ドSに豹変したサキュバス
文字数 2,182文字
リリアンは
ここには漁村に居たお爺ちゃん達の船、
村の総力を挙げて知合いに頼み
出してもらった船舶が多数停泊、
民間船団が結成されている。
村の魚人族達は既に水中で待機、
いつでも救出に向かう準備が出来ていた。
空にはサキュバスの仲間達と
協力してくれている有翼人が、
小型ボートには救出部隊として
ニンジャマスターの忍軍がスタンバイしている。
作戦と言っても、いつものように
手薄になった警備をかいくぐって
人魚の娘達を助け出すというもの。
ニンジャマスターが率いる忍軍が
先陣を切って大型客船に侵入し、
悪魔と交戦になった場合は
救出対象の逃げ道と退路を確保しつつ応戦。
リリアンをはじめとするサキュバス達は、
能力で檻の鍵を壊して、
捕らわれている者達を誘導、
人魚はそのまま船から海に飛び込む。
水のないところでは足が遅い人魚でも、
水中に入ってしまえば
そうそう悪魔に追いつかれるものではない。
しかし人魚以外に
海が得意ではない救出対象が多いため、
サキュバスと有翼人が抱えてここまで運ぶ必要がある。
ヤルヤン達黒ギャル派も
当然救出作戦には参加している。
根は悪い
どうにも致命的に空気が読めない。
いつもは脱力系諜報機関キャラだが、
ニンジャマスターも腕が立つ。
人身売買オークションの開始を
今や遅しと待ち侘びる人々。
会場に集まった者達、その数はざっと五百人以上、
乗船しているすべての人間とほぼ同数。
元々この豪華客船は数千人以上を
収容出来るクラスのクルーズ船だ。
暗くなったステージ上、
スポットライトに写し出される美しいシルエット。
それを見た瞬間、
人々のボルテージは一気に最高潮まで登り詰め
異様な熱気に会場が包まれた。
目隠しをして、手錠と首輪に拘束された
抜群にスタイルがいい女奴隷。
男達は鼻息を荒くし、
自分こそが競り落としてやると意気込み、
女達も黄色い歓声を上げる。
人間の強欲が高密度に圧縮され、
弾け飛び昇華する瞬間。
だがしかしスポットライトの逆行の中、
奴隷である筈の女は突然叫ぶ。
そう言い終えた時、
既に
手錠と首輪、目隠しは既になく、
両の手には二丁の銃が握られていた。
間髪入れずにその両手を左右に広げ、
二丁拳銃を乱射する
人々は悲鳴を上げて会場の出口へと逃げ惑う。
人間のスタッフを装っていた会場の下級悪魔が
次々と血を流し倒れ、その正体を現して行く。
それを見た人間達はさらに阿鼻叫喚、
パニックを起こして我先へと逃げる。
口角を吊り上げて悪魔的な微笑を浮かべ、
だがもちろんここに居る
人間を殺すようなことはしない。
人間に重傷を負わせたことは何度もあるが、
人間の命を直接奪ったことは一度もない。
あの逸話の中ですら
王国の王と兵士に重傷は負わせたが、
直接殺してはいないのだ。
ただ負傷した王と兵士達は、
解放された奴隷達によって、恨みを晴らすべく
撲殺され留めを刺されてはいたが、
それをじっと見つめているだけであった。
会場の騒ぎを聞きつけ
続々と駆けつけて来る下級悪魔達。
二丁の銃を乱射し
次々と悪魔を葬って行く
下級悪魔達が血を流し倒れて行く様に
嬉々としている
舞台袖に隠れていた慎之介は思う。