第31談 かつてプリンスとして知られたアーティスト

文字数 2,425文字

おはようございます。

突然ですが、今日は音楽の話。
実はネタがありすぎて今まで敬遠してたのですが、ノベルデイズの日記では先輩のSさんにインスパイアされました。(笑)

好きなアーティトは誰ですか?
こういう質問……実は一番困ります。

J-POPも聴きますが断然洋楽派。
とは言え、一人或いは一つのグループを選べと言われたら……
マイルス・デイビスか、マイケル・ブレッカーか、デビッド・サンボーンか、メイシオ・パーカーか、クインシー・ジョーンズか、ウェザー・リポートか、チック・コリアか、ジェイコブ・コリアか、ミシェル・ペトルチアーニか、ビル・エバンスか、アレサ・フランクリンか、アリシア・キーズか、パティ・オースティンか、チャカ・カーンか、ガル・コスタか、イリアーヌ・イリアスか、スティーリー・ダンか、トッド・ラングレンか、レッド・ツェッペリンか、ジミ・ヘンドリックスか、ロイ・エアーズか、タワー・オブ・パワーか、アース・ウィンド&ファイアーか、Pファンクか、ブライアン・マックナイトか、ベイビーフェイスか……
と散々迷った挙げ句、たぶんプリンス!と応えます。

ここで、二十世紀も世紀末と言える1990年代の自分をプレイバックしてみます。

オレはデビュー当時からプリンスを嫌ってた。ヤツのナルシスティックなスタイルや、あのエキセントリックな声。露骨にセクシーな歌詞も苦手で「プリンスは大嫌いだ」とオレはいつも口にしていた。
「パープル・レイン」でブレイクした頃も、「バット・ダンス」で賞を取りまくった頃も、苦手意識は消えなかった。オレの好きなティム・バートンを汚さないでくれよ……なんて言ってたほどだ。
ジャネット・ジャクソンや、敬愛するチャカ・カーン、大好きだったキャリン・ホワイトらの名プロデューサー、ジャム&ルイスがプリンスの仲間だったことは知っていたし、お気に入りの美人アルト・サックスプレイヤー、キャンディー・ダルファーがプリンスに見出されたことはもちろん承知していた。
ジャームズ・ブラウンやPファンクが好きな友達はべた褒めしていたが、まわりが凄い凄いと言えば言うほど、「プリンスだけはダメだ」とオレは頑なに拒んでいた。
それがある日のレコード店でひっくり返っちまった。
"La La Means I Love You"を歌うヤツの歌声を耳にした瞬間に鳥肌が立った。それまで毛嫌いしていたあのファルセットがとても魅力的に聞こえたんだ。プリンスの代表曲じゃない。ソングライターのプリンスにしては珍しく他人の曲のうえに、それは甘いフィリーソウル(フィラデルフィアのソウル・ミュージック)のヒット曲だった。
思わずその曲が入ったアルバムをオレは手に取った。
当時ワーナーとの抗争中でプリンスの名前が使えず、"The Artist Formerly Known As Prince"(かつてプリンスとして知られたアーティスト)としてリリースされたその3枚組アルバムを持ってオレはレジに並んでいた。
家に帰って1曲目から聴き進めるうちに「プリンスすげぇ!」と叫びたくなった。36曲、180分……全く隙がなく、文字通り「半端ない!」
"Emancipation "はプリンスにしちゃ地味なアルバムだ。派手なヒット曲もギミックもないが、ロック、ジャズ、ソウル、ヒップホップ……アメリカンミュージックのカレイドスコープとでも呼びたくなるほど様々な要素がとても高いレベルで統合させている。
マイケル・ジャクソンは名プロデューサー、クィンシー・ジョーンズの力なしにはあれほどの成功を得られなかったろう。
しかし、プリンスはたった一人で、作詞作曲だけじゃなくアレンジもこなし、あらゆる楽器を演奏し、多くの名プレイヤーを効果的に使いこなし、ビジュアルやアクトも含め「プリンス」というパッケージを見事にプロデュースしている。これほど完璧なセルフ・プロデューサーが他にいるだろうか?
ピンヒールのブーツを履いているのは160センチ以下という小柄な身長をカバーするためということもその頃に知った。
プリンスは、とてもナイーブな感性をナルシスティックな仮面の下に隠している。
ダムが決壊するようにオレのプリンスへの嫌悪は崩れ去り、過去に遡ってプリンスを聴きまくった。かつて予告編を見ただけで嫌悪した『パープル・レイン』もお気に入り映画の一つになっちまった。
「好きの反対は嫌いではなく無関心」という話があるが、オレにとってのプリンスはHateがLoveにひっくり返った好例なのだろう。

と言う感じでプリンスに魅せられてしまった四半世紀前を振り返ってみました。
(台詞の"オレ"は妄想です。当時は一番お堅い仕事に就いていたので)
因みにプリンスのアルバムを1枚挙げろと言われたら、この"Emancipation "か、BOX SETでこれまた3枚組のライブ盤"One Nite Alone Live"のどちらかで迷います。2002年にリリースされたワシントンDCでのライブ盤もジャジーで質の高い演奏を聴かせてくれます。キャンディ・ダルファーとメイシオ・パーカー、新旧二人のアルト・サックスの共演も華やかですし。

さて、今夜はCS放送のフジテレビNEXTで"The Artist Formerly Known As Prince"時代のコンサート映像を放映します。もちろんバッチリ予約済み。あ、もしかしてオリンピックと重ならないかな?

ところで、マイケル・ジャクソンが共演を持ちかけたとき、「ステージにスターは二人いらない」と言って断ったプリンス。
でもあの世ならスターは何人でもOKなはず。今頃マイケルと共演しているのでは?


老人は死なず、50代で先立った殿下に敬意を表すのみ
(2021.7.30)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み