千年も目醒めてなかった性癖
文字数 2,048文字
会場を後にして、二人きりになると、
小声で会話をはじめる
潜入捜査で客船に乗り込んだ
会場で見せた奴隷とご主人様は当然演技となる。
武器の時と同様に
自身の生命エネルギーから生成したものであり、
目隠し越しでも目はハッキリ見えている。
むしろ目隠しは
悪魔の中にいるかもしれない、
その対策のためにしていたのだ。
下級とは言えそれだけの数の悪魔が、
先遣隊として既にこちらにやって来ている、
その事実に慎之介は愕然とする。
慎之介は意外だった。
奴隷制度を忌み嫌う
真似事とは言え、奴隷になるとは
思ってもみなかったのだ。
慎之介のような人間ですら
それなりに刺激的に思ってしまう、
人間の
だが
そうした人間の業は嫌いではない、
むしろ好きだろう。
これまでそうした人間の業と共に生きて来たのが
サキュバスなのだから。
面倒な女のようなことをする。
恋愛経験の無い慎之介には
それがよく分かっていなかったが、
なんとなく、
可愛いところがあるのだなぐらいには思う。
悪魔は慎之介を超優良潜在顧客として認識した。
これまでの活躍で
移民局でそれなりに権限も貰え、
いい感じの位置にいると思われがちな慎之介だが、
まだまだ新米の若手。
移民局自体が国の組織である以上、
公務員のようなものであり、安月給なのは間違いない。
公務員は年功序列に厳しいのだ。
こんな社交界みたいな場所、
少し前の言い方ならばハイソサエティ、
今風に言うならばセレブ達の集いには
おそらく一生縁がなかっただろう。
この船に居る者達は人間も悪魔も
当然そんなことは知らない。
そのため、状況から判断して
ここで一番価値のある顧客と
悪魔に認定されたという訳だ。
妖艶な絶世の美女を奴隷にしている青年、
この船で誰よりも価値がある所有物を持っている者。
そのことだけで慎之介には
彼のステータスをてっぺんへと押し上げたのだ。
この狭い船の中はそうした価値基準で成り立っており、
あちらの異世界では、嫌というほど、
散々よく見た光景でもあるのだから。
そしてこれは、レジェンド級サキュバスの
ただ一つ
慎之介の演技が上手く、
アドリブも天才的だったことだろうか。