行き過ぎた正義
文字数 1,706文字
今宵もまた
ドス黒く腐った魂を持った者が、
宙に浮く者達に追われていた。
追われている男もまた
罪を背負った者であり、
彼等はその命を以って
償いをさせようとしている。
三人の浮遊者は
それぞれに思ったことを口にしている。
追われる男は角を曲がって
路地裏へと走って逃げ込む、
その後を追う三人の浮遊者達。
だがそこには腕を組み
仁王立ちする
宙を舞う三人は驚いて
空中で制止する。
『天使』と呼んだ。
確かに彼等は人間に酷似した姿で、
その背中に大きな翼を生やしている。
この辺りで一番
ドス黒く腐った魂を持った人間を探し当て、
ずっと後をつけて張り込んでいた。
天使達がこの人間を襲って来るのを
待ち伏せしていたという訳だ。
そして、三人の天使達の背後からは
死神がその姿を現わす。
外見は真逆、正反対であるにも関わらず、
魂の管理者という同じ役割を担う両者。
死神は同じ魂の管理者として、
天使達の暴走を止めようとしていたが、
天使達にはそれが疎ましく
死神を嵌めようとしたのだった。
少し憂い顔の
もう帰ることは出来ない
滅び行く故郷への哀愁からか。
魂が見えない人間達は、
罪を犯した者と無実の者を
見分けることが出来ず、
証拠や自白によって罪人を判断し
法に基づき処罰するが、
それは魂が見える彼等からすれば
何ともまどろっこしい
苛立つ行為にしか思えない。
その人間達が制度化した
裁きのプロセスを掻い潜り、
本来裁かれなくてはならない人間が
裁かれることもなく
のうのうと生きている、
天使達からすれば
それが我慢ならないのである。
そうここはどんな凶悪犯であっても
最低限の人権が保障される世界。
彼等が居た異世界とは
何もかもが根本的に違う。
三人の天使達は
口々に反論する。