闇の眷属による襲撃
文字数 1,039文字
その夜は何やら奇妙な気配を
ソードマスターも感じていた。
用心棒である彼に与えられた
和室の客間。
誰かが廊下を走って来る足音が
聞こえたかと思うと、
部屋の障子が勢いよく開けられた。
敵の襲撃を逃れた
組織の下っ端構成員が
用心棒であるソードマスターを呼びに来た。
その言葉が終わるか終わらないかの内に
常に肌身離さず手にしている日本刀を
改めて握りなおし、
勢いよく部屋を飛び出すソードマスター。
しかしその興奮を
もはや留める事すら出来ず、
ソードマスターはいきり立つ。
それはソードマスターからすれば
目も当てられぬ惨状、
壮絶な修羅場と化していた。
確かに敵の襲撃には間違いないし、
味方はほぼ壊滅状態でもある。
……性的な意味で。
マフィア組織のボス、大親分の両脇には
べったりと美女が寄り添い、
その豊満な胸がこれでもかと押し付けられており、
大親分も顔を真っ赤にし、満面の笑みで
デレデレと鼻の下を伸ばしている。
大親分に限らずに
幹部から鉄砲玉、下っ端のチンピラに至るまで、
組織の構成員全員が、
サキュバスの美女軍団とイチャついて
唖然とするソードマスター。
硬派な狂犬と呼ばれている若頭ですら、
膝の上に美女をはべらせ、
顎を撫で回され、のぼせ上っている。
さすがにソードマスターも、
これがただの乱痴気騒ぎでないことに気づく。
そう言って、腰に帯刀している
日本刀に手を掛けるソードマスター。
その時、
背後に位置する日本庭園から
女の声がする。
夜の日本庭園、その暗闇の中から
姿を現す女、
その両の手には
青白く光る透明の刀が握られている。