フランケンの慟哭、悲しみの拳

文字数 1,077文字

……う、うぉぉぉぉぉっ
フランケンシュタインが振り回す拳、

愛倫(アイリン)は両の掌を前に突き出し、

真っ向からこれを受け止めた。


その衝撃だけで、

今は廃墟と化しているこの建物全体が揺れる。

さすが、あんたのフルパワーだね
……う、うぉぉぉぉぉっ
フランケンはまるで

やり場のない怒りと悲しみをぶつけるかのごとく、

力まかせに拳を繰り出し続ける。

打ち出された拳、それが当たる寸前、愛倫(アイリン)

横からフランケンの手を弾き軌道を変えて逸らす。


まるで強い風を受け流す柳のように。

あんただって、

分かっているんだろ?

こんなことをしても、

あの人は喜ばないってことを

……う、うぉぉぉぉぉっ
別にね、死んだ人間から

体の一部をもらって移植するのは、

こちらの世界でも悪いことじゃあないんだ

ただね、事前に、生前に、

ドナー本人の同意がいるんだよ

……そ、そんなの

……ま、待てない

……お、おばあちゃんには


……す、すぐにでも、

他の体が必要なんだ

あぁ、そうだろうね……
愛倫(アイリン)は、フランケンの拳

その一発一発を丁寧に受け止め、受け流す。

ドレイン・タッチ

フランケンの慟哭がおさまるまで付き合おうと、

愛倫(アイリン)は最初からそう決めていた。

あんただって、自分が誕生した経緯に

罪悪感を感じて苦しんで来たんだろ?

愛する人に、

自分と同じ苦しみを

味あわせる気なのかい?

フランケンもまた、おそらくは

エネルギーを吸われていることに気づいていたが、


それでも、自らの拳を打ち続けることを

止めようとはしなかった。

あの人は、肉体の束縛から解散されて

魂が自由になろうとしているんだよ

あんたには辛いだろうけど、

ここは見送っておやりよ……

こうなれば、

ワシも攻撃魔法で加勢してやろう

あんたは、本当に空気の読めない

お子ちゃまだね

ネクロマンサー幼女の魔法攻撃をかわしながらも、

フランケンの拳を受け止め続けた愛倫(アイリン)

……う、うぅぅぅぅぅっ
やがてフランケンは膝をつき、

その場に崩れ落ちる。


涙を流し、嗚咽を漏らすフランケンシュタイン。

あんたの精気を吸ったあたしには

よく分かるよ

あんたはやっぱり人間だね
獣でも、怪物でもモンスターでもないよ
クソッ、この腐れサキュバス

覚えてろよっ

次こそは、

ぎゃふんと言わせてやるからな

旗色が悪くなったと見るや、

ネクロマンサー幼女は捨てゼリフを吐いて、

瞬間移動でその場から姿を消した。

本当に、厄介なお子ちゃまだね
……う、うぅぅぅぅぅっ
……お、おばあちゃん
しっかりおしよ


今はまだここで

泣いている場合じゃないんだよ

あたしが、もう一度

あの人と話をさせてあげるから

……
手遅れにならない内に、

ほらっ、行くよっ


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