僕をこのお店で働かせてください

文字数 1,257文字

みんな、お疲れ〜
…………。

夜の繁華街。

某所にあるオネエのお店。


世間からはよくオカマバーなどとも呼ばれている店だ。


お店のママ(男)が一人の少年を連れて入って来た。

やだー、どうしたのその子?
ママの隠し子ぉ?

開店前、店内にいた十人近くのオネエが集まって来る。


この手のお店にしては人数も多いし、比較的に大きなお店ではないかと思われる。

お店の前につっ立てるから


とりあえず中に入んなさいよ、って言って連れて来たのよ

…………。

あらやだ、ゾンビじゃない


あたしはじめて本物見たぁ

えー、そうなのぉ?
やだー、ウケるー
…………。


(い、言わなきゃ……)

ぼ、僕を、このお店で

は、働かせてくださいっ!

ちょっと、いきなり

どういうことなのよ?


詳しく話を聞かせなさいよ

ぼ、僕、

ゾンビでこんな見た目だから


人間に白い目で見られて、

陰でコソコソ言われたり、


そういうのがすごく嫌で、

自分に自信ないし、自分が嫌いだし……

で、でも、

テレビでオネエの人達見たら


この人達、人と違うのに

なんでこんなに堂々としてるんだろうって


それで自分もこういう風になりたいって思って……

ちょっとあんた、

それ失礼じゃない?


あたし達は見た目がゾンビと変わらないってこと?

やだー、ウケるー

ご、ごめんなさい、

そういうことじゃないんです……

ひ、人の目を気にしないというか


誰から何を言われても気にしないというか


そういう人と違う自分に自信を持って生きているところを尊敬してるんですっ……


あんたね、

他人様がどう思うと

どういう目で見ようと


あんたはあんたらしく、

堂々と胸張ってればいいのよ、

別に何か悪いことしてんじゃないんだから

よく考えてみなさいよ、

人間だって大概気持ち悪いの多いのよ?

ベトベトに脂ぎったデブだとか


ヨボヨボでしわくちゃの爺とか婆とか


ブサイクにも程があるって男とか女とか


そういうのいっぱいいるでしょ?

しわくちゃの爺とか婆とか、

よーく見るとただの妖怪じゃないの、アレ

みんな、

見慣れちゃってるだけなのよ


みんなそういうもんだと思ってるから、何とも思わなくなってるだけで

あたし達オカマだってそうよ


毎日のように誰かがテレビとか出てるから


世間様もすっかり慣れちゃってるじゃないの

あんた達ゾンビも


これからそうやって世間に浸透して行くんだから


そんなの気にしなくたっていいのよ

…………。
それにねえ……
ママ、語り出したら止まらないから


しばらく続きそうね

やだー、ウケるー

それでも、

どうしても諦めたくないんです……


ど、どうか、

僕をこのお店で

は、働かせてくださいっ!


お願いしますっ!

ママ、もうこれだけ言ってるんだから


うちの店で雇ってあげればいいじゃない


あんたね


そうは言っても


未成年を夜の店で働かせる訳には

いかないじゃないのよ

あ、あのぉ……

ぼ、僕、こう見えて


人間の年齢だと四十歳超えてるんです……

えー!ウッソー!
ちょー、ショックー!
やだー、ウケるー
ゾンビは不老不死で、

年取らないんです……

やだー羨ましいー
そんなのってアリ!?
あたしもゾンビになりたいー!
やだー、ウケるー

ちょっとあんた、

ゾンビってどうやったらなれるのよ?

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