第73話 第四節 シーナ探索 -秘密ー
文字数 1,437文字
サンコの遠く後ろでもう一人の人物がアーサを観察していた。
この人物はサンコよりも少し早く動いて、気心の知れた供の者を呼びつけ「これから内密に外に出ます。庭園の植え込みから出るから、門から出た人物に追いついて植え込みの裏手の林に案内して。くれぐれも武人達に怪しまれないようによ!」
そう年齢は違わないだろう青年は、ハンナにとって言われたことを忠実にやり遂げてくれる使用人だった。
ハンナは、兄や両親、家中の者達が周辺にいないことをしっかりと確認すると、身軽に高い植え込みに紛れ込み塀についている低い出入り口から素早く外へ出た。
屋敷裏は林になっていた。
木々は背が高く鬱蒼として、誰も出入り口を使って裏手の林に出ることなどしなかった。
ハンナは、幼いときからこの出入り口に興味を持ち一人になりたいときよくこの林に入り込んでいた。
しばらく待っていると、供の若者がアーサを連れてきた。
真っすぐにハンナを見ている。ハンナは供の若者に「この人に話をしたらすぐに戻るから心配しないで。もし誰かが私を探していたら、向こうから壁を三回叩いて」と言った。
供の若者はちらっとアーサを見てから、素直に従ってその場から離れた。
「ハンナと言います。あなたはシーナに関わりがあるのですか? どうしてシーナを訪ねてきたんですか?」
「アーサと言います。シーナと一緒に育ちました。他にも数人います。大切な仲間です。シーナが心配で訪ねました。シーナはこちらで大切にされていないようですね。救い出して連れ帰りたいと思っています」
アーサは、真っすぐにハンナを見てそう言った。
ハンナは動揺した。
「あなたは、私にそんなことを言ってしまって、私が武人に知らせればあなたは捕らえられ命を取られるかもしれないのに…」
「あなたはそうはしませんよね、ハンナさん。こんなところに内密に呼び出してまで伝えたいことがあるくらいだから…もし興味だけで追いかけてきたのなら、武人達も連れてくるはずです」
アーサは言った。
「私の心を読んでいるのね。じゃあ兄に追い返されてシーナを諦めるつもり?」
「諦めません。でもこの状況では取り返せません。だから考えます。あなたはシーナをどう思っているのですか?」
今度はアーサがハンナに尋ねた。
ハンナは、嘘はつきたくないと思った。
だからと言って今の想いを包み隠さず話せるほどこの少年を信じることはできない。
何者なのだ、この少年は…
しばらく沈黙が流れた。
すると屋敷の高い塀越しに「コンコンコン」と三回合図が来た。
「この林は奥があります。人はめったに立ち入りません」
早口でハンナは伝えた。
「わかりました。明日またこの近くにいます。シーナの話を聞かせてください」とアーサは言った。
ハンナは腰を屈めて低い出入り口に向かうと、急いで中に入りぱたりと扉を閉めた。
門前で追い返されたアーサは、すぐに自分を追いかけてくる足音に気付いた。
一瞬身構えたが、小さな声で「お嬢様がお話ししたいと言っています。付いてきてください」と言われた。
命の危険か今後の足懸かりか…
一瞬迷ったが、後者にかけてみることにした。
目の前に現れた人の目にはどこか焦りが見えた。
どうにもできないものを抱えている…
そんな様子が見て取れた。
真っすぐなまなざしは、アーサを騙そうとしているようには見えなかった。
とりあえず林の奥に潜み、ハンナという人物の話を聞きだす。
シーナとの細い糸は繋がった。
この人物はサンコよりも少し早く動いて、気心の知れた供の者を呼びつけ「これから内密に外に出ます。庭園の植え込みから出るから、門から出た人物に追いついて植え込みの裏手の林に案内して。くれぐれも武人達に怪しまれないようによ!」
そう年齢は違わないだろう青年は、ハンナにとって言われたことを忠実にやり遂げてくれる使用人だった。
ハンナは、兄や両親、家中の者達が周辺にいないことをしっかりと確認すると、身軽に高い植え込みに紛れ込み塀についている低い出入り口から素早く外へ出た。
屋敷裏は林になっていた。
木々は背が高く鬱蒼として、誰も出入り口を使って裏手の林に出ることなどしなかった。
ハンナは、幼いときからこの出入り口に興味を持ち一人になりたいときよくこの林に入り込んでいた。
しばらく待っていると、供の若者がアーサを連れてきた。
真っすぐにハンナを見ている。ハンナは供の若者に「この人に話をしたらすぐに戻るから心配しないで。もし誰かが私を探していたら、向こうから壁を三回叩いて」と言った。
供の若者はちらっとアーサを見てから、素直に従ってその場から離れた。
「ハンナと言います。あなたはシーナに関わりがあるのですか? どうしてシーナを訪ねてきたんですか?」
「アーサと言います。シーナと一緒に育ちました。他にも数人います。大切な仲間です。シーナが心配で訪ねました。シーナはこちらで大切にされていないようですね。救い出して連れ帰りたいと思っています」
アーサは、真っすぐにハンナを見てそう言った。
ハンナは動揺した。
「あなたは、私にそんなことを言ってしまって、私が武人に知らせればあなたは捕らえられ命を取られるかもしれないのに…」
「あなたはそうはしませんよね、ハンナさん。こんなところに内密に呼び出してまで伝えたいことがあるくらいだから…もし興味だけで追いかけてきたのなら、武人達も連れてくるはずです」
アーサは言った。
「私の心を読んでいるのね。じゃあ兄に追い返されてシーナを諦めるつもり?」
「諦めません。でもこの状況では取り返せません。だから考えます。あなたはシーナをどう思っているのですか?」
今度はアーサがハンナに尋ねた。
ハンナは、嘘はつきたくないと思った。
だからと言って今の想いを包み隠さず話せるほどこの少年を信じることはできない。
何者なのだ、この少年は…
しばらく沈黙が流れた。
すると屋敷の高い塀越しに「コンコンコン」と三回合図が来た。
「この林は奥があります。人はめったに立ち入りません」
早口でハンナは伝えた。
「わかりました。明日またこの近くにいます。シーナの話を聞かせてください」とアーサは言った。
ハンナは腰を屈めて低い出入り口に向かうと、急いで中に入りぱたりと扉を閉めた。
門前で追い返されたアーサは、すぐに自分を追いかけてくる足音に気付いた。
一瞬身構えたが、小さな声で「お嬢様がお話ししたいと言っています。付いてきてください」と言われた。
命の危険か今後の足懸かりか…
一瞬迷ったが、後者にかけてみることにした。
目の前に現れた人の目にはどこか焦りが見えた。
どうにもできないものを抱えている…
そんな様子が見て取れた。
真っすぐなまなざしは、アーサを騙そうとしているようには見えなかった。
とりあえず林の奥に潜み、ハンナという人物の話を聞きだす。
シーナとの細い糸は繋がった。