肉を切らせて魂を断つ
文字数 1,949文字
ライダースーツはすでに何箇所も斬られ
そこから
ソードマスターも
外見は無傷に見えるが
魂にいくつかの切り傷を負っていた。
両手の剣を体の前で交錯させて
左右をその刃で守る、防御態勢から、
ソードマスターへと突進する
ソードマスターは刹那の間に
敵の行動を予測する。
防御態勢から転じた
ソードマスターは
その空いた脇腹から真横に
しかし、
そこから微動だに動こうとしない。
ソードマスターが負わせた筈の傷は
太刀が刺さったその瞬間に
すぐに塞がれており、
そればかりではなく
剣の体に刺さっている箇所は
敵を誘い込むためのもの。
ソードマスターが気づいた時には時既に遅く、
その体は貫かれていた。
いや身体には全く傷はないので
肉体を貫かれている訳ではない、
その魂を貫かれたのだ。
『肉を切らせて骨を断つ』ならぬ
『肉を切らせて魂を断つ』と言ったところか。
技量はほぼ互角か、
相打ちも辞さない
その覚悟が勝敗を分けたのだ。
戦いの終わりを確信する
その息は少し乱れている。
体に刺さった剣を引き抜く。
闇と同化していたニンジャマスターが
影の中から姿を現す。
ソードマスターのことを心配する余り、
夜陰に乗じて敷地内から
ことの一部始終を見守っていたのだった。
倒れている同胞に
駆け寄るニンジャマスター。
ソードマスタ-を
軽々と抱え上げ、左の肩に担ぐと
ニンジャマスターは頷いた。
すっかり屋敷も静まり返っており、先刻のような
どんちゃん騒ぎの音は聞こえて来ないが、
それはそれでまた別の心配が生じる。
これ以上マフィアと関わりたくない
出来るだけ速やかに、即刻帰りたいところ。
微笑を浮かべそう言うと
ソードマスターを担いで
再び闇と同化し消えて行く
ニンジャマスター。
この件に恩義を感じたニンジャマスターはこれから先、
また時には自ら諜報役や密偵を買って出て、
協力してくれるようになるのだった。
その後、
大親分をはじめ、若頭、三下に至るまで全員が
既に精気を吸われノックアウトされた後だった。
もちろん全員死んではおらず、
サキュバスの娘達の通常からすれば
かなり控えめな方でもある。
その場に倒れている人間全員の
直近数時間の記憶を消して回る
これで今回の件は、
なかったことになってくれれば
愚痴の一つも言いたくなるというものだ。