現場に残された証言
文字数 2,113文字
まだ現場検証中であったが、
特別に中に入って遺体を見せてもらう
慎之介と
遺体に微かに残った魂の絞り
残留思念を見た
開口一番に発した言葉がそれだった。
人間の目には見ることが出来ないものが、
異世界の者達には見えることがある。
同様に
分からないことが
現場には多数残されていた。
連続突然死に何かしら異世界の者達が
関わっていると考えた慎之介は、
そうした異世界の者にしか分からないことを
調べてもらうために
突然とんでもないことを言い出す
霊的捜査を行っている二人を尻目に
大泉警部はまだ一人でぶつぶつと
お小言を続けていた。
ドキッとする警部。
紳士を気取ろうとしても
ついつい本音が出てしまっている。
色めき立つ警部。
勘違いに歓喜して
取り乱している警部だったが、
ここは大人の魅力、余裕を見せようと
「オホン」と咳払いをして
落着いた素振りを取り繕う。
手で掬い上げて持っている
遺体に残っていた残留思念を
警部の体の中に押し込んだ。
早い話が、被害者の残留思念の依代、
憑依される降霊術師役を
警部の肉体にやってもうらおうという訳だ。
それまでエロい妄想をしていた警部、
別人格が憑依して一転、
目の色と顔つきが変貌する。
現場に留まっていたわずかな残留思念は、
まだ自分が死んだことを自覚していないらしい。
魂の欠片を諭す。
死した者を迎えに来る存在。
人間の魂を肉体から切り離して
命を奪う悪しき存在として
一般的には認識されているが、
そもそもは魂の管理者であり、
死せる人間の魂が迷わぬように
正しく冥府に導くという役割を持っている。
とは言え
どうにも腑に落ちない。
しかしそこで残留思念はついえ、
それ以上の有益な情報は得られなかった。
大泉警部が我に返ると
その時ちょうど警部の携帯が鳴った。