トイレの花子さん

文字数 1,120文字

ハァ、ハァ……
なんで、こんな

走って逃げなくちゃならないのよ

これじゃ肝試しじゃなくて

鬼ごっこじゃねえか

しーっ!
静かにして
なんか聞こえない?
ひっひひひひ……
えぇ?
ちょ、ちょっと……
(ブルブル、ブルブル

リーダーの少年は、

声がする方に懐中電灯の明かりを向けた。

……
暗闇の中に照らし出される人影。
う、うわぁっ!
……
なんだぁ、

トイレの花子さんかぁ


もぉ、おどかさないでよ

……あなたたち、

こんな時間に、こんなところで

なにをやっているの?

肝試しだよ、肝試し
そ、そう……
花子さんも一緒にやらない?
幽霊のあたしが肝試しするというのは、

ちょっとよく意味が分からないことになってしまうのだけど


それは、一年ぐらい前のことだった。
あぁ、漏れちゃう、漏れちゃう
便意を催しトイレに駆け込む少年。
おい、嘘だろう
しかし、個室はみな埋まっており、

空いているのは一番奥にある部屋だけ。

いや、

あ、あそこはさぁ

そこはトイレの花子さんが現れると

子供たちの間で噂されている個室。

なんで男子トイレに

女子の花子さんが出るんだよ、

おかしいだろ

女子トイレにしろよ、

居座るなら

そんなことを口にして、

便意をそらそうとする少年だったが、

どうにもそれぐらいではおさまりそうにもない。

ドン!ドンドンドンッ!
ちょっとぉっ!

早く出てくれよっ!

他の個室のドアを叩いて回ったが、

反応は薄く、間に合いそうにない。

あぁ、もう……
仕方なく、トイレの花子さんが現れると噂の

個室に入ることを覚悟する少年。

あ、あのさぁ

花子さん、ちょっとそこで

う○こさせてもらってもいいかな?

何も返事はない。
い、いいよね?
やはり返事はない。

返事がないってことは

いいんだよね?
我慢の限界に達した少年は、

個室のドアを開ける。

ガチャッ!
……
しかしトイレのドアを開けると

そこには花子さんが立っていた。

あっ!
あぁ
あぁ……
驚いた勢いで、肛門の括約筋がゆるんだ少年は、

その場で漏らしてしまう。

ど、どうしてくれんだよっ!
び、びっくりして、

出ちゃったじゃないかよ!

泣き喚いて文句を言う少年の剣幕に

今度は花子さんがびっくりしてしまう。

……ご、ごめんなさい
よく分からないが、仕方ないので、

漏らした後始末を一緒にしてあげる花子さん。

その件以来、この小学校の子供達と

トイレの花子さんは仲良くなっていった。

花子さんさぁ、

今度、教室にも遊びに来なよ

女子も花子さんに会ってみたいってさ
……あなた、

う○こしながら

あたしと会話しようとするの

やめてもらっていいかしら?

そう……

肝試しというのは分かったけれど、

今日はこのまま帰った方がいいわ

今夜、この学校では

大変なことが起こっているの……

花子さんがそう言った時、

もうすでに子供達の姿はなかった。

あれと、何か

関係があるのかしら……

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色