情報屋 The・シャドウ
文字数 2,176文字
二日目は魚住さんと
事務方の仕事をこなす予定になっていた慎之介。
さすがに
一人で村を散策する事にする。
田舎道をただブラブラと歩いてみるが、
人通りもなく車もたまにしか通らない、
確かに過疎なのは間違いない。
とは言えこちらの都会に人が多過ぎるだけで
異世界ではこれぐらいが普通だったようにも思う。
そんなことを考えながら
ぼうっとしばし海を眺める
いつからか気配を感じていた
殺気や邪念などは一切感じないので
おそらく敵ではないだろうとは思っていた。
アイリンねえさんの姿をお見かけしたので、
ご挨拶しておこうかと思った次第で
日が当たる防波堤の影から
人型の影が現れるが、
すぐ
その影がより黒の濃さを増して
次第に鮮明になって行く。
まるで影絵のような真っ黒な人型、
左目だけが輪郭を白く
それ以外はすべてがただ黒いだけ。
そして厚みを持たず、
まるでニ次元の生命体であるかのように
地面に貼り付いている
それがThe・シャドウ。
Theを付けるのが面倒なので
みなはシャドウと呼んでいる。
影の中に生き、影から影へと移動を行い、
夜は闇の中で活動する、
その特性を活かして異世界では
情報収集のプロ、情報屋を
魚人族と違って、
シャドウはこの地への適性が高い訳ではない。
彼の場合は都会の中でこそ
その特性を活かすことが出来るだろう。
まぁシャドウがこれからは普通に平穏に
暮らして生きたいと思っているなら、また話は別だが。
シャドウはそう前置きした上で、
答えられる範囲のことを話す。
少し気になったが、守秘義務と言われてしまえば、
さすがにそれ以上詮索する訳にはいかない。
ついつい
余計な事を言いそうになったシャドウは
慌ててその場を去って行く。
防波堤の影の中に再び消えたシャドウ、
その気配はどんどん遠のいて行く。
今回特に問題らしい問題もなく、
予想以上に早く仕事が片付いたので
午後は
まるで幼い子供が
父親に遊んでもらえることになって
喜んでいるかのように、無邪気にはしゃぐ
恋する女はいくつになっても好きな男の前では
可愛らしい女の子の側面があるということを
恋愛経験ゼロの慎之介が知る筈も無かった。
海水浴にダイビング、釣りに海水温泉やらと
残りの時間を二人で楽しく過ごした
二泊三日の視察が終わった帰り道でも
キラキラとした笑顔で
嬉しそうにそう言う
ついつい可愛いと思ってしまう慎之介。
今回の視察で、慎之介は
今まで以上により身近な存在として
感じられるようになっていた。
二人の距離が近付いたように感じていた。
だか
数日後には再び女戦士の顔に
戻らなければならなかった。
この漁村に居た人魚の娘達七名が
忽然と姿を消して行方不明になったのだ。