何も起こらなければ、 それが一番いい
文字数 2,032文字
自分が思っていることを相談してみる。
計画を実行することにした
前回の反省を活かし、
あからさまに目立って
浮いてしまわないよう格好には配慮する。
銀縁の眼鏡を掛け、
タイトなスカートにジャケット姿の
大人しめの風貌にしてみても、
レジェンド級サキュバスの
まんざらでもなさそうに
機嫌良くしている
リリアンに撮ってもらった写真に
そう一文付添えて慎之介に送りつける。
転校を考えている子供と親が
学校を見学に来たという設定で
学校にやって来た
例の少女を担任する先生と廊下ですれ違う。
顔をまじまじと見つめる
担任の先生は不思議そうな顔をしたが、
お互いに目と目が確実に合った。
目が合った瞬間、
同じように廊下で、
例の問題になっている少女とすれ違う。
こちらの目を見るか心配だったが、
そこはリリアンが機転を利かせて
トイレがどこにあるか
聞くフリをするという好サポート。
質問されれば
少女もこちらを見ざる得ず、
やはり互いの目が合った瞬間、
ただそれだけだった。
それ以外は一切何もしていない。
しかし、少女はその日の内に
児童相談所に保護される。
ただ学校の先生には、
少女にそう聞くように催眠をかけ
少女には本当のことを話す勇気が持てるように、
少女の勇気を増幅させるような催眠をかけただけ。
無理矢理少女に告白させるような
催眠をかけた訳でもなく。
つまり本当に何もなければ何も起こらず、
結局そうはいかなかったということになる。
夜遅く喫茶『カミスギ』のカウンターに座り
元気がないように見える
慎之介は気遣う。
現状日本の児童虐待問題について
慎之介は丁寧に説明していく。
慎之介はそんな冗談を返すようになっていた。