因果に応じた報いの矛先

文字数 1,824文字

……
幼女の姿をしたネクロマンサーから言われるままに、

死して間もない女性達の遺体を

廃墟へと運ぶフランケンシュタイン。

……お、俺は
だが、本当は心優しいフランケンのことだから、

当然、彼の中には葛藤がある。


お嫁さんであるおばあちゃんを

どうしても死なせたくないという気持ちと、

自らが行っていることへの罪悪感。


そして、このような方法で

おばあちゃんを延命させたとしても、

きっと彼女は喜ばないであろうことも分かっていた。


それでも、どうしてもフランケンは彼女に、

お嫁さんに生きていて欲しかったのだ。

まぁ、心配せずともよい
お前の時のように


死体切り刻んだり、血がドバァッとか


そういうことはせんから

最先端の魔術でスマートに

ベクター・フランケンシュタインと同じ

人造人間を再現するというのが


今回のワシの目的じゃからな

つなぎめなんかもない、

シームレスでスマートな


究極のプロポーションの嫁に仕上げてやるそ

どうじゃ? たまらんじゃろ?

ホレホレ

こちらのお騒がせ幼女と言えば、

本当に単なる知的好奇心と欲求から

この世界で様々な実験を続けているだけで、

本質的にはマッドサイエンティストに近い。

――俺はどうすれば……

自分は、死んだ者から筋力を奪って誕生した存在。


そして、自分のお嫁さんになってくれた

おばあちゃんが、筋力の低下で

死んでしまうというのなら、


これは、幼女のネクロマンサーが言ったように、

本当にこの世界の

因果応報というやつなのかもしれない。


そして、もし本当に因果応報であるというのなら、

その報いは自分自身に来るべきだ、

フランケンはそう思わずにはいられなかった。

そこでフランケンは気づく。
――そうだ、俺だ


俺が報いを受ければいいんだ

……こ、こんなことは止めよう
……や、やはり、よくない
うん?
それでは、お前の嫁は助けられんぞ?

それでもいいのか?

……お、俺の、

……俺の体を使ってくれ

……お、俺の体を、

おばあちゃんにあげてくれ

なっ!?
さすがにこれはネクロマンサー幼女も

予想してはいなかった。

な、なにを言うんじゃ、

このたわけっ!

そんなことをしたら

お前は死んでしまうんじゃぞ?

……か、構わない

……お、俺は、それで構わない

……お、俺は、

……お、おばあちゃんの体になって

……い、一緒に生きるから

お前、正気か?

やはりあれか? 脳筋なのか?

そんなツギハギだらけの体をもらって

女が喜ぶとでも思うのか?

幼女が、女について語るなんざぁ

笑っちまうじゃあないか


百年早いんだよ

廃墟の影の中から、

闇と同化していた愛倫が姿を見せる。

泣ける話じゃあないかい
その献身性……
あんたの愛は本物ってことだね、

フランケン

またお前か

毎度ワシの邪魔をしおってからに


この腐れサキュバスがっ

お前には関係ないじゃろうがっ!
なに言ってんだい


人間が愛について悩んでいるんだ


そりゃもう、サキュバスの出番ってもんだよ

こやつは、人造人間じゃ

お前たちの管轄外じゃ

さすが、ネクロマンサーなんかやってるだけあるね、あんた
言い草が、一神教の宗教家そのものだよ
神が創った人間じゃなきゃ、

人間じゃないとでも言いたいのかい?

人が造ったってだけで


立派な人間だよ、フランケンは

本物の愛だって知ってるんだから、

あんたよりよっぽど

人間らしいってもんじゃないかい

ぐぬぬぬ……
サキュバスの人間に対する愛はね


誰がつくったかなんて気にするほど、

そんなチンケなものじゃあないんだよ

フンッ


あんた一体、何者なんだい?

あんたが、あっちの世界でも

滅多にお目にかかれないような

優秀な術士だってのは、

間違いないみたいだけどね

でも今回の犯行は

稚拙もいいとこ


まるで子供がやったみたいに

現場には痕跡が残りまくってた

死んだ者たちの残留思念も

そっちこっちにバラまかれていたからね


ここを突き止めるのも楽なもんだったよ

これじゃ、まるで

多重人格者みたいじゃあないかい

誰が教えてやるもんか

ばーか、ばーか

よっし、フランケン

こいつをやってしまえ

お前の嫁を助けられるのは

ワシだけじゃぞ

フランケンの肉体をおばあちゃんに譲るにしても、

それが出来るのは、

このネクロマンサー幼女しかいない。


言うことを聞く以外、

フランケンとしては選択肢がない。

……お、俺は、俺は
その巨体から拳を繰り出すフランケン。
……う、うぉぉぉぉぉっ
あぁ、いいよ

来なよ

こっちの人間を相手に暴れられるよりは

よっぽどましだしね

それに、あんたの悲しみに満ちた拳を

受け止めてやれるのは


あたししかいないだろうからね

気が済むまで暴れたらいいよ


あんたの悲しみが尽きるまで……

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