お金儲けと信仰(2)
文字数 1,860文字
利益の追求、金儲け目当ての
理事長の思惑に反して、
ヒーリングを受けたくても
高額治療費を払えない人々のために、
フローラは非番の日に
無償でその能力を使い続けた。
本来であれば、
オフでプライベートなので
病院が関与するところではない筈なのだが
さすがにそういう訳にはいかなかい。
理事長室に呼び出されたフローラ。
そこにはたまたま居合わせた病院長と
外科医
そこに口を挟んだのはまたしても
意外なことに氷室だった。
光を反射して輝く眼鏡を
氷室は指で押しながら続ける。
氷室の言葉をしばし考えてから
理事長は再び口を開いた。
こちらの世界であれば
宗教にはお金が付き纏うというのが
当然の感覚なのかもしれない。
お布施と称し、
信者から金を巻き上げて来た宗教は
人類史を見ても数限りなく、
最近では『新興宗教 = 金儲け』とすら
思われている節もある。
しかし、まだ若く
純粋に神を信仰しているフローラは
この言葉に憤慨した。
その場にいる誰しもが
それは怒りによる震えだと思った。
だがそうではなかった。
フローラはそのまま崩れ落ち、
床に倒れる。
氷室が駆け寄り、状態を確認すると
フローラにはまだ意識がある。
病院での勤務のみならず、
非番や休みの日も四六時中
ヒーリング能力を使い続けた結果、
フローラは衰弱し切っていたのだった。
そしてもうひとつ、この世界には、
ヒーリングを使い続けるには
致命的な欠陥があった。
フローラはそう口にすると
そのまま気を失う。
魔に属する力を魔力と言うように、
神に属する力を神力と
フローラが居た世界の者達は呼んでいた。
フローラが信仰する一神教の神は
例え、異世界であっても、
次元を越えたどこかであっても
同じただ一柱の神。
つまり異世界の一神教の神と
この人間世界の一神教の神は
同一の神ということになるのだが。
こちらの世界の人間達は
神への信仰が比較的に薄いため、
神からの恩恵もそれ程ではなく、
フローラは自らの生命エネルギーで補って
ヒーリングを使い続けていたのだった……。
この人間世界で神力が不足していることを
事前調査で把握していた理事長は、
現在考えている構想を氷室に語って聞かせた。
その言葉に、いつもはクールな氷室が
珍しくキツイ口調で反対の意志を示す。