懐かしい人々、魂の帰還

文字数 1,556文字

その夜、この世界の人々のもとには、

遠い昔にどこかで会ったことがあるような、

そんな懐かしい人達が還って来ていた。


ただ、見た目がちょっとだけ

普通の人間とは違っていたが……。

ヒロト、ヒロトじゃないか
あれ?
え?

じいちゃん?

見た目こそ、ゾンビの姿ではあったが、

そこにある魂が誰なのかは、何者なのかは、

この世界の人間達でも、なんとなく直感で理解出来た。

そうそう、

ワシじゃ、ワシ

三年前に死んでるのに


なんでこんなとこで

ゾンビの格好してんの?

いや、ワシにも

よく分からんのだが

ハロウィンだからじゃないのか?
あぁ、ハロウィンって……

戻って来る先祖の霊を迎える祭りでしたっけ

そ、そうなのか、

まぁ、お盆みたいなもんなのかのう

そっか、そっかぁ
いや、でも、

じいちゃん元気そうで安心したよ

いや、死んでるんだから、

元気というわけじゃあないだろ

ゾンビの見た目も

あまり元気そうには見えないしな

まぁまぁ、

細かいことはいいじゃないっすか

みんなで一緒に

じいちゃんの好きな酒でも

飲みましょうよ

マサオミ!

久しぶりじゃねえか

おわぁっ!
な、なんだ、お前?
俺だよ、俺、俺
新手のオレオレ詐欺か、なんかか?
タカシだよ、タカシ!
タ、タカシか!?
そうそう

おいおい、なんか随分と

見た目が変わっちまったなぁ

お前、クスリのやり過ぎで、

死んだんじゃなかったか?

まぁ、俺も

噂でそう聞いただけだからな

人の噂ってのは

当てにならねえもんだ

いや、なんか俺も

よく分かやねえけどよ

気づいたら、

こんなゾンビみたいになってわ

おいおい、

クスリやり過ぎると、

そんなゾンビみたいになるのかよ


まさしく廃人だな、こりゃ

俺、絶対クスリだけはやんねーわ
お、おじいさん?
あぁ……

ばあさん、元気にしてたか?

おじいさん
触らんほうがいい


もしかしたら

病気とか感染るかもしれんからのう

どうしたんですか?

そんな格好で

ワシにもよくは分からんのだが
今年のハロウィンの夜だけ


ゾンビの肉体で

この世に戻ることが出来るらしくてな

一人残して来た

ばあさんのことが心配だったから


ワシも参加してみることにしたんだ

臨時のお盆みたいなものですかね?
まぁ、そんなところなのかのう
前から分かってれば、

ご馳走とか準備したのに

いやいや、かまわんよ
それより、ばあさん

アレを頼む

あ、はいはい

お茶ですね

……
あ、あなた


こちらの方は

一体どなたなのかしら?

おそらく、

うちの十代ぐらい前のご先祖様だ……

そうじゃぞ

この家の家系図にも乗っておるだろう


清継がワシじゃ

毎年、お盆には来てやってるだろうに
すいません、

私ども霊感とかまったく無いもので……

仕方ないのう……
まぁ、ワシもあれだ


転生のチャンスは

何度もあったんじゃがなあ


この家のことが気になって

機会を逃し続けていたら、

守護霊みたいになってしもうた

はぁ
今回もそなた達が息災か気になったので

家まで来てみたんじゃ


一体どういうことじゃ?


さっきからゾンビ達を

まったくコントロール出来ないではないか

しかも、あやつら勝手に

好き放題、動き回っておる

まるで、新たな魂でも得たかのように……
……まさか

これだけで大量のゾンビに

どこかから魂を憑依させる……


そんなことが出来る者が

この世界にはいるというのか?

この大天才であるワシですら出来ぬようなことが


出来る者がいるというのか!?


……
いや、すごいもんだよ


これはもう術なんて

そんなレベルじゃあないね

あれだけ大量に居た

魂の無いゾンビすべてに


あんたが管理している

魂達を憑依させちまうなんてさ

私が管理している
魂を浄化しながら、

次の転生を待っている者達だからな

生者に危害を加えるようなこともないだろう
これで、今夜一晩だけなら

すべてのゾンビの動きを止められる

あぁ、今夜中に決着をつけてみせるよ
じゃ、まぁ、

クソじじいに囚われた

幼女の魂を助けに行こうじゃないか

ちょっと待ってください……

それは一体どういうことなんですか?

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