必要としなくなった少年

文字数 1,135文字

悪魔さぁ、

お前って本当に変な奴だよね?

そうかい?

だって、

人間がイメージする悪魔と

全然違うじゃん?

コワくもないし、

むしろ結構いい奴だったりするし


のんびり、ほのぼのしてる感じだし……

なるほど

人間が思う善悪の判断基準も

価値観も持ち合わせていないから

僕がいい奴ってのは

正直よく分からないのだけれど

まぁ、でも、

そういう固定概念をぶっ壊して行くのが

そもそもカオス属性の悪魔なんだよね

人間が悪魔をコワイ存在として、

イメージを固定させたから

僕のような、悪魔としては型破りな

悪魔が生まれたって訳で

既成概念に囚われない自由な存在が

悪魔であるってことなのさ……

まぁ、こちらの世界で例えるなら

サプライズも毎回やってれば

ただの予定調和でしかなくなるから


王道が逆にサプライズになる、

まぁ、そんな感じかな

なんかその例え、分かりづらいなぁ
あれから僕は、少年と何度も会っていた

しばらくの間は、

ほとんど毎日のように

顔を合わせる日が続いた

少年と会うのは

いつも学校の屋上と決まっている

まぁ、僕としては


また突発的に少年が

空を飛ぼうとしたりしないか


気が気じゃなかったけどね


でも、最近では、少年と会う回数も

めっきり減って来ている

少年が絶望するサイクルが、間隔が、

次第に長くなっている

あいつら、もう

俺をいじめることに飽きはじめてんだよ

久しぶりに会って

僕が食事を終えた時、

少年はそう言っていた

やはり僕の勘は正しかった……

あの時は、発作的に、衝動的に、

空を飛んでしまったんだろうけど

この少年は本来、

過酷な困難を乗り越えて

前に進んでいけるだけの力を持っている人間だ


俺さぁ、高校に入って

はじめて友達が出来たんだよ……

そ、そう、

それはよかったじゃない

よかったなんて言い草、

それじゃあまるで人間みたいじゃあないか

ちょっと僕は

自分で自分にびっくりしたよ

まぁ、既成概念に囚われない悪魔だから

そういうことがあってもいいの、かな


悪魔さぁ、

いつもありがとうな……

僕は君の絶望を

ご馳走になっていただけなんだけどね

その時、僕は

少年との別れの日が近いことを悟った

でも、それでいい

僕は人間の絶望を求めてさまよう

流浪の悪魔だからね

ひとつところにずっと居るのは

似合わない

――こちらこそ、

今までごちそうさまでした……。


それからはもう

少年の絶望の匂いを感じることは無かった

あの時以来、僕は少年には会っていない

そして、少年が通う学校の上空を

たまたま通りがかった時に


僕は少年の姿を発見したんだ

……

少年は友達と一緒に居て

楽しそうに笑っていた

今の君が、

そんな笑顔をしているのなら、

もう僕とは会わずにいられるだろう

そうか、もう君は

僕に会う必要が無くなったんだね……

でも、これから先の長い君の人生


もし君がまた絶望した時には、

会いに来るよ

君が空を飛んでしまう、その前にね
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