先の無い、深い闇の中
文字数 1,192文字
妹ハンナの仇、その最後の一人を
追い詰めた復讐者だったが、銃での反撃を受け、
今この廃倉庫では銃撃戦が繰り広げられていた。
四肢を銃で撃たれ、大量に血を流す男は、
片膝をついて崩れ落ちる。
手にしていた筈の銃は、撃たれた際の衝撃で、
既に落としてしまっている。
復讐者に向けられる銃口。
パァン、パァン
放たれた銃弾。
だが、それは復讐者に当たることはなく、
不自然な動きをして逸れて行った。
それはまるで、
何か透明な壁にでも当たって跳ね返されたかのような、
この世界の物理法則を無視した軌道。
復讐者はこの隙に、最後の力を振り絞って、
落ちていた銃に飛びつき、これを拾い上げる。
パァン
廃倉庫の床に血まみれになって倒れている二人の男。
一人は心臓を撃ち抜かれて、
すでに事切れている。
目的を果たした復讐者ではあったが、
立ち上がるどころか、もはや動くことすら出来ない。
照明が消えた廃倉庫、
その暗闇の中から姿を現した
復讐を遂げた男の前に立つ。
男はそのまま動かなくなって、
やがて息を引き取る。
息を引き取った復讐者の魂を見送った後、
照明も消えた廃倉庫、
そこには先の見えない暗闇が
広がっているだけだった……。