犯罪抑止力
文字数 1,760文字
満員電車の奮闘ぶりを
自分の目で確かめた愛倫、
電車を降り駅のホームで
黒ギャル派の娘達に尋ねる。
ここまで来てようやく
至極真っ当なことを問うたのだが。
黒ギャル派の娘達は
まるで目から鱗が落ちたような顔をしている。
気を取り直してヤルヤンは質問で返す。
もちろん異世界からの移民者達の人権は
当然こちらの人間同様に保障されてはいる。
だが、実情に則していないこともあり、
いろいろと判断基準が
グレーと言えばグレーでもあった。
ヤルヤン達からすれば、痴漢行為の対価として
少なからず精気を吸い取っていたのだから、
後ろめたい部分も感じていて
実際に通報という発想に至らなかったのであろう。
そういうことをヤルヤン達と話していた
今回の件を何とか出来るかもしれない
アイデアが
今回の件で、
また慎之介の力を借りることにした。
最近満更でもない慎之介だが、
そう返すのはお約束。
慎之介に頼んでネットに流してもらったのは、
話題になったSK線の痴女が、
実はどこかの痴漢撲滅民間団体による
痴漢あぶり出しのための囮捜査員だという噂。
ネットで大きな話題となったSK線の痴女、
その正体がわかったとなれば、
その話題は同ぐらいネットに拡散されるし、
もしかしたらそれ以上に注目されることになる。
そもそも既に話題になっている事柄、
その上に更に乗っかって被せるのだから、
拡散させるにはそれ程の労力は必要ない。
これで痴漢撲滅民間団体による
痴漢あぶり出しのための
囮捜査員ということになった
ヤルヤンと黒ギャル派サキュバス達。
それはネットで拡散され周知の事実となっている。
痴漢目的でSK線に乗客する輩は
かなり減ることになるだろうが、
この策にはまだ続きがある。
最初こそ痴漢トラブルで
電車が止まる事案が今まで以上に多発したが、
次第に痴漢行為自体が減って行く。
痴漢する気がある
邪な気持ちの人間がこの電車に乗れば、
確実に捕まるしか道はなく、
それを避ける最も良い方法というのは
この電車に近づかないということになる。
ヤルヤン達、黒ギャル派サキュバスは
痴漢ホイホイを上手く機能させて、
犯罪抑止力としての置物、
装置の役割を果たすことに成功したのだった。
そして、痴漢撲滅の功績が認められて、
ヤルヤンをはじめとする黒ギャル派サキュバス達は
SK線の痴漢撲滅キャンペーン、
そのポスターのモデルに起用されることになった。
だがさすがに痴漢撲滅ポスターに
胸の谷間とハミケツの写真を
載せる訳にはいかないので、
彼女達のアイデンティティーである
胸の谷間とハミケツは封印され、
重装備で撮った写真が使われることになる。
それでもヤルヤンは
お得意のアへ顔ダブルピースで最後の抵抗を試み、
そのままポスターに掲載され爪痕を残す。
『痴漢は立派な犯罪です!』