天才外科医とプリースト
文字数 1,347文字
ストレッチャーに乗せられて
救急搬送口から運び込まれる急患。
この病院の外科医である
リアルブラックジャックと名高い
若き天才外科医。
眼鏡の奥には鋭い眼光、
そして表情は険しい。
患者の男性は
ビルの二階から落下し全身を強打
幸い一命は取り留めたが、
両手両足、腰等の複数箇所を複雑骨折し重症。
重症患者はあまりの激痛に
呻き声を上げ続けている。
類い稀なる才能を生まれ持ち、
それでもなお
たゆまぬ努力を積み重ねて来た彼にとって
彼女達はにわかには容認し難い存在、
それもまた致し方ないことなのであろうか。
緊急に呼び出されたのは
おおよそ病院のスタッフには
似つかわしくない服装の女。
実年齢は定かではないが、
外見だけであれば
まるで少女のようにも見える。
彼女が手をかざして詠唱をはじめると
患者の体が光に包まれた。
その光の輝きと共に
重症患者の呻き声は
次第に微かなものとなって
やがて途切れる。
額の汗を手を拭いながら
彼女がそう言うと同時に
ストレッチャー上の患者が
ガバッと上半身を起き上がらせた。
不思議そうな顔で自らの体を見回し、
手足を動かしまくる患者。
先程まで青色吐息だった男が
まるで嘘のように元気になり、
辺りを飛び跳ね回る。
その様子を見ていた外科医氷室は
そう怒鳴ってから頭を抱えた。
白い服の女は気まずそうに謝り続ける。
彼女の名はフローラ。
異世界ではプリーストとして
聖職に就いていた。
少しドジっ
超一流のヒーリング能力を持っている。