神罰のタイミング

文字数 1,787文字

そこをどかねえのなら、

力づくで通してもらうぜっ!

やれやれ、なんだい、

結局力勝負になるのかい

何も無い筈の空間に

紋様が浮かび上がり

弓矢を取り出す天使達。


前方の愛倫(アイリン)と後方の死神に向け

次々に矢を連射する。

仕方ないねぇ

愛倫(アイリン)もまた

自らの魂で構成した剣『斬魂刀(ざんこんとう)』で

高速で飛んで来る矢を斬り落す。

ふんっ!

死神に向けられた矢は

大鎌によって叩き落とされて行く。


天使二人がそれぞれ、

愛倫(アイリン)と死神に矢を射続ける間に、


残りの天使が垂直離陸で

空高くへと飛び上がり、

逃げて行った人間の男を追う。

逃さねえからなっ

狙われている男は、慎之介が保護して、

待機していた警察車輌で

この場から逃亡していた。

しかし、天使の飛行スピードであれば

走行中の車輌に追いつかれてしまう可能性が高い。

チッ

愛倫(アイリン)は自らもまた

背に黒い蝙蝠の羽根を出現させ、

空高くへと舞い上がった。

行かせるかよっ

さらにその後を

もう一人の天使が空へと上り追いかける。

お前の相手は俺だよっ
ふんっ

死神に対する天使は

柄の両端に刃を持つ双頭の剣を手にすると、


これを高速回転させながら

死神に斬り掛かり、

大鎌で死神がこれを受け止めた。


ターゲットを乗せた警察車輌を

空から追跡する天使。

あれか……
やらせないよ

その後を追う愛倫(アイリン)

自らの魂で構成した銃

魂銃(レイガン)』を両手にし、二丁拳銃を乱射、


天使を牽制、威嚇する。

愛倫(アイリン)の魂の一部で

つくられている『魂銃』は


この世界の人間や

物質には全く影響を及ばすことなく、


精神文明至上主義的要素が強い

異世界の住人にのみ効力を発揮する。

ツゥッ

羽根の付け根に被弾した天使は、

反転して愛倫(アイリン)に向け矢を連射。

援護するぜっ

後方の天使もまた矢を放って来たが、

愛倫アイリンはその両手の銃で

これを次々と撃ち落として行く。

愛倫(アイリン)の魂により

具現化された『魂銃』では

弾丸が尽きるということはない。


あるとすれば愛倫(アイリン)

精神エネルギーがゼロになった時か。

両手を左右に広げ、

飛んで来る無数の矢を撃ち落とし切ると、


さらに前方と後方、二人の天使に向け

銃を乱射し続ける愛倫(アイリン)

天使達は防御シールドを展開して

自らに向かって正確に飛んで来る銃撃を防ぐ。

どういうことだよっ?

たかが、サキュバスのくせに

銃の腕前はガンナー並みに

超一流じゃねぇかよっ

なぁに、

千年も生きてると、

退屈で仕方ないからね


大概のことは一通り

やってみたことがあるのさ

薄ら笑いを浮かべる愛倫(アイリン)

それにね、あたしゃ

この世界の西部劇も大好きなのさ

ちっ、クソビッチが

調子に乗りやがってっ!

最大出力の防御シールドを前面に展開して、

天使の一人が正面から愛倫(アイリン)に突撃。

もう一人の天使はその隙に

この場を急速離脱し

ターゲットを追跡しようと試みる。

待ちなっ

そちらの方を追おうとした愛倫(アイリン)だったが、


突撃して来た天使の

崩御シールドに跳ね飛ばされ、

高空から地上へと墜落して行く。


クッソ

追って来た天使が射る光の矢、

これを避けようとし蛇行する警察車輌、


しかしハンドルを切り過ぎた為、

パトカーは何回転もスピンして

最後に横転した。

車から出てっ!
うわぁぁっ
あわわわっ

中に乗っていた慎之介と追われる男、

大泉警部と警官が


外へと飛び出すとほぼ同時に

光の矢が車に突き刺さり、


車輌が爆発を起こして

燃え盛る炎が周囲へと広がって行く。

やれやれ

紅蓮の炎の前に

空から舞い降りて来る愛倫(アイリン)

その両手には『魂銃』が握られている。

ふんっ
まだまだ

それに対峙する二人の天使、

ここに先程まで交戦していた

三人目の天使と死神が合流を果たす。

ふふふ
……

あたしもこんな人間の屑を

必死になって守るのは

本意じゃあないんだけどね

慎さんがそれでも助けると言うのなら、

本気でやらせてもらうよ

そう言って天使達に

睨みを利かす愛倫(アイリン)だったが、

そこで天使達に起こっている異変に気づく。

でもねぇ、あんた達


こんなことしている場合じゃ、

ないんじゃあないのかい?

いや、そろそろ頃合だろうと

思ってはいたんだけどね……

あんた達、

墜天(だてん)し掛かってるんじゃあないのかい?

――堕天
なっ、馬鹿なっ!?
な、なにがっ!?
そんなっ!?

愛倫(アイリン)の言葉に

我が身を振り返る天使達、


その足元からはかすかに

黒い染みが広がりはじめていた。

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