第84談 番狂わせ?

文字数 2,066文字

みなさん、こんにちは。

さて、アカデミー賞は、『Coda あいのうた』が見事に作品賞を受賞!
目を傷めた1月に無理して映画館に観に行った苦労が報われた? そんな訳ないか。(笑)
海外映画(オリジナルはフランスの『エール!』)のリメイク作品が作品賞に選ばれるのは難しい——という声もあったようですが、私は真っ当な受賞だと思います。
映画の感想は、4回前の「第80談」に詳しく書きましたので、興味のある方は読んでみてください。
因みに、その後オリジナルの『エール!』もオンラインで観ました。とても良い映画でしたが、映画としての演出や役者の演技、歌の魅力や細かいディテールの描写は『Coda あいのうた』が大きく超えていると感じました。後出しだから当然かもしれませんが、原作の不自然さを上手くカバーしていましたし、テレビの液晶画面と劇場のスクリーンの差を考慮してもその感想は変わりません。決して主役の女の子が、オリジナルより可愛かったからではありませんよ。いや、それも少しはありますが。(苦笑)
話題の『ドライブマイカー』は、かつての『おくりびと』と同様に外国語長編映画賞でしたね。
実はこれも映画館に観に行きました。観終わって、アカデミー会員が喜びそうな内容だとは思ったのですが、私は感動を得ることが出来なかったんです。村上春樹の小説に一度も心が動いたことのない私の感性では無理もないことかもしれませんが。
一方で『Coda あいのうた』には心を鷲掴みにされていたので、理論理屈ではなく単純に「面白い映画」がアカデミー賞に選ばれたことを嬉しく思います。これを番狂わせと思う人も或いはいらっしゃるかもしれませんが。

という訳で、『Coda あいのうた』は是非観に行ってください。
いずれAppleTV+でもオンデマンド配信されると思いますが、オスカー受賞に乗ってしばらくは劇場公開が続くと思いますので。

ところで、昨日のサウジアラビアGP決勝。
予選で、自身だけでなくメキシコ人ドライバーとしても初のポールポジションを見事に決めたセルジオ・ペレスは、スタート後も真っ先に飛び出し、しばらくトップを快走していました。
しかし不運にも、真っ先にタイヤ交換を終えた直後に、他車のクラッシュによりセーフティーカーが出動。セーフティーカー先導中は順位を落とすことなくピットインが可能なため、セルジオのピットイン前には後続だった3台はそのままの位置をキープし、結果としてセルジオは4位まで転落してしまいます。
運が悪いと言えば当にその通りですが、運も実力のうち?
マイケル・サンデルの『実力も運のうち(能力主義は正義か?)』は是非読んでもらいたい本ですが、主題とは関係ないですね。脱線……いや、コースアウトしました。
その後は本命フェラーリに乗るシャルル・ルクレールが終盤までトップを走り続けます。
しかし2位を走行していたディフェンディング・チャンピオンのマックスは、爪を研いで同世代のモナコ人からトップを奪うチャンスを窺っていました。
撤退したホンダの名前は無くなったものの、今年も日本で作られるレッドブル・パワーユニットの力を借りて、マックスはフェラーリの背後に迫ります。今年のマシンは去年までと違って真後ろを走っても空気の乱れの影響を受け難いため、その差1秒以内に追いつけばオーバーテイクは難しくありません。
マックスは狙った通りレース終盤にシャルルに襲い掛かり、二人は激しいトップ争いを繰り返します。
最後にマックスがトップに立ったあと、ストップしたマシンの影響で出された追い越し禁止の黄旗にも助けられ、シャルルを押さえ切ってマックスは今季初優勝。運を実力で引き寄せた当にチャンピオンの勝ち方でした。
手に汗握る二十代半ばの若武者たちによる真剣勝負の素晴らしいレースでしたが、勝ったマックスも敗れたシャルルも、レース後にお互いを讃え合っていた姿が微笑ましく、爽やかなスポーツマンシップを感じました。
表彰式では三色旗の下で21回目のオランダ国歌が流れ(オランダ人の優勝21回は全部マックス一人)、2位はシャルル、3位はカルロス・サインツと、開幕戦1-2のフェラーリの二人が二戦連続表彰台という結果になりました。
という訳で、決勝で番狂わせは起こりませんでしたね。
しかし、もう一人の常勝男ルイスはやっとの10位完走。どう考えても彼の実力ではありませんが、レース中に、彼のタイヤ交換のタイミングでピット入り口が故障車で塞がれ、何周もタイヤ交換ができないという不運に見舞われたので、なんだか運命の女神もルイスを贔屓しなくなったように見えます。
唯一の日本人角田裕毅ですが、残念ながら予選の走行を断念したマシントラブルが解消できず、決勝も欠場という不運な結果となりました。チームメイトがリタイヤした開幕戦では8位入賞していただけに残念です。そのチームメイトのピエール・ガスリーは今回8位に入賞しましたが。


老人は死なず、老いても自分の目で見て耳で聞いて感動できることは有り難い
(2022.3.28)
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