少子高齢化なので、異世界からの移民を認めます
前のエピソードへ「必要としなくなった少年」
文字数 1,233文字
悪魔じゃあないか……
懐かしい絶望の匂いがしたから、
少年に会いに来たよ
いや爺さんだよ、僕は
僕の寿命は千年単位だから
君がまったく絶望してくれないから
ご無沙汰になってしまったじゃあないか
妻となる女性と出会ってね……
こんなに久しぶりに絶望するだなんて
その妻に先立たれてしまってね……
絶望していたところなんだ
妻に任せっきりだったからね
本当に途方に暮れているんだよ
じゃあ、早速、僕が……
悪魔と再会出来たんだから
僕の絶望を、心ゆくまで悪魔に
妻を失った悲しみを忘れてしまっては
ほら、君も知っての通り
僕は隠キャだからね
散々苦労をかけた……
妻がいつも傍に居てくれる
不思議と絶望はしなかったね
妻の死を乗り越えてしまっては
彼女に申し訳ないように思うんだ
ゆっくり悲しみを癒やしていかないと
彼女に失礼なような気がするんだよ
自分の中にある感情として、
自分の心の一部として
きちんと向き合うことが出来ている
それは喜ばしいことなんだろうね
なんとももったいない話だよ
この上なく美味だからね
うんと絶望しておくれよ
また僕はやって来るからさ
看取ってあげるよ
絶対、必ず、絶望するから
子供も巣立った今
僕は独りで逝くものだと思っていたんだ
こんなに嬉しいことはない
約束だよ?
今際の際に、僕は絶対絶望するから
僕の絶望を喰らいに来ておくれよ?
★いいね!
ファンレターを書く
次のエピソードへ 獣の臭い
作品お気に入り
登場人物はありません