多神教の神
文字数 1,725文字
ここは人通りが少ない路地裏、
目の前に居るのは死神、
そして人間の男が倒れている。
『異世界人らしき不審者が、人間を襲っている』
そう警察に通報があり、
ちょうど近辺に居た警部達に連絡が入り、
急遽この現場へと駆け付けて来た。
どさくさに紛れて一緒について来ている。
今現在、眼前に見えている死神は
おおよそ人間が考え得る
ステレオタイプとほぼ同一の姿。
身の丈は二メートルを超える巨漢、
ローブを纏い、フードを深く被って
その隙間からは白骨姿が覗いており、
死神の身の丈と同じぐらいの
巨大な鎌を手にしている。
死神の前に倒れている人間の男は
既に青白く生気を全く感じさせない、
おそらくは既に絶命しているであろう。
死神の姿に恐怖する大泉警部、
同行して来た警官達も
拳銃を手に後ずさりする。
オカルティックという点で言えば、
死神といい勝負のオカルト加減なのだが、
やはり見た目は重要ということだろうか。
恐怖に駆られた大泉警部は
咄嗟に警官達に発砲を指示。
もしこれが本当に死神であるならば、
曲がりなりにも『神』を名乗る存在に
問答無用で発砲するなど、
どんな報復をされるか分かったものではない。
しかし
やはり恐怖に支配された警官達は
冷静な判断力を失っており、
手に持つ銃の撃鉄を引く。
緊迫した空気の中に
響き渡る銃声。
しかし銃弾は
死神の体をすり抜けて行くばかりで、
全く効果はない。
死神はそう言い、ローブを翻すと
その場から姿を消した。
さっきから横で
聞いている慎之介は苦笑するしかない。
確かに、死神がその手にする大鎌を振り回すだけで
目の前に居る人間は
肉体と魂のつながりを絶たれ
それだけであの世行きとなる。
今目にした存在が神であることを
再認識せざるを得なかった。
取り乱した大泉警部は
警官達に死神の捜索を命じたが、
慎之介は
異世界の生き字引か何かと
勘違いしているのかもしれない。
慎之介は全面的に信じている。
大泉警部と警官達は慌ただしく
容疑者の死神を探し回ている。
被害者の状況を確認した後、
慎之介と共に現場を後にするのだった。