お金儲けと信仰(1)
文字数 1,755文字
病院の最上階にある理事長室、
ガラス張りの壁面からは都内が一望出来る。
室内の装飾品などからしても、
莫大な利益を生み出しているのであろうことは
容易に想像がつく。
これに関しては、ただただ
病院長も賛辞を送るばかり。
医療法人である
この病院の全権限を握る理事長は
その言葉を聞いて大いに喜んだ。
理事長はここぞとばかりに
金儲けに走る気満々のようだ。
それからフローラをはじめとする、
三人のプリースト達は昼夜を問わず、
馬車馬のごとく働かされることになる。
当然、彼女達にも
人々の命を救う為に働きたい
という強い意向があったからだが。
病院側からは
高額な治療費を払っている金持ちを優先して
治療をするようにとの指示があったが、
しかし彼女達は聖職者でもあるので、
そういう訳にはいかなかった。
病院の裏口から出て来た理事長に、
まだ幼い子供を連れた
母親が直談判をしている。
必死の形相の母親は
地面に座り込み土下座さえもいとわない。
愛する息子の命がかかっているのだから
それぐらいどうということもないのだろう。
その光景を休憩中に
偶然見てしまったフローラ。
さすがに相手に面と向かって堂々と、
貧乏人は帰れとは言わない。
その場に泣き崩れる母親。
何が起こっているのか
まだ理解出来ないぐらいの小さい男の子も
それにつられて大きな声で泣きはじめる。
母親と幼い子供に不安を与えぬよう
フローラは明るい笑顔でそう言った。
病院の勤務が非番になってから
昼間目撃した母子の家を調べ、訪問したフローラ。
自分の体を包む光を
不思議そうに見ている
手を合わせて目を瞑り
ひたすら祈り続ける母親。
祈る者がいて、
神に仕える者がいて、
救われる者がいる、
そして目の前で行われる奇跡
その様は、まさしく宗教的な奇跡の瞬間。
ヒーリングでの治療が終わると
幼子はフローラに抱きついて言う。
母親は何度も何度も
フローラに頭を下げ続けていた。