第94話 第一節 それぞれの日々 ー幸ー

文字数 1,177文字

ハンガン
 ハンガンの家には、身重の妻りりの姿があった。
 驚くほどに血色がよく、よく笑いよく食べよく働く妻でありすでに三人の子どもの母となっていた。
 ハンガンは国がだいぶ落ち着いた後、りりを迎えにいき家族となった。
 その後、ハンガンは生き残っていた母を見つけともに暮らした。

アーサ 
 アーサは、同好の士たちと、学舎の教科書となる本を次々作った。
 これにより出版技術も向上し、本がたくさん出回るようになった。
 各所の学舎の視察にハンナが妻として同行するようになった。
 子どもも次々生まれ同行者は二年おきに増えた。
 ルアンはその背丈は、兄であるサンコを越していた。
 アーサを尊敬し、ハンナとともに仕事に邁進した。

テナン チマナ
 テナンとチマナは互いにかけがえのない存在であることに気づき家族となった。
 テナンは呪術師として、チマナは歌舞劇団としてどこに行っても歓迎された。
 二人の旅は常に何かしらぶつかり合い喧嘩が起こる珍道中になったが、二人の周りには人が集まり笑いがあった。
 テナンは、時折り親方のもとで土器を作った。
 呪術の力が満ちて、職人が父であることに気が付いた。
 ときどき焼きに来れば会えると考えたテナンは、それを口にすることはなかったが、互いに打ち明ける機会を得て、いまでは親方は孫の誕生を楽しみにしていた。
 チマナも兄姉弟を見つけることができた。

サナ バンナイ 
 国の大変革を、六人の子どもたちが成し遂げていく様を見たり聞いたり感じたりするのが薬になり、サナは立って歩いて食事の支度ができるまでに回復した。
 間を置かず訪ねてくる六人は徐々にその人数を増やしていって、数家族重なると大変な騒ぎになった。
 五年が過ぎたあるとき、サナは突然体調が悪くなりその日から伏した。 
 驚異の回復力を見せていたサナが、食事も喉を通らなくなった。
 サナは死を覚悟した。
 ふと外に鷹を感じて窓を開けてもらうと、鷹が空中を六角形に飛んでいた。
 それは、鷹が自分に別れを告げていると感じた。
 六芒星に導いたのは、父から譲り受けた鷹だったと腑に落ちた。
 青虎神が鷹を父に送り、その鷹がいま自分に命を分けてくれている。
 鷹は、全ての使命を終えて空に帰ってしまう。
 サナの涙が頬を伝い寝台に浸み込んでいった。
 その後サナは完全に回復した。

シーナ
 シーナは、白蛇様の力宿す者としての役割を懸命に果たしていた。
 折々、シーナが歌いチマナが舞う祝い唄を各地で行った。
 家々に出向いて悩みを聞き病を癒し、シーナは多忙を極めた。
 サンコはシーナを訪ね謝罪し『天女如心』の笛の奏者となった。
 うち一人と結ばれた。

ヤシマ
 ヤシマは民主団の長として、各地域の分団を回った。
 困っている人の相談に乗りもめごとがあれば自ら入って仲裁をした。
 大きな催しがあるときは特に警戒し警備を強化した。



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