巨大霊砲 = スピリチュアル・カノン
文字数 2,000文字
自分がこうして動けなくて倒れている間も
そのことに慎之介は敬意を抱くと共に
自らの不甲斐なさを身に染みて感じていた。
ふとそんな慎之介の脳裏に
漁村で聞いた逸話が
青白いオーラを身に纏って光り輝き、
激しく舞い踊っているかのように戦う
ここの場に居た下級悪魔達は
すべて一掃した筈であったが、
魔界と繋がるゲートから
まるで無尽蔵であるかのように、
再び続々とこちらにやって来ている。
我が物顔で宙を飛び回っていた銃が一箇所に集まり、
青白い光の粒に、粒子レベルに分解した後、
再結合しはじめて再構築を果たす。
口径約二メートル、全長十メートル弱、
口径からは青白い霊的エネルギーが
今にも溢れ出さんとばかりに
ゲートに向けて、その道筋を、
しなやかな美しい指で指し示す
と同時に船全体を大きく揺るがす程の轟音と共に、
収束された霊的エネルギーが
ゲートに向かって放出される。
閃光と共に巨大な光の束が、
ゲート手前に居る下級悪魔達を一瞬で消し去り、
ゲートの中央を直撃して消えて行く。
ゲート越しに魔界で順番を待ち、
待機している下級悪魔達を殲滅しようと
涼しい顔をしている
これ程までのエネルギーを放出しても
まるで何ともない様子。
それ程までに慎之介の精気が効いているのか。
リリアンに悪気はなかった、
良かれと思って言ったことであった。
先程から
この船の内部にも著しく損傷を与えはじめている。
本来、
こちらの世界の物質には影響を及ぼさないように
調整されているのだが、
物質非干渉臨界点を突破してしまっているのだ。
このままいけば損傷が激しくなった船が
沈むのは時間の問題だろう。
それは
そんな
これまで共に戦って来たパートナー、
バディとしての絶対的な信頼と絆。
もし何かあったら彼女は自らの命を顧みず、
自分を助けようとするだろう。
だからこそ自分も
最後まで一緒に居て
慎之介の言葉がリリアンの胸に響く。
まだ人外と呼んで差別する人間すら居るというのに、
そんな異種族である自分達の仲間と、彼女と、
それ程までに深く固い絆で結ばれているのかと。
リリアンは
その先を言うのを止めた。
慎之介自身が気づいていない気持ちを
自分が先に言うのは、違う気がしたからだ。
リリアンにとってそれは
慎之介の前で言ってはいけない、
NGワードだったのだろう。
――慎之介、あんた、
それってもう愛だよっ!