法で裁けぬ者
文字数 2,152文字
いつもの喫茶『カミスギ』に戻って来た
あのドス黒く腐った魂の欠片、
残留思念のことが気になっていた。
慎之介は
この流れで
疑問に思うことがある。
これには慎之介も
首を傾げながら答えるしかない。
慎之介のその言葉と
ずっと気になっていた腐った魂が、
そう呟いた後、
そういうことであれば、
拙者にお任せでござる
上の方から声がしたかと思うと、
天井がパカっと開いて
ニンジャマスターが降りて来た。
今迄何処に居たのか
全くその気配すら感じさせなかった
親指を立ててサムズアップしてみせている。
これだけ気配を消せるのであれば、
いいんじゃないかとも思うが、
こちらはただ老いて死に掛けで
生気がないだけだった。
こちらの世界からすれば
逆輸入の忍者みたいなものだ。
縁があって、彼もまた現在は
そもそもこの話が
慎之介によって持ち込まれた時から、
ニンジャマスターには先行して
事件のことを調べてもらっていた。
ニンジャマスターは
そう言うのとほぼ同時に、
忽然と二人の前から姿を消した。
数日後、再び喫茶『カミスギ』に集まる
ニンジャマスターの報告と
自分が入手した被害者の資料を見て
愕然とする慎之介。
この世界の警察による捜査では
決して知り得ないことが、
ニンジャマスターの報告にはあった。
催眠やら記憶読み取りやら
異世界人ならではの手法で集めた情報が多く、
その辺はニンジャマスターも
慎之介には内緒にしておくしかない。
一人目の被害者は、
有力政治家の息子。
悪い仲間に女を拉致させて来ては
別荘に監禁、奴隷として弄び、
挙句の果てには勢い余って殺してしまう。
その被害にあった女性が何人もいる。
しかし闇世界とも繋がりが深い父親が
息子の不始末を闇から闇へと葬り去る為、
決して表沙汰になることはなく、
法的に裁かれることもない。
二人目の被害者は
十数人の死亡者を出した
連続放火事件の容疑者であるが、
現在は証拠不十分として
不起訴になっていた。
三人目は、現在警察が捜査中の
連続強盗殺人事件の真犯人。
こちらも捜査が難航しており、
警察が死んだ犯人に辿り着くことは
永遠にないかもしれない。
四人目と五人目は
人身売買シンジゲートのブローカーで、
世界各国を飛び回り
幼女や成人女性を攫っては
闇のルートに売り捌いてた。
こちらも決して表沙汰になることはないので、
警察はまだこの事実すら知らない。
六人目も、まだ捕まっていなかった
連続殺人の犯人。
彼等はみな、
今回の事件の被害者であったが、
別の事件の加害者でもあった。
そしていずれも
死神とは違った意味で
『法で裁けぬ者』達ばかり。
今回の連続突然死事件
改め魂強奪事件、
その真犯人の動機に確信を持つ