元冒険者とパチンコ依存症
文字数 2,158文字
自動販売機を宝箱だと勘違いしてぶっ壊して、いきなり通報されてた奴もいたなぁ
中の缶が全部ポーションだと思って
街中のありとあらゆるところでポーション売ってるって『どんだけヤバイ世界なんだよ、ここは』って、冒険者みんなが口々に言ってたわ
まぁ、こっちの夏は暑いからよ
いつでも水分補給て回復出来るって意味では、ポーションでもあながち間違いじゃないんだけどな
とは言え、
何年もこっちで暮らして、慣れきって、こっちの生活が当たり前になっちまうと
刺激が足りねえなと思う訳よ
生きるか死ぬかの瀬戸際で
俺、毎日輝いてたなとか
だいぶ自分の中で
美化されてるとは思うんだけどよ
こっちの世界の人間はみんな
冒険者カッケーみたいに思ってるみたいだがよ
あれ、ただの社会不適合者だかんな?
地に足を着けてコツコツ真面目に地味に働くとか、一生懸命生きてくとか
おおよそそんなことには向いてねえ
海の者とも、山の者とも分からねえ
一攫千金狙いの無頼者ばっかりってことだ
まぁ、あれだよ
こっちの世界で例えるなら
極道とかマフィアとか、反社みたいなもんだよ
力を持て余してて
とにかく暴れてえみてえな
そんな
まぁ、冒険者もパチプロも
ギャンブラーってとこは同じかもな
だいたいよぉ
こっちの人間はよ、
優し過ぎんだよ
いい台とる為に、競争相手を蹴落として奪い合うとか
ホールの床に落ちてる玉を
必死に拾い集めてたら、
「それは俺の玉だ」って言われて
喧嘩がはじまるとか
そういう人間の小汚ねえとこが
人間が必死に生きてるって感じなんだよ
それすらもすっちまて、
文無しになった時の絶望感たるや
頭の中が真っ白になって
この後どうやって家まで帰ろうか
明日からどうやって生活しようか
なんでこんなことしちまったんだとか、泣いて後悔して、自己嫌悪に陥って
どうにも出来ない現実に
押し潰されそうになって