呪いと祝い

文字数 1,752文字

とは言え、

どうしたらいいもんか……

……
……

しばらく考え込んでいた

愛倫(アイリン)が口を開いた。

いや、方法は、あるよ
あるなら、もったいつけてねえで

早く言えよ、クソアマ

あたしだって、今思い付いたのさ
慎さんの言葉に

ヒントがあったってことさね

んで、どうすんだよ?
なあに、気がつけば簡単なことだよ

あんたがこの()

呪いを祝いに変えてやればいいんだよ

??

何言ってんだクソアマ、

何千年前のご先祖にかけられた呪いを

解除するなんて無理だぞ

例え、出来たとしても

どれだけ時間が掛かるか分かったもんじゃねえ


それこそ一生掛けても無理かもしれねえ

別にね、この()

人間になりたい訳じゃあないんだよ

先祖がかけられた呪いとは言え、

この()はこの姿形で生まれて来たんだ


それはこの()の個性ってことなんじゃあないかい?


それを今さら変えちまうってのはね

人間の姿が

本来あるべき正しい姿って考えは

あたしはどうかと思うんだがね

この()がなりたいのはね、人間じゃなくて

えーと、うーん、その……

そう、コミュニティの一員ってことなんだよ

……

だからね、

呪いを解くんじゃあなくてね……

逆だよ、逆、

呪いをかけるんだよ

??
!?

呪いの上に、さらに呪いをかけて、

突き抜けて反対側に出るんだよ、

外の明るい世界にね

呪いを祝いに変えるのさ

愛倫(アイリン)の荒唐無稽な発言に

専門家として口を尖らせる反論するサムエラ。

何言ってやがる

呪いに呪いを適当に掛け合わせて、

上手いこと反対側に突き抜けられるって訳はねえ


出鱈目(でたらめ)な掛け算なんかで

そうそう上手く結果は出ねえよ

出鱈目(でたらめ)じゃあなくて、

ちゃんと目算があるんだよ

あんたは全く覚えてないみたいだけどね


まぁ、これまで使う機会がなかったんだろうね

それは異世界で、地下牢の石床に

上半身裸で倒れていたサムエラを

見続けていたアイリンにだからこそ分かること。

あんたの腰の後ろ辺りに、

敵の戦闘能力を封印する呪いの

呪術紋様があるんだよ

そしてこの()の石化能力を

戦闘能力だと仮定した場合


あんたの呪術紋様でこの()の石化能力を

封じることが出来るんじゃあないかと思うんだけどね

そんなの、あったかな?

愛倫(アイリン)の言葉に思わず首を捻って

腰の裏辺りを見ようとするサムエラだが、

当然人間の首がそこまで回る筈はない。

あんた達の一族が

何千年もかけて蓄積した呪術紋様


そして、あんたが

あれだけ苦しい思いをして修得した呪術


それがまったく効果が無いなんて

あたしには思えないんだけどね

あぁ~
腕を組んでしばし考えるサムエラ。

なるほどな、

それなら確かにやれるかもしれねえなあ

ただまぁ、

呪いを二重にかける訳だからねえ


それなりに難易度が高いとは思うんだけど……

敢えてサムエラを煽るような言い方をする愛倫(アイリン)

おいクソアマ、俺が

人を呪うなんてクソみてえなことに


どれだけこれまでの人生費やして来たか

知らねえ訳じゃねえだろ?

やってやろうじゃねえかよ
よ、よろしくお願いしますっ!


その後は愛倫(アイリン)の案をベースに

詳細を詰めるため慎之介が話を進めた。

サムエラさんは、現在こちらでは

呪術が使えない契約を結んでいますので


包括契約以外の個別契約として

今回の特例に関する契約を

別途結んで貰うことになります……

異世界出身の三人には

意味不明なことも多かったが、

既に慎之介への信頼があったので

そこも特に問題はない。

みなさん、

本当にありがとうございます


あたしなんかのために……

メディッサはまだ自分に自信を持つことが、

自分を肯定することが出来ない、

当然と言えば当然なのだが。

そんな彼女が

おそるおそる言葉を続ける。

あのぉ……あたしは……

本当にここに居てもいいと思いますか?

ゴーグルで隠されていて

メディッサの目を見ることは出来なかったが、

慎之介は彼女を真っ直ぐに見据えて言った。

少なくとも自分は

あなたにこの世界に居て欲しいと思っていますよ

サキュバスが

ここで普通に暮らしてるってのに


ゴルゴンがダメだなんて

そりゃぁ、不平等な話じゃあないか

あたしはね、この世界の

誰もが等しく、平等に、って考えが

気に入ってるんだよ

まぁ、呪術師なんて

ゴルゴン以上の嫌われ者だったからな

その俺がセーフで、

お嬢ちゃんがダメってのはおかしな話だわな
あ……ありがとうございます……
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