招かれざるハロウィンのゲスト

文字数 1,390文字

なにやら、この世界の者達が

浮かれているようじゃが……


なにか、祭りでもあるのかのう

夜の渋谷センター街を徘徊するネクロマンサー幼女は、

同郷の者達の会話に耳を傾ける。

もうそろ、ハロウィンかぁ
去年は人間達の仮装が面白くて

超盛り上がったな

今年はどうかなぁ
ほうほう、ハロウィンとな……

うーん……

なんじゃ、それは?
どれ、この盗んだスマホとやらで

ちょっと調べてみるかのう……

ふむふむ……
秋の収穫を祝う祭りで、

先祖の霊をお迎えする……

先祖の霊と一緒にやって来た

悪霊を追い払うために、

人間どもは仮装をする……

これはまた随分と

面白そうじゃのう

まさしく、ワシの大規模実験に

相応しい舞台と言えよう

これは、楽しみじゃわい

ふふふ……

……
それにしても、

このスマホというのは便利じゃのう

こちらの人間も

まぁまぁやるもんじゃな


ハロウィンの夜、

渋谷センター街を中心としたエリアには、

例年のように仮装した人間達と

異世界出身者達で溢れ返っている。

今年もすごい賑わってるな
これもう、誰がこっちの人か

異世界の人か分からないっすね

いやぁ、本当っすね


いやぁ、ハロウィンとか

絶対テンション上がるっしょっ

うんうん、マジで
ハロウィンはガチ
ちょっと、あんた達


ハロウィンのどさくさに紛れて

痴漢する連中を見廻る

パトロールなんですからね、一応

これまでの功績が認められつつあるのか、

最近では、移民局経由で警察関係からも

こうした協力要請が増えつつあるサキュバス達。


いやぁ、これはまた

随分とすごい人出じゃな

これでこそ、

大規模実験のし甲斐があるというものよ

この規模の街に

大量のゾンビを投入したら、

どれぐらいで制圧出来るんじゃろうな

ふふふ……

楽しみじゃわい

この間は

プリーストの奴らめに、

邪魔されてしまったからな

今回は奴らでも対応出来ないぐらい

大量にゾンビを投入してくれるわ

見とれよぉ〜

目にもの見せてくれるわっ


そして、渋谷の夜空には巨大な文様が浮かび、

地上には大量のゾンビが召喚される。

――
――
――
見てくださいよ

あのゾンビの仮装


超リアルじゃないっすか?

――
本当だな
――
ん?
――
……これ、仮装か?

臭いが本物っぽいぞ?

え?
いや、さすがにまだ

ゾンビの移民は認められてないっすよ

まぁ、そりゃそうだよな
地上に放たれたゾンビは、

その場ですぐに人間を襲うことはせずに、

人混みに紛れて渋谷の街に広がって行く。

一箇所に集中していては、

また、まとめて撃破されてしまうからのう

人混みに紛れ込ませて、

広く分散させておく

これなら、各個撃破するにしても

えらく手間がかかるじゃろうからな

退治するスピードのほうが早いか、

ゾンビの増殖スピードのほうが早いか


さて、どうなるかのう

ぎゃぁぁぁぁぁっ

そして、分散したところで

ひっそりと静かにゾンビは人間を襲う。

この人混みの喧騒で

そのことに気づいた人間はごくわずかであり、

気づいた者達も、それが現実なのか虚構なのか

判断が難しく、定かではない。

おいおい、

なんかマズくないか

血が噴き出してるぞ

いや、演出でしょ
去年も確か

誰かやってたよね

あぁ、演劇関係者が

小芝居みたいなのやって

盛り上がってたなぁ、去年も

こうして、ネクロマンサー幼女が率いるゾンビ軍団は、

静かに渋谷の街を侵攻しはじめる。


そして、その異変にいち早く気づいたのは

やはりサキュバスの娘達であった。

……
これはちょっとマズいですね
えー!?

あたしまたゾンビ!?

どうやら、

痴漢の見廻りどころじゃなさそうですね
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