
とはゆえ失礼つかまつりましたと言うので、これから上松に巡察に行くが覚悟めされい、落ち度があれば間違いなく改易じあぞと言うと、謹慎は解き家禄を元に戻しますと言うので、
藩主綱道様をここに連れてくれば、

寛大な処置をするがと言うと、無礼を働いたこの者達はと聞くので、不問に付しなされと言うと、寛大な処置かたじけのう御座いますと言ったのです、それでは今呼んでまいりますと、
言うと、部屋を出て行ったのです、田中が本陣に戻りご家老とんでもない事態が起こりましたと報告すると、何諸国巡察視の村上源三郎じあと、それはまずいな、それで何と言うてい、
るのじあと聞くので、

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