夜明けのコーヒー
文字数 2,760文字
眠っている慎之介。
寝ぼけて夢と
全裸の自分と全裸の
抱き合っているという現実を認識し、
驚きのあまりとんでもない声を上げる。
普段は生真面目で『自分』と言っている慎之介だが、
こういう時はただの普通の若者と変わりない。
寝ていた上半身を起こすが、
全裸なので当然胸やら何やらがバッチリ見える。
そんな慎之介を横目に、
隠すように体に巻き付ける。
もう頭から立ち上る湯気が見えそうなぐらいに
顔が真っ赤な慎之介。
深呼吸をして、改めて記憶を辿ると、
昨夜は
自分はこの部屋で一人で寝ていた筈。
舌を出して可愛い風に謝ってみせる
いろいろと誤魔化そうとしている魂胆が丸見えだ。
サキュバスが精気を吸い取ると言えば、
やはり真っ先にあれが思い浮かぶ。
おそるおそる大事なことを聞く。
何を怒られているのかはよく分からないが
とりあえず謝っておく慎之介。
夜中にベッドに忍び込んで
相手を裸にひん剥いて
全裸で抱き付くのはいいのか?
という気がしなくもない。
慎之介の股間を見つめながら
意味深な発言をする
突っ込みどころ満載の
まだそれを突っ込むだけの余裕が慎之介にはなかった。
ベッドから起き上がった
体に巻き付けていたシーツからスッと手を放すと、
そのままシーツがファサッと床に落ちる。
全裸の後ろ姿、
キュートな小尻も丸出しのままの
またもや慌てふためき狼狽する慎之介。
そう言ってベッドから起き上がった慎之介だったが、
床に落ちたシーツが足に絡まり、
そのままよろけて二歩、三歩進むと
前に居る
完全に密着して
慎之介の掌の中には、
全裸で密着すれば、慎之介の意に反して
体の一部が元気になるのは自然の摂理、
致し方ないというものだ。
この後も慎之介はずっとこんな感じで、
ホテルを出る頃にはすっかり
抜け殻のようになっていた。
今回の慎之介の視察は
こういうちょっとしたハプニングもあり
大変なものではあったのだが、
しかし彼も普通の成人男子である以上、
これが迷惑だったとは言い切れない。
ラッキースケベ的な意味で。
そして、この時の会話が
後に二人の窮地を救うことにもなる。