第49話

文字数 2,721文字


源三郎江戸日記(弟三部)49

人は殺さない、女も犯さない、狙うのは大店ばかり、引き込みは使わず、錠前はを開けてはいるが鍵が盗まれた形跡はない、顔は誰も知らない、助働きの者も頭の顔は見た事がない、
なる程これでは捕まえようがないな、ここにある大店は、両替商、飛脚問屋、草津屋、だが、引き込みを使わないとすると、穴をほる、外からかんぬきを外してはいる、鍵は才蔵、
みたいな錠前師がいるかだなと言うと、

まるで忍びみたいですねと言うので、そうか、忍びなら侵入して、かんぬきを外して引き入れる事はできるなと言ったのです、それでは皆も遊んで来いと言うと、ハイと返事して旅籠、
を出て行ったのです、草津屋に行って役人じあがと、御用の筋だと言うと、覗き窓から番頭が見て、これは村上様がお待ちしていましたと戸を開けたので、中に入りわしを知っている、
のかと聞くと、

ええ、深川の料理屋で何回か見かけた事があります、もっとも村上様は私を知らないと思います、主人について行き別室で待っていましたのでと言うので、そうか、今金蔵にはいくら、
あるのだと聞くと、ハイ6千両はありますと言うので、前回は8千両も盗まれて大変だったなと言うと、ハイ、どうやったのか今でもわからないそうです、私は江戸にいましたので良く、
知らないのですがと言って、

又誰かがここを狙っているのですか、外からは絶対入れないと、思いますがと言うので、念の為調べるぞ金蔵を開けてくれと言うと、ハイ、鍵はいつもサイフに入れていますと言うと、
懐から鍵を取り出して、蔵に行き開けたので、床板を外して提灯で調べると、何処も土の色は変わっていません、最近掘り起こした事はないようです、番頭が周りには鉄格子が入って、
いますと言うので、

そうじあな、これなら入るには鍵をあけるしかない訳かと言って、もういいぞと言って、鍵を閉めさせて、かんぬきを調べるぞと言って、この隙間から金鋸を差込切れないのかと言う、
かんぬきの両脇には鉄がはめ込んであります、切るには相当時間がかかり、音がしますので音で気がつきますよと言ったのです、へいを乗り越えるのはと聞くと、大きな梯子が必要、
です、

そんなのを持ってあるけば誰かに見つかりますと言うので、わかった念のためじあよと言うと、主人から中山道を登られるので、きっと立ち寄られるはずだと言う事で、2千両を渡して、
くれと為替手形を預かっていますと渡すので、何の為じあと言うと、街道の掃除に使こうてくだされとの事ですと言うので、そうか、それなら喜んで貰ろうて置くぞ、相模屋には礼を、
言うてくれと受取ったのです、

それでは邪魔したな、くれぐれも用心しろと言うと店を出て、居酒屋に行き酒と肴を注文して、杯を重ねたのです、何かおかしい所ありましたむと聞くので、いいや、別に異状ないが、
なんとなく厭な予感がすると、この辺に盗人がいる気がするんじあよと笑うと、才蔵と言うと才蔵が傍に寄ってきて、草津屋ですねと言うので、あそこに忍び込めるかと言うと、ハイ、
と言うので、

そうか、忍びなら草津屋の金蔵の鍵も開けられるのかと聞くと、ハイと言うので、忍びの経験があれば可能かと聞くと、そうですが、そんな者がこの草津に紛れ込んでいるのですかと、
言うので、わからぬがと言うと、他に入れる方法があるか調べてみますと言うと、店を出て行ったのです、才蔵が暫くして帰って来て、見つけましたというので、どうやって外から入、
るのじあと言うと、

外からかんぬきが外せるように細工してあります、恐らく腕のいい大工が細工したのだと思いますと言うので、どうやるのだと言うと、かんぬきの上に小さな四角い窓がはめ込んであり、
ます、見ただけではわかりません、裏からみればわかりますと言うので、もう一度行ってみる事にしたのです、番頭にもう一度開けるように言うと、開けたので中に入り戸を閉めると、
才蔵が、

これを見てください、普通こんな物はありませんと言うって、木の棒を引き抜くと手前に外れて、四角い穴が開いたのです、この棒はこれ以上こちらには来ないようになっています、
これは、落ちて音がするのを防ぐ為です、外からここを押すとこちらに移動するのです、そして、五寸釘を直角に曲げたものをこの穴に入れてかんぬきの上に差し横にずらします、
みててくださいと、

外に出て四角い穴から差込横に捻るとかんぬきが少し右に動きます、三回ほど動かすとかんぬきが抜けたのです、戸を開けると内側に簡単に開きます、なかに仲間が入ったら戸を閉めて、
この棒を押せば元に戻り、かんぬきをかければ外からあきません、外側は戸板と同じ色になっており、ピタリとはまりますので、指でなぞれば切れ目がある事がわかりますが、見た目、
ではわかりません、

この戸を閉めるときは薄暗いか夜中なので誰も気はつかない訳ですと言うので、なる程腕の良い大工の仕業だなと言うと、そうだと思います、忍びではありませんと言うので、番頭が、
驚いています、いつごろ大工が入ったのだと聞くと、確か三年前にこの戸が古くなったので付け替えて、家の中の階段とか廊下を修理したはずです、そのとき細工したんですかと言う、
ので、

多分そうだろうというと、しかし、ここで何十年もやっている出入りの大工ですよと言うので、棟梁が直接やるわけではないじあろうと言うと、ハイ、いつも3人位でやりますが、顔は、
覚えていませんと言うので、臨時雇いした大工だろうと言うと、とりあえずここに釘を打てば押してもあきませんと言うので、釘をもってこらせ打ちつけたのです、これで空かぬぞと、
言って、

この事は誰にも言うな、後はいつ来るかじあな、心配するなこいつつは人は殺さん盗人だ、おまえ達が怪我する事はない、恐らくその大工は流れ歩いて、この細工をして、盗人にに売り、
つけるのじあろう、こんな腕をもった奴は急ぎ働きで人を殺す奴には売らないはずだ、開けられないようにしたので諦めて退散するじあろう、このかんぬきの上をみて、今傷があるが、
これが増えていれば来た証拠じあ、

毎日見てあれば代官書に連絡しろ、次の日の朝には逃げるじあろう、捕まえられるかもしれんと言ったのです、しかし、鍵は番頭が肌身はなさず持っているのじあろう、蔵の鍵は変えた、
方が良いと言うと、ハイ、今から代えますと言うと、蔵の鍵を開けて違う南京鍵を取りだして交換したのです、これで、大丈夫じあなと言うと、ありがとう御座いますと言うので、良く、
寝ても構わんぞと言うと、再び店を出て居酒屋に戻ったのです、

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