復讐(リベンジ)ライダー

文字数 1,295文字

――バイクから異音が聞こえる
あの時からずっとだ

馴染みのバイク屋に行って

見てもらったが


原因は分からないと言われた

他のバイク屋に行ったら、そこでは

異音なんか聞こえないと言われた

もしかしたら

俺にしか聞こえないのかもしれない

壊れた俺の心が叫んでいるのか

それともこのバイクが

俺のことを止めようとでもしているのか

だが、俺は止まる訳にはいかない

いや、逆に

ずっと止まったままなのか

妹が死んだ、

いや、殺されたあの時から

俺の時間は止まったままだ
もう俺は死んだも同然で

今はただ、残された時間

アディショナルタイムを過ごしているにすぎない

殺された妹の復讐を果たすために……
ま、待ってくれ
……
い、命だけは助けてくれ
か、金ならやるから
パァン、パァン

イラつかせやがって、

クソが
――残るは、あと二人か
――俺には双子の妹がいた
名前をハンナと言った

二人は小さい頃から

いつもずっと一緒で


双子特有の不思議な

阿吽の呼吸、感覚の共有みたいなこともよくあった

俺にはなんとなく

ハンナの考えていることが分かったし


ハンナにも俺の思っていることは伝えわっていた

そういう意味では

まさしく俺の半身のようなものだった

だが、ハンナは殺されちまった

あの生きている価値もないような

ド畜生ども、ゴミ以下の屑野郎どもに

命を奪われた

四人組の男たちに拉致されて……


性犯罪者達の慰み者にされて

嬲り殺されたんだ

あいつの恐怖、痛み、苦しみ、絶望、

俺はその片鱗を感じ取った

生きたまま味あわされる地獄、

まさにそんな感覚だった

一部の感覚を共有しただけの俺でさえ

そんな有様なんだから……

当の本人は、どれだけ

痛い、怖い、苦しい、辛い思いをしたんだろうか?

到底、許せるようなものじゃあない


ダメだな、やっぱり

異音の原因は分からない

そうすか……

それ以外は、

ちゃんと整備しておいたからさ
あざーす……
まぁ、それでだ……
なんか最近、お前が

ヤバい奴等のこと調べてるって

バイク仲間の連中が心配してたぞ
まぁ、いろいろあったのは分かるんだけど……
心配しないでくれって、

伝えてといてください

……
バイク屋のおやっさんがまだ話しているのに、

その男はバイクに跨り、エンジンをふかす。

お、おいっ!
無茶なことすんなよっ!
――心配してくれている人達には悪いが……
もう俺のことは忘れてくれ……
俺はもう死んでいるんだ……
あの時、死んじまったんだ


妹のハンナと一緒に

……
――なんだ?

こんなところに誰か立っている?

あいつ等の仲間か?
いや、違うな……


女、女か?

狭いトンネル内を、

わざとバイクの前に塞がるように立っている女。

このまま轢いちまいたいような

最悪な気分だが


それじゃあ、やってることが

奴らと変わらない

男は仕方なくバイクを止める。
……
おい、あんた、

死にたいのか?

邪魔だっ、

そこをどけ

助けを求める、悲痛な女の声が

聞こえたと思ったんだけどね

まさかこんな妙なことになってるなんて

思ってもみなかったよ

なに言ってるんだ、あんた?

頭でもおかしいのか?

そんなこと言うもんじゃないよ
まぁ、いいから

あたしの話を聞きなよ

あんたにとっても

大事なことさね

……
あたしはね、

サキュバスの愛倫(アイリン)って言うんだ

まぁ、ただの通りすがりのいい女だよ
……
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