老人の最期を看取るサキュバス
文字数 1,407文字
しばらくすると、
ミルリンが一緒に暮らしていたおじいちゃんが倒れた。
ミルリンは老人をしっかと抱きしめた。
ミルリンのふくよかな胸の中に、
顔を埋め、満面の笑みを浮かべる老人。
ミルリンは死に逝く老人の、
最後の命をその胸でしかと受け止めたのだ。
老人はそのまま息を引き取った。
この上なく、穏やかで安らかな顔で
老人はこの世を去って行った。
老人は安らかに逝ったが、
残されたミルリンは大変なことになっていた。
根も葉もない噂をしていた近所の人間達から
口さがなく言われるのはまだいい方で、
老人と何十年も前に別れて、
それ以来一度も会っていなかったという
遺族までもが現れて、ミルリンを罵った。
移民局の慎之介が仲裁に入る。
これから後、ミルリンは
独りぼっちで暮らす老人男性達のもとを
巡回して訪れるようになる。
老人男性達が孤独死することがないように。
それが彼女がこの世界で見つけた
自分にしか出来ない役割だと思ったのだろう。