顔見知りな異形の者たち

文字数 1,481文字

なんか、聞こえない?
シュババババッ……
闇の中から聞こえる、

何者かが走って来るような足音。

リーダーの少年が手に持つ懐中電灯の明かりで、

闇の中を照らす。

う、うわぁっ!
……
なんだぁ、

人体解剖模型先生かぁ


もう、おどかさないでよぉ

君たち、こんな時間に

学校でなにをしているのですか?

今回もまた子供達がよく知る

学校で非常勤講師を務めている

人体解剖模型先生だった。

彼が自らの体を使って教える人体に関する授業は

分かりやすいと子供達にも評判がいい。

ちょっと、ちょっと!

私の内臓どこやったの!?

しかしスケルトンと同様に、

タックルされてバラバラになったところを

子供達には逃げられてしまう。

う、うわぁっ!
……あたし、綺麗?

なんだぁ、

口裂け女さんかぁ


もう、おどかさないでよぉ

こちらも学校の近所によく出没する口裂け女さん。


こちらの世界に、

異世界人がやって来るようになってからは、

すっかりただのご近所さん扱いされてしまっている。

う、うわぁっ!
……

なんだぁ、

赤マントさんかぁ


もう、おどかさないでよぉ

異世界からやって来た異形の者達を

見慣れて育った子供達世代にとっては、

彼らはまったく恐怖の対象ではなかった。


よく知っている近所のおじさん、おばさんに

夜中に学校で出会った程度に過ぎない。

それでは、肝試しに何を求めているのか?


そういう話にもなるが、

この世代の子供達にとっては、

肝試しはもはや概念なのかもしれない。

そうこうしている内に、子供達は

自分たちにも無意識の内に

学校の屋上へとやって来ていた。

だ、誰かいる!?
リーダーの少年は手に持つ懐中電灯の明かりで、

闇の中を照らす。

そこに居たのは、サキュバスのヤルヤン。
あ、あれ?
なんで、こんなところに

子供が来るのよ?

これまで出会った異形の者たちからすれば、

はるかに可愛いらしい

普通の女性に見える筈なのだが。

誰か、この人、知ってる?
えぇ? 知らない……
知らないなぁ……
会ったことない……
し、知らない……
見たことないわね……
…………
互いに顔を見合わせ、

知らない人だと確認する子供達。

きゃぁぁぁぁぁっ!!
子供達はみな一斉に悲鳴を上げた。
なんか、あたし

スゲー傷つくんですけどぉ

今まで、顔見知りばかりで

悲鳴を上げる機会がなかった子供達は、

ここぞとばかりに悲鳴を上げて騒いでいる。


ただ単に騒ぎたかっただけなのかもしれない。


それが彼らにとっての肝試しということなのだろう。

ま、まぁ、

そんなことより

なんで、こんなところに

来ちゃったのよぉ

この先は、今

すごく危険な状態なんだからねっ!

あ、あれ!?
ヤルヤンがそう言った時、

子供達はもうすでに屋上へと出てしまっていた。

――
――
――
屋上には、浮かび上がる魔法陣の紋様と、

その中から現れて来る多数のゾンビ達。


そして一人の子供の姿があった。

よく来てくれたのう、

この世界の子供達よ


待ち侘びたぞ

まぁ、子供同士、

仲良くしようではないか

その見た目は幼女ではあるが、悪魔と同じく、

異世界からこの世界に、数多のゾンビを

召喚出来るだけの力を持つネクロマンサー。

この世界の子供達を無意識下の内に操り、

ここまでやって来させたのもまた

彼女の計画通りであった。

早速じゃがな


まずは、ここに居るゾンビと一緒に

遊んでもらうとするかのう

ゾンビと一緒に

鬼ごっこという訳じゃな

まぁ、せいぜい、

喰われないように頑張るんじゃぞ

とは言っても……
最終的にはワシの、

チャイルド・ゾンビの実験台になってもらうんじゃがな

――
――
――
――
――
――
子供達は、この屋上に出た時から、

悲鳴を上げる暇さえ無く、精神を操られて、

すでに完全に支配下に置かれてしまっている。

ふふふ、楽しみじゃのう
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色