淫夢・攻

文字数 1,133文字

これでトドメだっ!

動きが鈍ったアイリンに

留めの一撃をくらわそうと

モーションの大きい渾身の一撃を振り回す。

アイリンはこれを、人狼の腕を掴み、

流れに逆らわず後ろに飛ぶことで、

衝撃を和らげ受け流す。


派手に飛ぶので、

人狼はさらに猛追して拳を振り回す。

……

アイリンが人狼の攻撃を後ろに飛んで乗り切る、

それが何度も繰り返された後。

突如として人狼が崩れ落ち、片膝を着く。
クッ

アイリンは人狼の射程ギリギリまでにじり寄る。

あんた、あたしが

エネルギー切れのサキュバスだと思って

油断したろ?

あたしぐらいのレベルになるとね


男と性交するだけが

精気を吸収する方法じゃないんだよ

立ち上がろうとする人狼、

だがその足元はフラフラだ。

エナジードレイン……

ドレインタッチか……

そうだよ、

何のためにあたしが殴られる度に、

あんたの獣臭い腕を掴んでたと思ってるんだい?

まぁエネルギー摂取の効率が悪いんで、

普段はあまり使わないんだけどね

調子に乗った獣に気づかれないように

精気を吸い取るぐらいわけ無いことさ

フラフラになりながらも向かって来る人狼。


その土手っ腹に

綺麗な弧を描いた回し蹴りを決めるアイリン。

グッ!!
人狼は腹を押さえその場に崩れ落ちる。
アイリンは深呼吸をして発する
――淫夢(いんむ)(せめ)
その言葉と共に歪む空間。

物質至上主義文明のここの人間には、

見えないし聞こえないし、効かないんだけどね

精神至上主義文明の

同郷から来たあんたには、

よく効くことだろうよ

!?

いつの間にか、

弱った人狼の体には拘束具、口には猿轡が。

これはあんたの心の奥底にある欲望を

具現化して、攻撃手段にする術だからね

アイリンの手には巨大な(むち)が握られていた。

どうしてあんたみたいな

脳筋(のうきん)マッチョには、

ドMが多いんだろうね……


やんなっちまうよ、まったく

『鞭打ち千回の刑』

アイリンはその太く長い

巨大な鞭を高速で振り回し、

拘束され身動きが取れない人狼の背中を

何度も打ちつける。

ヴゥッ!

空を切り裂き、

ビュンビュンと(うな)る鞭。

ヴゥッ!

猿轡で声を出すことが出来ず、

呻き声のみを上げる人狼。

ヴゥッ!

背中の毛は抜け落ち、

皮膚には大きなミミズ腫れが無数に浮かぶ。

まぁ、

千回には全然足らないけど


これ以上やったら死んじまうからね

人狼は失神し体をピクピク痙攣させている。
キャン……キャン……
これはちょっとご褒美過ぎたかね


被害者は無事保護
男三人は骨抜きで逃亡不可能
人狼も拘束して身柄を確保
今回もこれで一件落着ですかね

女子高生を家まで送り届けたリリアンは、

状況を確認するように言った。

今回は密入国者が絡んでるからね、

警察も移民局も出て来るだろうよ

さすがにこれで一件落着と言う訳には

いかないだろうね

夜空の満月をしかめっ面で見上げるアイリンだった
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色