第15談 大谷翔平のショータイム

文字数 2,756文字

こんにちは。

昨日、一昨日は一言も呟けませんでした。と言うわけで中二日(なかふつか)(中二病ではありません)の呟きです。
いつも2千文字を超える長文を打ってしまうので、そもそも「呟き」には程遠いですが。(苦笑)

昨日と今日の午前中は家にいたので、テレビでMLBのホームラン・ダービーとオールター戦を観戦しました。
ホームラン・ダービーは残念でしたね。でも大谷選手にとってはベストな結果だったのでは?
初戦敗退とは言え、22歳のソト選手を相手にネバリに粘って二回の延長まで持ち込んで、大いに観客や視聴者を沸かせてくれたのですから。
直前まで電話に出たり、周りの人に気を遣ってたせいなのか、練習のし過ぎだったのか、それにしてもみんなが息を押し殺すほどまったく打てなかったスタートから、よく延長にまで持ち込めたものです。
もし初戦で勝って最後まで勝ち進んでいたら、今日のオールスター戦の投球はガタガタだったかもしれません。以前にホームランダービーで優勝した選手は、「翌日は腕が上がらなくなった」と言っていますし、昨日の大谷は初戦の途中で座り込んでしまうほど疲れ切ってましたから。

実は私は野球ファンではありません。
まったく興味のない若い人たちと違って、一通りのルールは知っていますが、そもそも脚が悪くて子供の頃に野球をプレイできなかった私は、野球自体がそれほど好きではありませんでした。
それでも小さい頃に偉人伝の一つとしてベーブ・ルースの物語を読んだことはありますし、伯父が後援会長をしていた王貞治だけは人格者だなと思って尊敬していました。
ファンではないと言っても、今は殆ど見なくなっただけで、30代半ばまでは主要な試合はテレビ観戦し、年に1〜2回は球場で試合観戦していました。

さて、大谷の話。
彼がメジャーに移籍した頃、国内の評論家の先生は、投手は諦めて打者に専念した方が良いと口を揃えて言っていましたね。日本では通用してもメジャーはそんなに甘くないと。そもそも、彼が所属した日ハムが栗山監督でなかったら、国内でも二刀流が実現できていたかは疑問ですが。
エンジェルス移籍後は怪我から手術、そしてリハビリを重ねながら、三年かかってコンスタントに勝利を挙げられる投手となった一方で、今年はホームランで堂々の両リーグトップ。
去年は二刀流が認められるようにMLBのルールブックが書き換えられ、今年はスポーツ界のアカデミー賞と言われるESPY賞のMLB部門に選出。

そしてオールスター戦では、先発投手で1番・DHという、それまでのルールでは有り得ない扱いだったため、「オータニのためのオールスター戦」と言われたわけです。
そのオールスター初戦。
前日、ホームラン・ダービーを競ったグランドで先発投手としてマウンドに立ち、160キロ級の速球を連投してスター選手達を三者凡退に抑え、勝ち投手となるという前人未踏・空前絶後の歴史を作りました。
昨日と今日の活躍とファンの喜びようを見ると、アメリカの野球の歴史を変えた歴史的偉人のスタートという感じさえ受けました。

そもそもアメリカは移民の国。
出自がどうであれ、実力が認められれば簡単に「名誉アメリカ人」になれます。
ニューヨーク留学中、私はクラスでたった一人の日本人でしたが、テストで満点をとった日からヒーロー扱いされるようになって、そのことを痛感しました。
留学先はNYU(ニューヨーク大学)の単科カレッジのような音楽録音の専門学校でしたが、みんなは私がそのままNYUに進級(編入)すると思ってくれたようで、帰国するときには「なぜ1年で帰るのか?」と言われました。
「学校でビジネスのビザを出すから研究助手として働きながら大学に進んで欲しい」と学校の理事も務めていた講師は提案してくれたし、学生達の何人かは「経済的に大変だったら俺たちが援助するよ」とまで言ってくれました。すでに26歳だった私は予定通り帰国しましたが。

困っている人がいたら助けるし、実力があると認めたら力になりたいと申し出る。
そしてアメリカンドリームを実現した人の姿を見て、「いつかは自分も」と希望を抱く。
そんなアメリカ人にとって、オータニは「希望の星」なのでしょう。
だから大谷の活躍見たさにルールさえ変えてしまう。既得権や常識や過去に縛られることの多い日本ではあまりない光景です。

オータニがアメージングな活躍を見せる中で、スポーツニュースなどを通して、ライバル達が挙って、「狂ってる」とか、「バケモノだ」とか、「俺もショーヘイ・オータニの大ファンだ」と言う声は報道されていました。
他の選手に嫉妬されてもおかしくないほどの実力ですが、そこはオータニの持つ人徳が敵意や悪意を喪失させてしまうのでしょう。そしてアメリカです。
投手としてのオールスター出場は、ライバル達の推薦による1位だったとか?
逞しい身体に童顔な小顔が載った八頭身のルックス、人なつっこい笑顔、そして正直でフレンドリーな性格……愛されるはずです。
昨日のホームランダービーで、「ショーヘイ・オータニ」とコールされたときの場内の盛り上がりは感動的でした。

コロナ禍でアジア人がいきなり暴行を受ける差別さえ見られるほど荒んだ時代ですが、「ショーヘイ・オータニはベーブ・ルースの再来」と言うアメリカ人野球ファンの言葉に「差別」はありません。
彼の活躍は、日本人だけじゃなくアジア人全体のアメリカでのイメージアップにも繋がるように思えました。

大谷翔平のショータイムはまだまだ続きます。
くれぐれも怪我だけは気をつけて、これからも私たちに夢や希望を与え、素晴らしい笑顔で魅せてください。

追記
ニューヨークタイムズやワシントンポストに寄稿しているデビッド・ガードナー記者は「ショウヘイ・オオタニは第2のベーブ・ルースなどではない。ベーブ・ルースはショウヘイ・オオタニのベータ版だったのだ」と、大谷が披露している二刀流は“元祖”ベーブ・ルースの上を行くと言いたげだった。(ベースボール専門メディア"Full-Count"より)

確かに、ベーブ・ルースは投手として登録されていた時代には大谷ほど打っていないし、ホームラン王として活躍する頃はすでにマウンドを降りていたようです。
多くの野球選手が、少年時代は大谷のように、投げて、打って、走って……と活躍していた筈ですが、どこかの時点でどれかを諦めていたはず。だから、誰もが大谷の活躍に「信じられない」と驚きを隠せないのでしょうね。
オールスター史上200本目の記念アーチで最年少MVPになったゲレーロJr.は、試合後の会見で「(自分なら)オオタニをMVPに選ぶよ」と語ったそうです。


老人は死なず、亡き伯父に大谷の活躍を見せてあげたいと願うのみ
(2021.7.14)
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