きっとまた、会いに来るから

文字数 1,252文字

すまないねぇ

こんな所に押し掛けちまって

いえ、この方たちの

魂が救われるのであれば

病院で意識不明となっているおばあちゃんの、

まだその体にとどまっている魂を


誰の目にも分かるように実体化、視覚化させて、

フランケンシュタインに会わせる愛倫(アイリン)

フランちゃん
……お、おばあちゃん

……ご、ごめんね

……お、俺、

……な、なにもしてあげらなかった

……お、おばあちゃんを

……た、助けてあげられない

そんなことないわ

こんなにいっぱい悲しんでくれて
こんなにいっぱい泣いてくれて
こんなにいっぱい大切にしてくれて
こんなにいっぱい愛してくれた
そして、あたしの最期を看取ってくれる
あたしには

もうそんな人はいないと思っていたから

一人寂しく、

死んで行くものだと思っていたから

あたしの人生の最期に、

フランちゃんのお嫁さんにしてもらえて


本当によかったわ

……お、おばあちゃん
……お、俺は

……き、きっともう

おばあちゃんには会えないだろう

……お、おばあちゃんは

て、天国にいくだろうけど

……お、俺は、きっと

て、天国には行けない

あんたまだ

そんなこと言っているのかい

二人の会話に口を挟むような野暮な真似はすまいと

心に決めていた愛倫(アイリン)だったが、

ついつい横からカットインしてしまった。

見た目や生まれなんて関係ないって


この人にそう教えてもらったんじゃあないのかい?

あんただって人間なんだから、

日頃の行い次第で


天国にいけないってことはないだろうよ

愛倫(アイリン)はそう言ったが、

神が創った人間ではない、

人が造った人間を受け入れてくれるかどうかは、

天国サイドの裁量次第になるのかもしれない。

……お、俺の寿命は

……あ、あとどれぐらいあるのか分からない

……も、もしかしたら

こ、このままずっと死なないのかもしれない

……そ、それでもまた

お、おばあちゃんに会えるのかな

大丈夫よ、

きっとまた会えるわ

あぁ、きっとまた会えるよ
こんな時に

あたしの話で恐縮なんだけどね

フランケン、

あたしもあんたと同じでね


こっちの人間の男に本気で恋しちまってるのさ

あたしはね


その人とは

『魂が惹かれ合う者同士』だって

そう信じているんだよ

だから、もしあんたたちが

『魂が惹かれ合う者同士』なら


いつかきっとまた会える

あたしはそう信じるよ
それは愛倫(アイリン)の願いなのかもしれない。


愛倫(アイリン)にとってもこれは

到底他人事には思えなかった。


おそらく自分もいつか

慎之介との別れの日が来るだろう。


こちらの人間と自分達では

寿命が絶望的に違い過ぎるのだから。


自分の寿命が後どれぐらいあるのかは分からない。


明日死ぬかもしれないし、

またこれから千年生きるのかもしれない。


それでも、普通にいけば

少なくとも、後数百年は生きているのはないだろうか。


愛した人間の男たちを

看取り続けるのがサキュバスの宿命とは言え、

それを思うと愛倫(アイリン)の胸は痛む。

そうよ、フランちゃん

きっとまた、会えるわ

ううん、

きっとまた、会いに来るから

絶対にまた、必ず

フランちゃんに会いに来るわ

……お、おばあちゃん
……お、俺の

……お、お嫁さん

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