剣の舞
文字数 1,663文字
両の手に持つ
天高く頭上に掲げる
そこからゆっくりと
左右に半円を描くように
二刀の剣を降ろして行く。
本来は相手の焦りを誘って
敵が動いたところを切り捨てるカウンター技だが、
幻惑術のようなものであった。
ただでさえ手足の長い
両手に持つ長刀は一メートルを超える、
おそらく射程距離は
二メートル半以上になるだろう。
その左右の手に持つ剣が真横に広がった時
切っ先と切っ先の間、
その距離は五メートル近くにも達する。
常人であればこの近距離で
約五メートル離れた二つの切っ先を
一つの視界に収めることはまず出来ない。
さらには
剣の残像であるかの如く
ソードマスターの目には映る。
静かなる立ち上がりから一転して、
電光石火、
その瞬発力で一気に間合いを詰め、
跳躍すると
宙で体を捻らせ
回転しながら
ソードマスターの頭上目掛け
右の太刀で一撃目を放つ。
これを紙一重でかわすソードマスター
しかしそこには
回転している
二撃目の追い撃ち。
これを刀で受け止め防ぐソードマスター。
力で跳ね返すと、
そのまま返す刀で一閃。
寸でのところでかわすが、
ライダースーツの脇腹付近にかすり、
高速で刃と刃が交差する度に
火花が飛び散る。
互いに相手の打った刀を
自分の刀で受け止め、押し合う、
そんな
幾度となく繰り返される。
疾風怒濤の如く駆け、
跳躍し、宙を舞う
剣を持って舞踊る
時代劇が好きと言っていた割には
正統派な剣術らしさは微塵もない。
だがそれ故に、初動だけでは
その攻撃を予測するのは不可能に近く、
いつどこから二つの切っ先が
飛び出して来るかはわからない。
ソードマスターも
ここまでは防戦一方。
その剣は
つくったというだけあって、
剣の重さをほとんど感じないが、
その代わりに尋常ではなく速い。
これだけの
これ程までに軽々と
次々に繰り出されるということは
通常であればまず有り得ない。
剣というよりは
二本の鞭を操っているのに近い。
魂を斬る『斬魂刀』において
外傷の重篤度は問題ではなく、
射程と速度に特化した剣と考えれば
理には適っている。
これならば、剣を使うことに
拘る必要もないのであろうが、
剣でソードマスターに勝ってこそ
伝わるものがある筈、
そこは
二人の真剣勝負は、
その後も一進一退の攻防が続いた。
刃を交えて押し合う、
その
後ろによろめき片膝を着く
ここぞとばかりに振り下ろされる
ソードマスターの剣
これを
前につんのめるように出てかわし、
そのままソードマスターの顔面に
頭突きをくらわせる。
不意の攻撃に
後ろへ数歩後ずさるソードマスター、
そこで一瞬動きが止まる。
ここまでの真剣勝負で消耗し、
息が乱れはじめている
その間に呼吸を整えた。
意外なその言葉に
思わず鼻で笑う
ソードマスターもまた
乱れた呼吸を整えている。
予想以上の
ソードマスターも
戸惑いの色を隠せない。